Prolog──昔日の栄光
一迅の風が吹く…、其処は戦場。駆ける鋼の鉄人、進みし跡は廃棄された薬莢の道。
中央は激戦区だ。
今まさに個々の機動力をもって鋼の鉄人達は敵を翻弄し、銃撃の海を進む。
「コマンドより、アサルト1,アサルト2,そのまま前進して、敵を翻弄。
サポート1はリンクを散布し終わったら、アサルトの火力支援。
砂は敵コマンドを狙って。今なら狙える。
場所はA3-5。其処からならいける。仕留めて。」
激戦区から離れた場所から鋼の鉄人に乗ったコマンダーは指令をだす。安全な勝利のために。
自らの指揮が絶対であるように。
「あのー指揮官。おれ一切指令ないんだが。どうすりゃいい?」
指揮官である少女にむけて言う、この男のことを忘れていた。
少女は応える。
「リーダーはアサルトが翻弄している間に突っ込んで玉砕してきて下さい。そうすれば勝てますので。」
「ちょ、コノハさん!? 何言ってるのかなーお兄さんわかんないや。」
ぐずるリーダーに向かって少女は言ってやろう。こうすれば言うとおり動いてくれるだろう…。
止めの一言を。
「早く逝ってくださいね。兄さん♪」
「あーわかったよ。逝ってくりゃいいんだろぅっ!いってくりゃあああぁぁぁぁ!!」
そしてこの男は行ってしまった。
正に戦闘真っ最中の敵のど真ん中に。
☆☆☆
鋼の鉄人───ARMEDは動く。敵を倒さんがために。
スケーティングシステムを起動し、敵を惑わせるために、左に、右に、大きく動く。
相手はその挙動に焦った。
彼とて強者であった。だが、彼の相手のクラン「星の夜会」は大半のプレイヤーが羨むトップクランの一つ、少数精鋭のクランだ。
其のプレイヤーが相手となるとこちらも余裕はない。
彼は撃ち続ける。自らのARMEDのメイン兵装、アサルトライフル ─── [RG-7]を。
だが彼とて安心できない。相手のプレイヤー、しずずは二つ名こそないが、堅実なプレイで有名な人だ。
そのような相手に牽制射撃をしたとしても意味が無い。
実際、牽制射撃は意味を為さなかった。近づくしずずのARMEDの手には連射式ショットガン── [天]が握られていた。
「───ッ!」
彼は持ち替える。ここから先は近接戦だ。格闘もあり得る距離だ。ここで彼は選択する。魔力駆動式ブレード─── [ブレイガ]を。
自らの得意距離だけに彼は歓喜する。ここは自分の距離だと…。
「ここは…狙う!!」
彼はフットペダルを踏む。構える。
スケーティングを加速させ、この刃で敵ARMEDを狩るために。
だが彼の刃は届かなかった。いや振るうことすらできなかった。
その前に彼のARMEDは突然の衝撃に備えられなかったのだ。1機のARMEDが彼らの間に突っ込んできたのだから…。
「Oo-rah !」
彼は突然の衝撃に視界が揺れた。ふっとばされた。
そして目の前のモニターに映るARMEDに危機を感じた。
盾を装備し、その盾にはナイフに刺されたスカルのエンブレム、彼ら、プレイヤー達はこのARMEDをみれば、こう呼ぶ。
「絶壁」と。
その絶壁が彼の眼前に迫っており、このままではこっちのコアがやられる。そう思った彼は咄嗟にレバーを動かしフットペダルを踏む。
自慢の格闘武器を当てるために。
だが其の攻撃は、その大きな盾によって防がれてしまう。
「なんだぁ?こんなので俺の盾が壊せると思ってねぇよなぁ。」
絶壁はナイフを振り上げた。
「あばよ。しめぇだ。」
振り下ろされるナイフを眼前に見えた時を最期に、彼の意識はここでブラックアウトした。
そして次に目覚めた時にアナウンスが響いた。
YOU LOSEと…。
☆☆☆
「「「「「「カンパ~イ!」」」」」」
私たちは勝ち切った。クラントーナメント決勝を制して優勝だ。
私の隣はしずずさんとサクヤさんによって固められている。
しずずさんもサクヤさんもアサルト乗りだ。みんなの前にでて、敵と近接戦を広げるカテゴリだ。
「全く、どうしてまた突っ込んできたんですか~リーダー?」
「いやーコノハに突っ込めって言われたからなー。突っ込んでみたぁ。」
ゲラゲラと笑っている人は私の現実の兄で、このクランのリーダーでもあり、二つ名、「絶壁」をもつミドウ。
「私、突っ込めとは行ってないですよ。兄さん。玉砕してこいって言ったんですよ?
実際兄さん無しでも勝てましたし。」
「え?そ、そんなー。」
「まぁまぁリーダーしょげないしょげない。いつものことだろ?」
何時もの通りしょげた兄さんを励ます?男性はプライさん。このクラン唯一のサポートで私のサポートをしてくれる人だ。
「ミドウ、そんなことより、賞金、いくら入ったんですか?いつ振り込まれるのですか?」
報酬のことを聞くのは、私達のクラン「星の夜会」のサブリーダー、カラハさんだ。
この人は凄腕のスナイパーで二つ名「闇夜の梟」と呼ばれている。
「え~とだな。大会MVP報酬が含まれてたから300万Bitくらいじゃないかな?明日には振り込まれてるはずだから。それで勘弁よ、カラハ~。」
そう言って、彼はジョッキを煽る。ここはVR内なのであくまで酒は酔った気分になれるだけだ。
サクヤさんは自分の刀を見ながら、
「それではリーダー。私の剣を買い換えてもいいか?その賞金で。そろそろガタがきている。」
「う~ん。どうカラハ。いけそう?」
カラハさんは通帳画面を見ながら、
「前回の大会賞金も残っているので、行けそうですね。許可します。」
それを聞いたサクヤさんは子供みたいにはしゃいでいた。正直、怖いです。
刀を持ちながらなので。
私は気になった話題があったのでここでぶちまけることにしました。
「そういえば明日に大型アップデート来ますけど、ホームとかは変わりませんよね?」
それを聞いたみんなは、口々に答えてくれた。
「あ~、そういえば来るな。確か、エピソード5になるんだっけ。また陣営がどう絡んでいくか解んなくなっちまうかー。」
「でも、これでARMEDの武器は増えるわね。時代が進むわけだし。」
「私は刀がふえればそれでよし。」
「お兄ちゃんは盾でみんなを守れればそれでいいよ。」
結局…大半は自分の特技しか興味が無いうちのクランでした…。
このゲーム。『ガンブレイク・キャバルリー』は、もう大体5年近くサービスが続けられたVRメカアクションゲーム。
プレイヤーは世界、アインスに降り立ち、ARMEDで駆け巡り、時代の流れに身を任せるも良し、世界に叛逆するも良し、と自由さを売りにしたゲームだった。
エピソードごとに様々な勢力によって時代が移り変わることも特徴だった。このゲームをヤる前は半月ごとに大型アップデートされているゲームと兄さんからは聞いていた。
しかたなしに私は兄さんに誘われて、エピソード4から参加した。そして兄さんや、クランの仲間達に支えられながらもこの世界を駆け抜けた。
だけど私は知らなかった。この世界は…未だに謎が多すぎることを。
そして、なぜ時代が変わり続けるのかも…。
この時の私はただ…何も思わなかったことを後悔することになる。
読みまくっていたらいつの間にか書いていた。何をいって(ry (「・ω・)「ガオー
拙い作品ですがどうぞご贔屓に_(:3」∠)_
※5月9日ルビ追加