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◇3.盾の勇者

 このままではマズイ可能性があります。



『なら、わざと…いえ、念のため私が武器を構えてみて、様子を伺って見ますかね。流石に殺されることは無いだろうし、あのおバカな王様も馬鹿げたことで…駒いえ、道具を失おうとは思わないでしょう。』



 うー。ですが、同郷の士が急に武器を構えて威嚇するのはいかがなものかと思いますわ。



『強制させられるよりましじゃない?それじゃ、そん時はごめんね。』



 そう言いながら右手にはトライせんぱいの私物を抱き、左手一本で戦斧を構えます。



「おや、そこの…名前は知らないけど、なぜタケルが今日バイトに着て行った上着を持ってるのかな?いや…まてよ、そうだよ。タケルが人の姿とは限らないじゃないか!(あの子のお母さんは、人じゃないんだったなぁ。)普通に異世界召喚されてるわけが無いのが道理。」



 今凄い物騒な発言が…。


 母親が人じゃない?


 でも、勇者様の世界には獣人や魔族、亜人なんて暮らしてませんわよね?



『(やっぱり、あの日の夜見た姿は渡来先輩の本当の姿なのね。)あ、もちろん。そこらへんの種族は空想上の産物とは言われているわ。もしかしたら居たのかもしれないし、もしかすると居るのかもしれないけどねぇ。』



 え、どんな姿を見たのか気になりますわ。



「その制服。タケルが通っていた高校の女生徒の物だろう?でも、タケルは21だ…接点があったとは思えないけどな~。なぜそんなに大事そうに持っているのやら…」



「渡来先輩は覚えていないかもしれませんがね、オープンスクールの時にお会いしたのが始めて、いえ、もしかしたらですが…私が中学の夏に見た『彼』もまた渡来先輩の姿だというならば、幾分と前から知っていることになります。」



「ほう?(誰かに見られた覚えは無いんだけどなぁ。それに、人除けも使用していたはずなんだけどね。あえて言い方のニュアンスを変えるとなると、嘘ではないのかも。)不思議なことを言うね。」



「あの腹筋シックスパックは忘れられません。おかげさまで、私…鍛えてますから。彼のそばに寄り添うに相応しいように。」



「むむ…。上腕二頭筋がいいんじゃないか!そこからの大胸筋だなんて…甥じゃなかったら危ない所だよ!おかげで、未だ独身さ!おめがねに適うほどのいい男がおらんのよ…。」



 二人の間になんともいえない空気が流れる。


 お互いに探るような目で見つめあっています。


 殿方の筋肉の話ですよね?


 あ、でも…わざとお互いにそのように逸らしたように思えますわ。


 この場で話すのはまずいと、目で語り合っているようです。


 ですが、その沈黙が破られます。



「お、おい!斧の勇者よ!知り合いか!なら、説得せよ!悪しき魔族を滅ぼすことに!そして、人類の平和に貢献するように!」



 悪しき魔族ですって!


 言いがかりもほどほどにしてほしいものです。


 人類の平和だなんて、同族同士でいがみ合い、未だに戦争してる口が何を言い出すのやら!



「「黙れ下郎!!」」



「ひいぃ!」



「ちょ、陛下!?ひどっ!」



 ふざけたことを言い出したお父様に、勇者様は二人そろって怒鳴ります。


 怒鳴られた本人は、大臣の肩を掴み、背に隠れます。


 うわっ、さいてー。


 てか、大臣は背が低く、横に広いので、隠れたところで頭見えてますよ!お父様!



「勇者よ、我と大臣を守れ!」



 ついには白目のままの勇者に再度同じような命令を…



「あ、こら!無理させちゃダメじゃないか!『マジックキャンセル!』」



 何も無い空間から杖を取り出すと、白目勇者に向け魔法を唱える杖の勇者。


 だが、そこで予想外の出来事が起こる。



「『マジックガード!』」



「「「えっ!?」」」



 その言葉と共に、白目の勇者は左腕を持ち上げる。


 その手にはいつの間にかバックラーが握られており、盾そのものが赤々しく輝く!


 スキルですわ!


 それに、盾だなんて…


 言われたままの能力が発現したのかしら?


 呼び出された時点では、不完全だった。


 それが、二重命令により発現したのかもしれません。


 でも、盾ですか…


 『盾の勇者』だなんて、まあ、過去には『鎧の勇者』や『兜の勇者』、『靴の勇者』も居たらしいので。


 ちなみにですが、森の災害時に活躍したのが『靴の勇者』だったと書かれています。


 戦い型は森の入り組んだ中をスピードを生かして縦横無尽に駆け巡りながら放つ魔法とスキル。靴の効果で空も翔れたらしいです。


 最期は壮絶で悲惨。


 森に火が放たれるなか、謎の生命体の足止めをした後、MP・SPを消費尽くした所で…待機していた魔法兵隊に状態異常魔法、拘束魔法をかけられ、その体に弓兵が放った矢を無数に生やし、憎悪の表情と共に焼け死んだのです。



 ―――それがまことに愉快だった。



 と最後の一文に書かれていたときは、この国の王族の頭の中身はおかしいと、異常だと…


 何代も重ねられてきた王家の血は、狂気を孕んでいると…


 読んで何日かは一人でトイレに行けないほど恐怖しましたわー。



『…。漏らした?』



 ちょ!そこはきかないで下さい!


 と言いますか、杖の勇者様が驚いているのは分かりますが、お父様や大臣も盾の勇者の行動に驚いています。


 命令したのお父様でしょうに。



「やるではないか!盾の勇者よ!って、気絶しとるのか?」



「の…ようです。」



 元より気絶してた気がしますわ。白目でしたもの…



「当たり前だろう?レベル差考えなよ。それに、低レベルでSPもMPもすぐになくなっちゃうだろうね。このままでは役立たずだよ?アタシが何なら鍛えてあげようか?(このままタケルを探しに行くのは気がひけるからね。)それに、この国の事や大陸、種族なんかも知っておきたい。詳しく書かれた文献を用意しておくれよ?とりあえずはそれが報酬でいいや。」



 杖の勇者様が驚いていたのは、無理にスキルを行使したことに驚いていたようです。


 杖の勇者様の提案に渋々ながら頷くお父様。


 大臣も流石にこのままでは分が悪いと思い、ひたすら首を縦に振っています。



 それにより、明日から鍛錬が決まりました。


 召喚部屋を後にし、食事。


 盾の勇者は、気絶していたので個室に運ばれていきました。


 夕食時に図々しい大臣の発言により、兵達もその訓練を受けることに…


 さて、これからどうなることやら…



『渡来先輩!待っていてくださいね!あ、もし待てないようなら来てくださいね!』



 その声が届くことはあるのでしょうかね…


 わたくしも会って見たいですわね。


 トライせんぱい。

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