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Satellite.1-5

 これで先遣の甲級と支配級は片付けた。

 流石に久しぶりだったので少し疲労感はでていたが気になるほどではない。



 俺は指揮官(コマンダー)に聞いていた。


「こちらが補足されるまでまであと何分だ。」


「あと1分程です。」


「諒解。熱戦級はそちらに任せる。こっちの射撃兵装は弾切れだ。こちらの装備では有効射程に入る前に撃ち殺される。

 援護もついでに頼む。」


「了解です。ただそちらも胎児(ゴーレム)級にやられないでくださいね。援護はしますが…。」



 彼女は言葉を選ぶように、ためらっていた。


「言いたいことがあれば今のうちに吐き出しておけ。死んでからでは遅い。」


「…あーわかりましたよっ。死なないでくださいね。

 胎児級だって本来一斉射で終わらすのに近接兵装で挑むんですから。

 だから、寝覚めが悪いんでほんとに死なないでくださいね。呪いますからね。」


「あー諒解。そちらも死ぬなよ。」



 少女はどうやら心配性らしい。先ほどの戦闘を見ていたはずなんだが。

 まあいい。俺は俺だ。


 いつものように、かつてのように。障害は排除するだけだ。


「じゃあ行こうか。指揮官(コマンダー)。」


「はいっ!」



 おれは指揮官の指揮範囲を超えて、敵に対して急接近する。

 熱戦級はとりあえず少女に任せる。狙いは胎児級。


 胎児級は10メートルを超える巨体から放つ一撃が強力だが、

 其の巨体故に小回りは効かない。機動力だけで振り回す。


 胎児級との距離は残り10,8、5とどんどん距離は縮んでいく。

 そして近づくにつれて熱戦級の光線が何度も一斉に発射される。


 これらを回避しつつ、胎児級に近づいていく。

 胎児級も気づいたのか、腕を振り下ろす。


「そんな遅せぇ攻撃当たるかよ。」



 急旋回し、胎児級の攻撃を紙一重で躱す。

 そして其の腕を黒蓮で一撃、二撃。切り刻む。


 吠える胎児級。囲んで撃ち込もうとする熱戦級。

 だが熱戦級は何度も光線を連射することはできない。チャージが必要なのだ。


 其の時間わずか15秒。


 次発装填まではあと8秒。それまでにここから抜けださなければいけない。


 少女よ…早く注意を引いてくれ。このままでは撃たれるっ。



 光る一線。発射の甲高い音。少女の放った弾丸は熱戦級の内、1体の頭部を弾け飛ばした。


 方向転換し、少女に狙いを定め始める熱戦級。しかしその行動が遅かった。


 少女は次々と熱戦級の頭部を弾丸でミキシングしていく。


 少女の援護によってこちらも助かった。男はそう思う。

 これで胎児級だけに対応できる。クラウスはにたりと笑う。


 胎児級は少女の銃声によってターゲットを少女に変えたようだ。少女に近づこうとしていた。


「させねぇよ。」



 スケーティングを使いながら胎児級に近づき、一振り。まず脚を両断する。

 片脚を斬られ、崩れ落ちる胎児級。だがそれで終わりではない。


 胎児級とてここでやられることはない。胎児級は左腕で身体を支え、右腕を振り回す。


 そんな攻撃当たるはずもない。全て躱し、その右腕を切り落とす。


 他の胎児級たちも心改に向けて、腕をおろす。

 だが、それも無意味だった。態勢が悪くなった胎児級は首を両断されてしまう。


「あと3体。速攻で狩るぞ。心改。」



 そして心改は駆け出した。



 ☆☆☆

<一方其の頃>



 熱戦級の数々の光線が私を襲う。


 一筋一筋がARMEDの装甲を焼き払う威力を持つ光線が。


 私は一つ一つ慎重に回避していく。光線は確かに一瞬で着弾するが、勿論回避する手段はある。


 発射元の熱戦級の尾の部分の向きで射線があらかたわかるのだ。

 あとはそれに合わせて当たらない位置に移動すればいい。


 少女は動く。ARMED──グラスパーに搭載された装備、T34式ライフルの照準をあわせ、放つ。


「私だって、一応はシューターなんだから。」


 少女の声は、このライフルの音によって掻き消された。


 そして、熱戦級は次々と銃弾の餌食となる……。


「Fire。」


 最後の熱戦級もまた…頭部に縦断が貫通して事切れた。




 ☆☆☆




 俺は最後の胎児級の首を黒蓮で両断する。


「Fuu。終わった終わった。」


 魔物はあらかた狩り終えた。あれほど戦場をかき回した甲級の姿はもう見えない。

 残ったものは衛兵たちの亡骸と無残な甲級や胎児級の死骸だけだった。


 俺はため息をつく。結局戦ってしまった。

 逃げるはずだったのだが…。


 あの目だ。あの目が俺をまたこの戦場に呼び戻されてしまった。


 空を見上げる。ただ…残ってしまったのはやはり


 虚しさだけなのだから。


「クラウスさーん。」


「そっちも終わったか。」


「はいっ。良かったです。ぢゃんと……""生""き""で""い""て""。」



 少女はなぜか涙声になっていた。俺は、涙を流す少女を慰めようとしたが、やめた。


 このままだと状況確認のため対応しにきた傭兵ギルドの者共や

 残りの衛兵達がこちらに集まってしまうと察したためだ。


 この街を去るか。

 色々とゆっくりとするつもりだったが仕方ない。


 もしこのまま街に戻ったらこの街の人々に賞賛され、目立つ。

 俺としては目立ちたくない。面倒だ。面倒だけはやはり嫌いだ。


 俺は去ろうとした。だが止められてしまった。

 心改の腕に少女のARMEDの腕がつかんでいた。


「ど、どこに行くんです?」


「ああ、このまま街を去るんだ。俺はしがない旅人さ…。流れに流れていくだけ…。目立つのは嫌いだ。」



 それにもう…英雄街道はもう御免だね。

 あの頃にはもう戻りたくない。


 だから…こう言おう。


「じゃあな。」


 少女は腕を離さなかった。

 そして俺にこういったのだ。


「ま、待ってください。私も連れて行ってくれませんか。」


 …と。


 俺はまた何か、厄介な拾い物を拾ってしまったようだ。

 やれやれだ。

ストックがちょっと溜まりそうにないので次回から更新頻度はおちますのでご了承ください。不定期更新に成るかもしれませんが…。

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