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異世界とは

不定期更新です。

 


 異世界。

 地球とは違う異色な世界であり、人間だけでなくエルフ、ドワーフ、その他諸々、数多の種族が存在し、日々その種族独自の生活を続けている。

 そして、この異世界という異郷どころか前人未到な地は、主に中世ヨーロッパのような町並みであり、科学技術などといった近代的な文化は備わっていない。しかし、一方で"魔法"と呼称される地球の科学では解明できないような異世界独特の技術がある。



 そこで、次にこれについて、地球と比較してみようと 思う。


 言語だ。


 数々の小説やアニメなどでは決まって、異世界人と地球人は言葉が通じていた。しかし、それは至極奇妙な事象だ。

 地球では場所により人々が話す言語は違うのに、なぜ異世界では転生者と同じなのだろうか。


 ところが、実を言うと違うのである。


 前言撤回、言語は違う。

 ファンタジーなどの小説を読めばわかると思うが、地球で見たこともないような言葉、つまり文字についての描写はあるのだ。だが、それがあるとしても、会話のキャッチボールはなぜか必然と可能になっている。これは、不自然なのではないのだろうか。


 いや、それ以上におかしいにもほどがある。


 異世界なのに、言葉に関しては異なっていないのではないか。したがって、会話は不可能という結論に至ってしまうのだ。



 そう、これが小説などのフィクションではない現実の異世界。



 そんな思い通りに行かない世界こそが、異世界なのだ。




 そんな現実の、フィクションとはかけ離れた非情な異世界にとある少年が飛ばされた。

 決して、勇者召喚などといった優遇されるような展開ではない。


 ちょっとした偶然だ。あるいは自然界の摂理。

 そんな世界の理にも介入するほどの現象こそが、異世界転生なのだ。



 そんな世界のトラブルに一人の凡庸な少年は巻き込まれてしまったのだ。



 世の中の不条理や理不尽に抗えず、無念に。

 しかし、この少年は心底この現象を嬉しく思っていた。彼の頭の中にはフィクションの異世界で埋め尽くされていたのだろう。しかし、そんな荒唐無稽な展開は用意されないのが現実。彼は甘く見過ぎていた。


