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4.デュラハンの『姉弟』

「ふがっ!」



 ごろんっ…ごろごろ…



 あ、頭が落ちたんだが…。


石畳の床を転がっているぞ、恐ろしいほどの威力があったのか!


「ボクはいつも言っているだろう!入るときはノックをしろって!まったく何度言えば…」


 いや、頭が…ね?


頭が落ちちゃってるよこのメイドさん。


「だからって~顔はやめてくださいよ~!傷物になったらどうしてくれるんです?お嫁にもらってくれます?ね~ね~リーナちゃ~ん?面倒見てくれます~?」


「まずはそのすぐに転がり落ちる頭をどうにかしないかい?」


 あの~頭。


 てか、落っこちた頭が騒がしい。


 残った胴体の方は扉を開けた後は丁寧に閉めて、気を着けして壁際に待機している。


 こっちを向いてるわけじゃないので…ポニーテールな後頭部しか見えないんだが…


「ほらっさっさと拾って、邪魔になるじゃないか!それに、タケルに挨拶しなきゃいけないよ?」


「タケルって誰さ!私の知らない間に男を!ぐ、ぐぬぬぬ…痛い~。」


 なんだ?気に障ったらしいリーナは転がる頭を踏みつけた。


「無礼じゃないかな?トライオス陛下と呼びたまえ!このっ頭軽女め!金具で留めてあげようか?」


「いや、今度はとらいおすって誰さっ!まさか!二股か!私というメイドがいながらなんたること!それに~私の頭はそこまで軽くありませ~ン!後、留め具は本気でやめてね?私のレーゾン デートルが失われてしまうわ~!価値のない女になってしまう!あ、その時は嫁にもらってくれます~?」


 踏みつけられた頭と白衣のダークエルフが口論するような世界が俺を待っているとは思いもしなかったぜ!


 クールにいこうぜ、クールに!肝は冷えそうだがね…。


 まるっきりホラー映像だもんな。


 壁際の首無しメイドさんがひたすら平謝りしてるんだぜ?


 それも、怒っているリーナじゃなくて俺のほうに…


「カラダは正直じゃないか?なのに、なぜ頭を回収しない!カラダのほうっ!頭乗っけてからタケルに謝りたまえ!選択肢は間違ってないが順番がダメだ!」


「頭と身体が離れるとちょいとズレちゃうんですよ。大目に見てください。てか、ぐぬぬう…見えそうでパンツが見えない。」


「「「…。」」」


 俺、リーナ、レベックは言葉を失った。


「ふわぁ~。うるさいわね…。自分の見てなさいよ。アコー。」


 ん?あほ~?


「あほじゃありません!アコーです!だれです!失礼なこと思ったの!」


「ああ、俺だ。すまない。」


「トライオス、大丈夫。それが普通よ。」


「リーンさま~あんまりです~。てか、またトライオスって名前が…そして、今謝ったの誰?殿方よね?だれ~だれです~?」


「ヴィオリーン様っていいなさいよ!リーンって呼んでいいのは御爺様とリーナとえっとあっとそれと…私が認めたヤツだけよ!アナタは許可してないわ!トライオスは別に呼ばしてあげてもいいわよ!さあ!呼びなさい!」


 強制ですか?それに、顔真っ赤じゃないか…


「リーン大丈夫か?顔が赤いぞ?」


「だ、だだだだいじょうぶれすっ!ふ、ふ~んなかなかいいわね。トライオスに呼ばれるのは気分がいいわ。」


 キャラが濃いよ。なぜに女性の下着にここまで…頭さ、じゃなくてアコーさんよ、変態さんだな。


「だえでふ?ひぇんひゃひにゃんへおもっひゃのひゃ!淑女です!(キリッ)」


 誰です?変態だと思ったのは!…そして淑女だけはキリッとしながら答えた。


「リーナ、退いてあげてくれ。俺が直すよ。さっきからずっと平謝りされてるからさ…。」


 俺はリーナの肩に手を置きながら囁いた。


「しょ、しょうがないな~この子はすぐにつけあがるから注意してね?」


 そう言いながら足をどけて俺の後ろに下がった。


「御仁よ、助かり…い、ぎぎぎぎ…なんですこの持ち方はっ!?目の前が真っ暗ですよ!」


 ん?どんな持ちかたかって?アイアンクロー?


