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2.勇者な『回復魔王』

 すっかり忘れ去られていた。ヴィオリーン


「うぐぐ…リーナのミスでしょ?」


 やっとの思いで話し出す。


 その言葉に当のリーナは両手を白衣のポケットに突っ込むと不機嫌そうに口を尖らせながら…


「ドジっ子のリーン様のいつものミスだろう?どうせ投げ込む時に魔力の流し方を間違えただけさ!」


「なに、を。私は悪くないぞ!もしかしたらコイツのせいだ!コイツのせいに決まってる!あの防御魔法すら破壊してバグパスを一撃で殺した、コイツの仕業に違いない!だから、私のミスではないのだぞ!絶対だからな!」


「ヴィオリーン様。お静かに…夜中ですよ?」


 耳を塞いだレベックが困り顔で注意する。


 よいこのみんな、夜中は騒いじゃダメだよ。お兄さんと約束だからね?


 レベックの言葉に俺もそれとなく頷く。



 ギリリッ



 すげー歯軋りだな。歯が磨り減っちゃうぞ!


「こらこら、リーン。新しい魔王様だよ?確かに彼は特殊魔法が…特殊魔法が、効かない。…あ、そうか。効かないんだ。タケル、その部屋に居た時に何か投げ込まれただろう?どうなった?」


 おや、あの石ころの事か?


「ん?あいつを殴った時に扉が開く音と、何かが投げ込まれる音、そして、ヴィオリーンの声が聞こえたな。」


「それで、その石ころは?」


 ちょ、近い近い…真剣な眼差しだが、異性ということで反応してしまう。


「あ、ああ。それなら煙が出てたな…。そのせいで部屋の中が煙たくなって、このままここに居たら不味いだろうと思って気を失った彼女を抱えながらその部屋から出てきたんだよ。」


 そして、走ってレベックに近づきここに連れてきてもらったと伝える。


「今更だけど…さっきの話からして石が投げ込まれる前にシールドも壊したのかい?」


「ん?透明な壁みたいなのの事か。それなら、こうパリーンって割れちまったぞ。特に問題なくカエルの顔面を殴れたが?」


「自分の生きてきた世界と違いすぎる。新しい魔王様は凄すぎます。」


「んな、そのシールドが厄介だったのに…そのためのアイテムでもあったのよ…私の苦労ってなんだったの…。」


「おい、そこでちゃっかり私の苦労とか言うなよな!ボクの苦労だぞ!まったく。」


 そうだな、作ったのはリーナのようだ。


 似たような石が机に転がってるし、研究者なのだろうから。


「タケルに状態異状が見当たらないのは、強い力のおかげなのだろう。だから、ボクの作った結界石が負けて煙すら上げたと…その煙でリーンは調子を悪くしたと…」


「そらみろ!私が言ったとおりコイツのせいではないかっ!」


 指を指すな、指を…全く。


「俺は名前で呼んでるんだが。いつまでコイツ呼ばわりするつもりだ?教育がなってないようだな、社会勉強しなおすか?こんなんで良く次期魔王目指していたな。それとも、態度だけ偉そうなら魔王になれるのか?」


 顔を真っ赤にしながら、目元を潤ませ…


「にゃにをっ!う、うう…私はもう勉強したくないわ!それに、簡単に魔王になれるはずないでしょ?そんなのもわかんないのっ?それにあ、アナタの名前しらなし…この、ばーか!ばーか!片角ばーか!」


 やべえ、ガキだ。こんなでよくもまあ…


「ごめんよ、タケル。彼女は普段はもっとまともなはずなんだ…。まあ、勉強嫌いではあるのは事実だけど、社会性は持ち合わせていたはずなんだ。ほら、リーン。彼の名前はトライオス・タケル、キミをこの部屋まではこんできてくれた恩人だよ。」