 地球よりもよっぽど残酷で、非情で、暗黒な....そんな世界で一人。




 彼は地球人の如く、やすらかに、美しく、油断していた。



 この先歩む道をつゆ知らず....。



 ◆



 目覚めたら薄い路地裏にいた。

 しかし僅かながらも耳には街の賑やかな騒音のようなものが耳に入る。路地裏といっても、街の近くの比較的安全な場所だろう。と、少年は甘く考えた。


 もちろん、それは違った。



 違うにもほどがあった。



「アギュナババラシ。サザネガババシ?」

「は、はい?」


 全身を防具で包まれている、いわゆる騎士という者がまえに立ちはだかった。少年は思わずその荘厳さに息を飲んだが、それと同時に怖気がした。


 言っている言葉だ。


「ザザネガババシ?」

「ざざねふぁばーし?な、なんですかそれ」

「アルノグルナ、ガヤババ、バルズィ」


 そう騎士は微かに呟くように言ってから、背に携えてある長槍を手に持ち始めた。

 少年は直感で騎士のやらんとすることを理解した。

 少年を殺すようなのだ。


「ガァァラブァナッ!!」

「うぁあーー!」


 騎士の野太い野獣に気圧されそうになるが、少年は走り続ける。

 少年は今酷く困惑している。

 全く想像したものと異なるからだ。目覚めたら殺される?彼にとっては冗談にもほどがあるだろう。だが、現に起きてしまっている。


 少年は危機から脱するため一心不乱に路地裏を駆ける。

 だが、鍛え抜かれた騎士には及ばず少しの逃避の末、すぐに鎖のようなもので騎士に拘束された。


「アルノバジデラシシィ、ゾラェア!」

「やめろっーよ!ちくしょー!」


 両手を封じられてしまい、無力になってしまった。

 少年は困惑状態から既に衝撃を受けてしまった。

 あまりにも理不尽だということに。そして、わけがわからないことに。


 なぜと問う。


 そして、再度問う。


 少年はそう、何者に対してかわからず嘯くのだった。



 この異世界の現実を...。




 ◆



 目隠しをされ、少し歩いていくととある場所へ着いた。


 いわゆる家畜が食される会場。


 少年はそこにいるのだ。

 彼は数々の感情が入り混じり涙がこぼれそうになった。地球で平穏な生活を続けていたからだろう。少年は心で今までにないくらいある物事と葛藤していた。これを認めるとこの少年のプライド、在り方そのものが否定されかねない。しかし、今の未知なる危機的状況が少年の在り方の全否定を招いている。少年はただそのもやに心で戦うことでいっぱいだった。


 自分も置かれた状況を知らずに...。否、知る術がないのだ。


 そして、一先ず心のもやが消え、気がつくと少年は身体中何かに固定されていた。そして、どこか浮遊感のようなものを感じた。



 そして、少年は気づいた。気づいてしまった。この非情な現状に....。



「アルノバジュラディッツォーロ!!」

「「「「アラジェーー!!」」」」

「ナヴァロビティッツァロー!」

「「「「アラジェーー!!」」」」

「サブィミバラジ、ジャゲヴアァオ!!」


 処刑台のようなところに吊るされているのだ。しかも観衆がごまんと。

 少年が殺されるのを心待ちにしているようだ。

 狂喜の声がそこかしこから耳にウジ虫のように入り込んでくる。少年を娯楽としての使い捨ての物としか見ていないのだ。

 少年は酷く無気力になった。

 泣きはしない。

 怒りもしない。

 ただ無表情を制している。

 これが裏切りに裏切られた者の末路であった。少年は理性すらもないだろう。それはフィクションに憧れ続けたせいだ。少年自身の過ちだ。

 しかし、そんな心を知らず、観衆は乱舞を繰り返し、飄々としている。だが仮に心を読み取れるとしても、彼らはこの有様のままだろう。


 理由は至極簡単。



 これが、異世界だからだ。



 どこからか門が開く音がした。

 それと同時に狂喜の乱舞が一層激しく、荒々しくなって行く。

 会場十が声、声、声。

 そして、踊りまくっている。踊り、声、踊り、声、


 野太い咆哮。


 門から現れたのは全身黒い残滓を纏った怪獣だった。それは虎にも、ワニにも、牛にも似ており、この世の生物とは言い難いものだった。いや....。事実"この世"のではない。


 "異世界"の生物だ。


 この魑魅魍魎とした外観を、姿を、持ち合わせている生物こそが異世界の生き物なのだ。

 だが少年は依然と微動だにしない。



 この儚い物語の結末は整った。もうとっくに、転生される前から整っていた。少年は死ぬ運命であった。

 偶然に巻き込まれ、そして油断し、死ぬ。せめて油断はしなければ、もう少し長く生き延びれたはずだ。

 それかもう少し味のある死に方が実現できたはずだ。

 泣き喚いた挙句、頭から食われ、もがいた末に死ぬ。

 超人的な力を発揮し拘束から逃れるが、生き物から逃げ切れられず身体中をボロボロにしてから食われる。


 どれも味があって良かった。


 だが"今回"はそうならなかったようだ。少年は無表情を制し、無気力のまま、無抵抗で無慈悲に人生が無になった。つまらない。非常に退屈なストーリー。否、駄咄だった。


 少年にはもう少し相応しい死に方があったのではなかろうか。



 つくづく そう思うのだった。





 さて、"次回"の獲物は誰になるのだろうか。



 それは、お楽しみとしよう。







 そんなことを考えながら、 帰った。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

感想いただけると狂喜の乱舞をしてしまいます笑。

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