 あれだよ、バスケットボールを片手で持つような感じかね?


「ついでだが、試してみたい魔法があったんだ!いいかね?皆に効くか分からないけど…」


 周りにそれとなく目を覆うようにジェスチャーする。


 無論、アコーさんには見えない。


「エリアヒール!」


 部屋がとても明るくなっ…


「ぎにゃ~目が痛い、目がっ!瞑ってるのに目が~眩しさをダイレクトにいぃ~!だけど、あったかくて気持ちいぃ~!やっぱり眩しい!」


 そうだよな、アコーさんを持っている右手が中心となって光ってるのだから…


「今回は防ぎました。でも凄いですよね、陛下の回復魔王…じゃなくて魔法。」


「私もそう思うわ。アンデッドモンスター倒せるんじゃない?」


「タケル、すでにエリアヒール使えたんだね。凄いじゃないか!この部屋でさっき初めてヒール使ったばっかりなのに…流石、ボクの勇者様!」


 これは眩しいね、発動させた本人が眩しいのはどうにかしたいな。


「なあ、リーナ。俺にもそのオオクロなんとかから作ったソレ、作ってくれたりしないかい?」


「お安い御用だよ。」


 頭を壁際に立つカラダに乗せる。


「ほほう!片角の…さっき廊下で話し声が聞こえてた気が…確か、ま、ま、まま魔王様!わ、私としたことが!身内ばかりで会話していると思っていました!まことに申し訳ありません!」


 ごとっ…ごろごろ…


「あら、あららら…。み、見えた!ふぎゃ!イタイイタイ!頭が~!助けて魔王様っ!」


 勢いよく頭を下げたことによりまた落ちた。これでいいのか?メイドさんよ。


 それにしても、よく頭の回る子だ。そのまんまの意味で。


「アコー!ワザとだろっ!よくもボクの…」


 また踏まれ始めた…


 何だか顔を踏まれるのを悦んでいる様なきがするんだが。


 あの恍惚とした笑顔はマジだろうな…


 先ほどから首無しの身体の方は「ななめ45度」をキープしている。


 ちなみに彼女は、デュラハンという妖精族らしい。


 茶色い髪をポニーテールにしており、碧眼、顔だけ見る分には20代前半といったところだろうか…


「もらったああぁ!このタイミングを待っていましたよ!先ほどからの行いは全てアナタを油断させるためだったのです!顔を踏まれて悦んでたのも演技ですからねっ!ホントですよ?ふふふっ…新たな魔王は、リーン様なのですよ!アナタにはこの場で退場願います!」


 俺が、リーナに踏まれているアコーの頭から視線を逸らし、ヴィオリーンの方を向くと同じくしてアコーが声高々に言い放った。


「『シャドースピア!』」


 ザンッ!


「え?タケル…そんな。」


「へ、陛下っ!」


「トライオス!アコー、貴女なんてことを!」


 驚く内の二名は俺が攻撃されたことに驚き、最初に驚いたリーナに関しては驚いた理由が違ってたりする。


「反射的に掴んでしまったが、これは触って大丈夫だったのかね?」


「な、ばかな!何であの速さの攻撃魔法を掴んで止めちゃうんですか!?」


 床から俺の首元へと伸びる黒い槍状の物体、その柄の部分を握る俺を見て驚いていた。


 握る力を強めると、「パシュッ」と音を立てながら霧散してしまった。


「マジデスカ!!!…こうなったらっ!私特製痺れ薬!」


 その発言に反応した首無しの身体の方が自身のエプロンドレスの胸元に手を突っ込み、谷間から小さなビンを取り出し、足元に叩きつけた!


「あ、ちょ!なんで自分の足元にっ、けほっ、けほっ、ぐううう…床に転がる私だけダイレクトじゃないですか!」


「「「「…。」」」」


 焦りだしたアコーのポニーテールを無造作に掴み、持ち上げるリーナ。


 いつの間にかあのサングラスみたいなやつをかけている。


「タケル、すまないが痺れ薬とやらが撒かれたらしい。レジストを頼めるかい?」


 俺は無言で頷くと、アコーの前頭部にブレーン・クロー(脳天締め)をキメながら…


「レジストフィールド!」


 部屋がとても明るくなった!