「ふ、ふんっ。元よりトライオスのせいでしょ!私は悪くないわよっ!…う、ぐぐぐ。」


 苦しそうな顔をしだす。


 これじゃ怒りたくても怒れない。


「な、なあ。どうにかならないのか、リーナ?苦しそうだが…」


「といわれてもね、ボクは回復魔法は苦手なんだ。アイテムを作る分には得意なんだけどね。」


「自分も身体強化魔法と風属性に特化している所為で他の属性はからきしです。」


 俺は何ができるのかサッパリだ…。


 魔法のある世界に住んでたわけじゃないから当たり前か。


 てか、今の状況に適応しすぎな気がするぞ。


 試しに、どんな魔法があるのか聞いてみるか。


 もしかしたら使えるかもしれないからな。


 うん、魔法使えたらいいな。


 こんなときに何も使えないとかただの役立たずだもんな。


 俺の所為でもあると言われたら特に、後味も悪い。


 試しに聞いてみるか…


「なあ、回復魔法ってどんなのがあるんだ?」


「ん?そうだね~。ヒール系統がHP回復だからね~、これは状態異常だから…レジストでいいかな?まあ、できればの話だけれど。」


 そうか、レジストね。


 俺は、頭の中で回復魔法とやらのイメージをしながらソファーの上で苦しそうにしているヴィオリーンのおでこに右手をあてて…


「『レジスト!』『ヒール!』」


 ついでにヒールとやらも試してみた。


 唱えると、右手が手首まで白く淡く輝く。



 おお、これが魔法か!


 MP消費したって感覚が来るぞ!


 すげーな、魔法!


 魔法によって発生した淡い光がヴィオリーンの身体全体を包む。


「な、嘘だろう?タケルは回復魔法が使えたのか…それに、初級の魔法にしては強すぎるよっ!」


「か、回復魔王…じゃなかった。回復魔法の光がこんなに綺麗にはっきりと見えるなんて、美しいですね。自分、感動してます。」


 そして、光が収まると。


「う、うう?あれ、苦しくないし、あったかいわ。誰かの優しさに包まれ…え、トライオス?」


「ああ、俺だ。大丈夫か?もう苦しくないか?どこか痛いところは無いか?」


 額に乗っていた俺の右手を両手で包んで持ち上げニギニギしだした。


 そして、頬に朱が差し…


「あ、ありがとう。…で、でも元はアナタのせいなんだからねっ!」


 そうは言ってくるが、両手は俺の手を未だにニギニギしている。


 小さい手だな、そして柔らかい。


 なんだか、マッサージしてもらってるみたいで気持ちいい。


 思わず口元が綻んでしまう。


「そろそろいいかな?ボクとしてはこの光景はあまり面白くないんだが?」


 おや、リーナ?


 ご機嫌斜めのようだな…


 ここは、「よかったねぇ~」くらい声をかけるかと思ったのだが…


 どうしたんだろう?


「実に面白くない。タケル!ボクにも君の手をニギニギさせてはくれないか?」


「よければ、もう片方の手は自分が…」


 急に2人して奇妙なことを言い出す。


「こ、これには他意はないんだ。回復魔法の威力が高すぎたからね、もしかしたら何かしらの秘密があるとみたんだよ!大事なことだからもう一度言うけど、他意はないんだからね!ボクがただ単にニギニギしたいからではないんだよ!これも研究のためだ。うん。」


 そう言いながら、ヴィオリーンが寝ているソファーと俺の間に入り込むリーナ。


 さり気なく俺の手をヴィオリーンの両手から解かせ、そのままソファーから遠ざけると…


 か細い両手で俺の右手を柔らかく包んだ。


「こ、これはっ!ふ~む、ふむふむ…あったかいぞぉ~!ゴツゴツしていてそれに硬いな…」


「じ、自分も陛下の左手を失礼します。」


 なんだ、この光景は…


 俺棒立ちで、左右から背の低い子達にはさまれているような感じだ。


 リーナもそうだが、レベックも背が低いんだよな…。


 どちらの頭のてっぺんも俺の肩に全く届かない。


 辛うじてピンと立ったネコミミが肩の高さに届くかな?


 ぐ、愛らしいネコミミに手が伸ばしたくなるが、今は両手がニギニギ固めをかけられていて動かせない!