<回復魔法の熟練度が上がった!>

<レジストフィールドが LV2 に上がった!>

<レジストボディ LV1 を覚えた!>


 レジストボディってなんだろうか…


<対象を一時的に状態異常にならないようにする魔法です。>

<使用者は効果持続中、淡く光ります。>


 それって、回復魔法なの?


<予防です。健康には欠かせませんよね?>

<なので、回復魔法で大丈夫です。>


 それでいいのか?



 …返事が無い。


 てか、今サラッと疑問に思ったことに答えてくれたよ声の人。


「ふ、ふひいいぃ!痺れが取れいきますよ!気持ちいぃ~!けど、やっぱり眩しいです!それに、頭がミシミシいってますよ!助けて~魔王様!」


 すると、扉のほうからノックする音が聞こえてきた。


「ん?なんだい、ボクに用事かな?入りたまえ。」


「失礼します。」


 先ほどの見回り兵の一人ようだが部屋に入ると、ブレーン・クローされているアコーの頭を見て、自分の首元をカチャカチャといわせ始める。


 そして、『頭』を外すとそのまま床に置いた。


 首から上を無くした鎧はガチャリと両膝を床につける。


 先に降ろした兜のフェイスガードを持ち上げ、固定すると…


「姉がまことに申し訳ありません!無礼を承知で進言させてください。命だけはどうか!どうか奪わないでください!たった一人の家族なんです。お願いします!」


 床に置かれた『碧眼』の若者の泣き出しそうな顔と、首無し鎧の土下座がとても印象に残りました。


「…ディオンさん。じ、自分からもお願いします。」


 レベックも頭を下げた。


「そうよっ!弟とレベックちゃんに免じて開放するべきです。魔王さあだだだ…!髪引っ張らないでくださいよリーナちゃんっ!キューティクルが!」


 ちょいちょいカタカナが入るよな。どこからこういう言葉を仕入れてくるんだ?


「ボクとしては、殺さないまでもオシオキくらいは考えたほうがいいと思うんだよ。」


「いや、俺としては無傷だから問題ないんだが?」


「(パンツ見られた。)」


「ん?」


「だから、オシオキが必要なんだよ?分かったかい?タケル。」


 アコーの髪から手を離したリーナの肩がプルプル震えている…


「あ、あれはですね~その、本当は黒くて…じゃなくて…暗くて見えなかったな~見えなかったんだよな~だから許して!ねっ?見えてないから、許してっ、ね?」


 見てないじゃなく、見えてないと言い張る時点でどうかと思うよ。


 現行犯だね。


「姉さん。見苦しい真似はよして、オシオキを受けてください。」


「やだ~やだやだ~私のアイデンティティが~」


 何をさせるつもりなんだ?


「なあ、オシオキって…」


「兜と金具で首を落とさないように固定するだけですよ。」


「それも、期限付きでね。そうしないと、モチベーションが凄い下がるのよ。近くを通られると私たちのほうまで気分が落ちちゃうの。迷惑な話よね。」


 それは面倒な話だな。オシオキには代わり…


 ぺろんっ!


「うひゃ!」


 ぱしっ!


 変な声出してしまった。なんなんだよ!急に手の平舐めやがって。放してしまった。


「ふははは!多勢に無勢。逃げさせてもらいます!」


 アコーは自分の頭をキャッチした後、小脇に抱えると笑い出し…そのまま扉へと向かって駆け出した!


 分かっていたかのようにリーナは白衣のポケットから取り出していた杖の先を走り出したその背にむけて…


「『ショックショット!』」


 この魔法はビリビリするよな…そう思ってバレーボールサイズの黄色い光を目で追うと…


 バリュッ!


 は!?こんな音しなかったぞ?