 な、なんと言う新手の拷問だ。


 リーナはふむふむ言いながら俺の指と自分の指を絡ませ始め…そのまま恋人繋ぎにもって行く。


 そして、絡めあった指を目を細めながら見ている。


 リーナの頬に朱が差す…


「いい、実にいいぞ。馴染む、このボクによく馴染むぞ!タケルっ!」


 幸せそうだな。


 おや?左手が持ち上げられる…


「トライオス陛下の左手…すごく大きいです。逞しくて、自分は、自分は…おかしくなっちゃいそうです…」


 レベックよ男の子?だろう?


 それとも何か?そっち系なのか?


 目つきが少し危ないぞ、肉食獣だ!


 かわいいけど…


 持ち上げた俺の左手の甲をレベックは自分の右頬に押し付ける。


 それにより、頬に模様のように生えている毛が当たる。



 やわらけぇ~。



 俺がそう思っていると…



「はむっ」

「はむ」

「ぺろぺろ…」

「んっ、なぁ~ん♪」



 去れ、俺の煩悩よ!


 いや、刺激が強いよレベック。


 頬ずりをやめたかと思ったら人差し指をはむはむし始める始末…


 そしてぺろぺろ。


 舌が少しざらついているのか、ゾワリとした感覚が背筋を駆け巡る。


 だが、悪くない。


 そして、また頬ずりをしだして愛らしく鳴いた。


 そう、鳴いたのだ。この子、大丈夫か?


「この光景はなんと言えば言いのかしらね。私としては、うらやま…ってちがう!全然羨ましくなんて無いんだからね!ホントよっ!」


 ヴィオリーンはこの光景を目にして顔を真っ赤にしながら首を振っている。


 それを満足そうに見ているリーナ。


「ん、ふふ…。そういえば、タケル。魔法陣の上にいつの間にかいたわけだよね?元は違うところに居たのを召喚されたということでいいのかな?」


「そうだな、『車に轢かれたっ』と思ったら足元が光ったんだよ。気付いたら魔法陣の上に立っていてね、そしたら視界に二足歩行しているカエルが居て笑いながら何か言っていたんだよ。」


「その車とは、馬車かい?それとも竜車?鳥車かな…もしかして虫車?」


 そうきたか…。


 馬車はまだ分かるとしても、竜車はないな。


 鳥車はダチョウみたいなのが引っ張ってるのかな。


 虫車に関しては何か想像したくないな。


 それに、轢かれたくない!


「いや、そのどれでもない。鉄でできた車だよ。車の力だけで動くんだ。」


 リーナは空いたもう片方の手を顎に添えると…


「となると、ゴーレム馬車かな?でも、試作品もまだ試験中のはずだけど…。」


 それっぽい名前の乗り物が出てきたな。


「いや、そうじゃないんだ。魔法が無い世界から来たんだよ。」


 俺の発言で皆固まる。


 すりすりしていたレベックもその動きが止まった。


「異世界召喚なのっ!まさか、妄言だとは思っていたけど…ほんとうにやってのけたのねっ!」


 今まで横になっていたヴィオリーンが勢いよく起き上がる。


 バストと共に…



 …。はっ!いかん!


 谷間が…


 その揺れる胸元に注目してしまう。



 服装もそうだが、誘っているのかい?お嬢さ…


 イテテ…。


 あんまり痛くは無いが、リーナに手の甲をつねられてしまった。


 おや?俺はどうしたんだっけ…


「もう、サキュバスの魅了にやられたんだね?」


<魅了耐性を手に入れた!>

<魅了耐性が上がった!>

<ん、もう。こんな簡単に魅了されないでください!>

<次からは注意してくださいね。>


 あ、ホントの様だ。魅了耐性って…


 いや、それより声に叱られたんだが…どういうことだ?


 ついでに注意された。


 はい、次は気をつけます。


「ぐ、トライオス!へんな事考えているでしょ!こ、この変態め!私を襲うつもりだな?ケダモノっ!(私はいつでもOKよっ!)」


「いや、魅了耐性がある今では別段といってなんも。お子様には手は出さん!」


 何か小声で聞こえた気がする…。


 気のせいだ、気のせい。


「お、お子様っ!私のこの胸を見てよくもそんなことが言えるわねっ!」


 そう言いながら見せつけてくる。


 おい、下から自分の手で持ち上げるなよ。


 おもちもちもち…


<魅了耐性が上がった!>

<…ばか。>


 はい。ごめんなさい。


「リーンは背丈や容姿がコンプレックスでね、それをカバーするために胸に視線をもって行かせてるんだ。挑発的な衣装だろう?」


 なるほど、他の事に気を取らせているのか。


 俺が魅了されたということは、レベック!無事かっ!



 …とても冷たい目をしていた。



 うわ~、様付けしてる相手に見せるような目ではないぞ。


 子供が泣き出すレベルじゃないのか?


 それも、見下すような感じも見受けられる。


 小さな声で何かブツブツ言っている。


 俺には聞こえない、聞こえてないぞ~


<呪詛耐性を手に入れた!>

<呪詛耐性が上がった!>

<呪詛耐性が上がった!>

<聴覚保護スキルを手に入れた!>


 怖いな。呪詛ときたか…それほどにまで何がレベックを変えてしまったのか。


「レジスト!」


 俺は、異常な状態のレベックにレジストをかけてみた。


 光が彼を包み…


「っ!?自分は何を?あ、あったかいですぅ~。」


 正気に戻ったようだ。


 だが…レベックよ、太ももをこすりあわせないでくれ!


 思わず生唾を飲み込んでしまった。


 すると、握った手を引っ張りながら…


「あ~ボクも、ボクも少し調子が悪いようだね。うん、調子が悪いみたいだ!さあ!タケル。レジストとヒールをボクにも頼むよ。急いでくれ、それとも焦らしているのかい?イヤらしい男め!」


 期待する眼差しで俺を見上げ、リーナが早口にそう告げる。


 確かに少し顔が赤いな、でも、イヤらしい男って言い方はどうかと思うぞ?


 後、焦らした覚えは全くございません。


「『レジスト!』『ヒール!』」


 そしてリーナの身体を覆うように淡く光輝いて…



<回復魔法の熟練度が上がった!>

<レジストが LV2 に上がった!>

<ヒールが LV2 に上がった!>

<エリアヒール LV1 を覚えた!>

<レジストフィールド LV1 を覚えた!>


 おやおや、LVが上がったぞ!


 新しく覚ええたってのも凄いな。


 エリアヒールってくらいだから周囲の複数人を一度に回復できるのかな?


 レジストフィールドということは、発動させればその領域内で効果があると考えるべきか。


「ふぁっあっ!気持ちいぃ~♪回復魔法ってこんなんだったっけ?不思議なことに優しさを感じるんだが…」


「俺にはよく分からん。さっきこの世界にきたばかりだからな。魔法のない世界だからなお更だ。」


 俺が言うと、今まで成り行きを見守りつつ、未だに自分の胸を下から持ち上げて左右に揺すっていたヴィオリーンが…


 一生懸命アピールしているが誰も見ていなかった動作を止めると何事もなかったかのように話し出した。


「魔王バグパスは人間国、それも勇者召喚を行うことができる国が近々勇者を召喚すると考え、その召喚に合わせて発動するオリジナルの魔法陣の研究をしていたのよ。我が国の資金や大事な資材を大量に使用してね。その所為で財政難気味となったの。」


 できるかどうかもわからない研究費によって国民が困ったわけか。


 それだけではないのだろうが不満が積もりに積もって今回の魔王討伐作戦なんだな?


「なぜ、そのバグパス魔王は勇者を召喚すると?」


「…御爺様が亡くなられたからだ。ひと月前に…」


 御爺様というとさっき名前が出ていたな、ヴィオリーンの祖父でバグパスの前の魔王だったか?


 …って、ひと月しか経っていないのか?


「不思議に思っているようだね?ボクが教えてあげるよ。まず、先々代となる魔王ヴィオロン様はご高齢による…云わば寿命だったのさ。そして、彼の死と共に新たにバグパスが魔王になった。ヴィオロン様の治めていた頃は問題なかったんだけどね。それでも魔物被害…」


「ちょっと待った。魔物被害とは?」


 俺が声をかけると話を中断して聞いてくれる。


 魔物被害って何だ?