「あぎゃっ!ぎゃがががが…!!!」


<それは、勇者様が既に状態異常耐性を上げていたからですよ。>


 なるほど。説明ありがとう、声の人。


 にしても、勇者様ね。



 アコーは頭を小脇に抱えながら倒れ伏し、ビクビクしている…。


「ボクの魔法力でもこんなものかな…。本来はこんな感じで麻痺するはずなんだ。タケルはすごいよね。スタンのほうも効かないんだからさ。」


「カエル魔王が放った最初のショックの時は静電気程度にピリッとしたな。次にスタンを受けたら少しズシリとはきたぞ。でもって、ショックショットの時はビリビリしただけで麻痺するようなことは無かったな。」


 みんな、そんな顔しないでくれよ。


 頭を取り付けなおしたディオンまで信じられない様なものを見る目をこちらに向けている。


「最初からその程度って…やっぱり、勇者だからかしらね?」


「でも、ボクが魔法を放った時は首を傾げるだけでなんとも無かったよ。確かにバグパスの方が魔法力は上だけどさ、全く効かなかったんだよ?」


 リーナがヴィオリーンに力説している。


「あ~それはな、状態異常耐性がMAXになったからだと思うぞ?」


「な、ば…。そんな簡単に言ってるけど、耐性がMAXだなんて聞いたことが無いよ。だから、壊れた結晶石から出てた煙も効かなかったのか…。ボクの努力の結晶もタケルの前では文字通りただの石ころだったわけだね。」


「滅ぼされる側になっていたと思うとゾッとするわね。状態異常にならずに向かってくる敵だなんてどうしようもないもの。トライオスをこちらに召喚したバグパスにそこだけは感謝しないと。まあ、本人は召喚した相手に倒されちゃったわけだけど…。」


 今までの話に呆然としていたディオンだったが、バグパスの話になると…手を上げて発言しだした。


「勇者召喚を魔王の間で、本家とは違うバグパス様式の召喚を成功させたわけですね。だから、片角なのでしょうか?」


 そうかもしれないとしか言いようが無いよなこの角。気になる角をぺたぺた…。


 握って…パキンッ!


 え、パキン?


「へ、へへへ陛下!角折れちゃいましたよ!」


 はは、大げさだな~レベックは…って、折れてる。


 自分の右手に握られる黒く光沢のある角…



<ゆうしゃ は まおうのつの を てにいれた!>



 アイテムなのか、俺の角。てか、声の人、笑いこらえてるだろ?声が微かに震えているぞ。



<いえ、まさか折れるとは。ふ、ふふっ。>



「タケル…見事な角が折れたにしては、冷静すぎやしないかい?」


「ん?これで人間だった時の姿に近づけたかと思うと…あでっ、いでっ、いててて…」


 いててて、折れたせいで痛むのか?そしたら、これからはこの痛みに耐えていかなきゃならねえの…か?


 …ありゃ、痛みが治まった。


「トライオス…あなたどういうカラダのつくりしてるのよ。一瞬で再生したわよ、角。」


「興味深いね。ボクもはじめてみたよ。新しく生えてくるんじゃなくて、元通りに再生するだなんて。折れた角は握ったままなのにね。」


 残念。普通の人間の姿には近づけなかった。持っている角を左手に持ち替え、恐る恐る右手で折れた部分を触る。戻ってる~。


「この角どうしようか?」


「どうしようって言われても、魔王の角だよ?あ、そうだ。それを素材に使うよ!自身の体の一部を使って作る専用アーティファクトだなんてそれだけでも一級いや伝説級だね♪」


 アーティファクト(芸術品)?それに一級やら伝説級といわれてもなぁ。


「お願いするよ。それで、こうなったもともとの理由としてだな…俺用の靴、どうすんだ?アコーさんは痙攣してるし、来客用のスリッパとかでもないもんかね?」


 日本じゃないから流石にスリッパとか常備して無いよな。


「そうだったね。アコーのせいですっかり後回しになってしまった。」


 俺から受け取った角を頬に押し当て、スリスリしながらそんな事を言い出した。


「陛下。私の予備でしたらありますが、どうなさいます?」


「足のサイズは同じなのか?ディオン君。」


「君などは不要です。ディオンとお呼び下さい。姉のほうも呼び捨てで結構です。サイズの調節は簡単ですので大丈夫ですよ。では、足を拭くための布と一緒に持ってまいりましょうか?」