「あ~タケルの世界には魔物もいないのかい?幸せな世界だね…」


「いや、そうでもないぞ。同族同士で戦争だってするし。いがみ合いも、そして孤児や餓死者達も大勢いるような世界だ。ただ、俺が住んでいた国はまだましなほうだっただけさ。」


「この世界でも似たようなもんさ、戦争はなくならない。この話もその勇者召喚の国と関わってくるよ。」


 どこの世界でも似たようなものだね…


 勇者の国に魔族の国…


 あまり考えたくはないがそう言うことなのか?


「考え込んでいるところ悪いけど、続きを話すよ。それでね、ボクたち魔族国も凶悪な魔物を殲滅しているんだ。だけど、勇者の国は魔族と魔物を結びつけ、事を起こそうとしてきているんだよ。それも昔からね。何度も戦争が起きた!そしてその度魔王が殺され国は崩れ、そして領地を奪われ…難民達が集まり、また新たな土地へと移り住んでいるんだ。」


 なんだそれは?あまりにも身勝手すぎる。


 だがそれよりも…


「ちょっと待ってくれ!リーナはダークエルフだろ?エルフ族とかではないのか?」


 俺が疑問を口にすると、ヴィオリーンもレベックも少し悲しい表情を…


 レベックもそういえば獣人族の血が流れてるんだったな。


「魔族の国はね…。同族から追われたり、迫害を受けたり、ただ見た目が少し他の子と違うだけで殺されかけた、そんな者達などが集まってできた大雑把な括りなんだ。だから、多種族国家なんだ!」


「それを勇者の国はバケモノの巣食う邪悪な国と!自らの国から逃げ出したり、追い出した国民達に対しては魂を売った咎人だと罵ったのだぞ!それを正当な理由にし、虐殺を…。」


 うわあ、聖戦のつもりか?


 そして、多民族国家みたいなものか。


「この国に様々な種族がいることは分かった。勇者の呼ばれる理由について頼む。」


 リーナも暗い表情になる。


「簡単さ、魔物の増加により、それを殲滅するために呼ばれるんだ。元はそうだったと聞く。でもね、何代か前の勇者の国の王族は魔物は魔族の生存区域が原因だと言い出し、勇者に殺すように命じたんだ。それにより、魔族国民が作った田畑に土地、財産に資材は奪われた。本当は宝の山と自分の支配域が欲しかっただけなんだよ!」


 強欲だな。王族とは…


 でも、実際元いた世界でも過去には同じようなことが行われていた。


 まあ、今でも行っているところはあるが。


 相手を悪魔扱いしてたりするもんな。


 それと同じか。


「魔王が代わったという知らせが大陸に行き渡り、攻め時いや、奪い時だと考えるであろうと…そうバグパスは考え、昔から研究していた魔法陣を魔王の間に設置し、その時を今か今かと待ちわびていたわけさ。」


 苦笑い気味に言うリーナ。


 それに続いてヴィオリーンが口を開く。


「いつ呼び出されるか、本当に呼び出されるか賭けだったようだが。痺れを切らしたし、実際民にも不安が募るばかりだった。だから、私がバグパスの代わりとなって御爺様のような王になると、今宵計画を実行したわけなのよ。」


 だが、魔王の間に入れば謎の片角男がカエル魔王を殴り倒したところだったと。


 今の話からすると…あのカエルも勇者と言ってたよな。


「それじゃあ、俺は勇者なのか?」


 俺の発言で、ぴたりと動きが止まる。


「は、はははは…そうなっちゃうんじゃないかな~ボクを殺すつもりかい?」


「いや、それはない。てか、なぜそんなことを?」


「いや、だってさ…呼ばれてすぐに魔王やっちゃったわけでしょ?」


 む、確かにそうだな。


 人間国によって送られてきたのか?


 いや、そんなはずはないよな…


 心配になってきた。


 俺、ここに居る3人を手にかけることはしたくないんだが…


「それはないわよ。だって、彼の研究が正しければ、殺戮兵器になる前に呼び出せたはずだから。」


 そ、そうか。兵器にならずにすんだのかな…


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