 その心遣いはありがたいが、持ってこさせるのは何だか気が引けるな…。


「いや、俺もついていくよ。俺の足の裏は丈夫そうだからな。リーナ、アーティファクトとやらはどれくらいで完成できそうなんだい?」


「素材はあるから、そう時間はかからないよ。」


 俺はその言葉に頷くとディオンの肩をポンと軽く叩き、催促する。


 リーナの部屋を後にし、廊下を歩いていると…


「陛下、先ほどは姉がご迷惑を。」


「いや、いいんだ。俺は急に現れた邪魔な存在だろう。」


「姉は、ヴィオリーン様に魔王になっていただきたかったようです。今回の件も積極的に根回しに尽力なされていました。」


「ディオンもヴィオリーンに魔王になってもらいたかったんだろう?」


 俺の発言に少し考える素振りを見せ、ゆっくりと語りだした。


「どうでしょうかね。私としては、結果のまだ見えない今の時点では善し悪しはつけられません。魔王陛下に仕えているのではなく、この国に仕えているのですから。」


「立派だな。だが、そんな気が変わるような…仕えたくなるような王になって魅せようか?この俺が。」


「ふふっ…それは期待したくなりますね。タケル陛下。」


 俺は、人好きのする笑顔を見せながら…


「だろう?期待しといてくれよ。ディオンとはいい友達になれそうだ。」


「王と一般兵が友達?変わったお方だ、ですが…そう言ってもらえると嬉しいですね。」


「それじゃあ、よろしく。」


「はい。よろしくおねがいします♪」


 どうやら目的の部屋の前についたようだ。


「私や姉はこの城に住みこみですので、部屋をあてがわれているんですよ。リーナ様の部屋に比べれば設備やら広さはお粗末ですが。」


「いや、城に自分の部屋があるだけで凄いと思うんだが?」


 ちなみにディオンは俺より年上で23だそうです。


 姉のアコーは29らしい。


 部屋にお邪魔し、ベッドに腰掛ける。


 ディオンは奥のクローゼットからブーツを取り出し、 水の入ったタライを椅子のそばに降ろしながら小脇に挟んでいた布を渡してくる。


 俺は受け取った布をタライの水につけ、軽く絞ると足を拭く。


「それで、靴?ブーツかね?それを履く前に靴下とかは…」


「?大丈夫ですよ。エンチャントが付与されていますので季節を問わず、快適に履いていられますのでそのままでいいんですよ。サイズも調節できます。」


 すごいな。付与魔法か、リーナも似たような事ができるのかね。


 テーブルの上のブーツを手もとに寄せ、見てみる。


 何かしらの絵のような、模様のようなものが内側に描かれている。


 これがエンチャントの術式と言うことでいいんだな?興味深い。


「物珍しいですかね?新品ですからどうぞご自由に御覧になってください。」


「新品をわざわざ俺なんかに、お古でも良かったんじゃないか?」


「そう言うわけには行きませんよ。朝には皆様の前に出られるのですから、上は魔王のローブ、下はその丈夫そうなズボン、そしてエンチャント付きのブーツ。手には魔王の杖を握り、そのお姿をお披露目するわけですよ。」


 何だかキラキラしてるんだが…彼の中では俺の姿は美化されてるのかね?


 履いてみると確かにフィットする。裸足で履いているのに違和感も無い。これで季節を問わないとは優れものだ。


 ディオンの部屋を出て、魔王の間に向かう。目的は『杖』の回収。


 それにしても歩きやすいなぁ。


「鎧を着ている兵にかなり重宝されるんじゃないか?」


「鎧もエンチャントが付与されているものがほとんどですから確かに一年を通して勝手がいいですよ。」


 レベックみたいな感じの兵でも鎧姿で過ごしやすいわけだ。


 納得、納得。


「そろそろ…おや?あの子は…」


「ん?さっきは居なかったし、あんな幼い子がこんな夜中に廊下に座っているのはどうかと思うがな。」



 魔王の間の扉の前で膝を抱えて座り込む白髪の幼子、その姿はなぜか幻想的だった。



「お嬢さん、どうしたんだい?」


 俺の声に頭を上げて顔を向ける。


 瞳の色はグレーで泣いていたのか目元が少し赤くなっている。


「違うよ~バルちゃんだよ~。」


 ぷく~っと頬を膨らませたバルちゃんに怒られてしまった。


 しょうがないじゃないか、名前知らなかったんだから。



◆アコー 【29】

妖精族デュラハン

・茶色髪、碧眼

・ディオンの姉




◆ディオン 【23】

妖精族デュラハン

・茶色髪、碧眼

・アコーの弟




◆バルちゃん 【--】

妖精族バンシー

・白髪、グレーの瞳

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