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7.リーナと『添い寝』

 うわ~教え子に嘘をついてる~いけないんだ~ヴィオリラ先生!


『ううぅ~苦肉の策じゃ!リーナが誤解してくれれば今はしのげる。して、トライ達はどこへ行こうとしていたのじゃ?』


 トイレです。スライムが待ち構える…トイレです。


『は?貴様っ!トイレでリーナと何するつもりじゃ!ええい!させぬ、させぬぞ!ぐぎぎ…気になる。とても興味がございます。覗かせて?ねーねーちょっとだけでいいからのっ!ついでに、我でもよいのだぞ?』


 先生の頭の中が心配になってきた。


 俺は一人で行くと言ったんだが、リーナが迷わないように案内すると言い出してな。はぐれないように手を握ろうとさえ言われた始末よ。


『なにそのシチュエーション。爆発しろよ!トライは一人でトイレにも行けないのか?ふひっ…愛いヤツじゃのう…。』


 むかつく~。場所が分かれば問題ないんだよ。


「なんだいタケル?不機嫌そうだね?ボクと二人っきりじゃなくなったからかな?かな~?ふふっ♪」


 俺の顔を下から見上げるリーナ。相変わらず押し付けられている…去れ!俺の煩悩よ!


 不機嫌そうな顔したヴィオリラ先生の顔が視界に映る。


『ふんっ!どうせ、お邪魔虫ですよ~だ。悲しくなんて無いんだからなっ!ホントだぞ?』


 涙目で言わないでください。てか、俺にしか聞こえてないからなんとも言えんな…


「あ、ごめんよ~ヴィオ…じゃなくてリラちゃん?悪気は無かったんだ。よ?」



 ムギュ!



 おや?なぜだろう…今のリーナの言い方に違和感があった…まさかな。悪気が無いと言いつつ俺に抱きつく力を強めた。


 みせつけているような気さえするんだが?だとしたら、女の子って怖いわ~


 リラちゃん(ヴィオリラ先生)もトイレに行きたいと言い出したので行動を共にする。


 先生の方は生徒の様子の変化に気付いてないのか…ダメダメだな、気配りがなってない。


「ね~ね~リラちゃん?お母さんは今何をしてるのかな~(ニヤニヤ。)」


 うわ~これは気付いてるってアピールしてるぞ?


 だが当の本人様は…


「ん~っとね~。屋上の塔でお休み中なの~。満月の夜じゃないとちょうしがわるいんだって~。」


 子どものふりを頑張っている。


「へえ~♪リラちゃんのほうは調子は悪くならないのかな~?お母さんの子なんでしょ~?ボクが聞いた話では種族的に何かしらの問題がある~ごにょごにょ~とか言ってたんだけどね~(ニヤニヤ。)」


 小さな顔に嫌な汗がいっぱい!


 やめたげて、先生のハートがボロボロよ!


『う、う~。これだから頭のいい子は…だが、我がその先生だとは気づいてないようじゃな…。どうだ!我の演技力?天才子役も夢ではないわ~』


 誤魔化せていると思っているのは先生だけのようです。


「あ、トイレ!トイレついたの~。」


 逃げたな。そして…兼用なのか?一つだけある扉を開けて中に走り去っていった。


「ん?どうしたんだいタケル。トイレについたよ、行かないのかい?」


「え?いや、男女別じゃないのか?」


「は?何のことを言っているのかな?トイレ内は個室がいくつもあるんだよ?わざわざ男女は分けなくていいだろう?それとも…このまま個室にボクとご一緒するつもりでいたのかね?」


 俺は無言で扉を開けて中へと去る。


 扉の向こうから…


『下のほうは素直なのにねっ♪まあ、ボクもまだ心の準備があれだけど…』


 そりゃ仕方ないさ…テントが張っているのは…。


 リーナの、あの柔らかさが頭から離れないのだから…


「ふ、ふんっ!我の手にかかれば鎮められるぞ?どうだ、試してみるか?のう?試させてくれないか?」


 危ない目つきの幼女がいやらしい笑みをしながら、手をニギニギ開閉したり上下に…ダメじゃないか!


「先生がそんなんでいいのか?」


「何をいぅておる…トライは我の教え子でも生徒でもないだろう?イケナイ関係ではない。いや、これからある意味イケナイ関係かの?ふふふ…じゅるり(いろんな意味で)。」


 小声でなんて事を言い出すんだ…。イケナイ関係とか言うなよな。そして、よだれを袖で拭うなよ…


「この歳になってもな…教え子やメイドたちからの経験や体験談しか聞けんのじゃ…確か、耳年増とかいうんだったかの?」


 体験が無いのに、男女間のことをいろいろ聞き知っている、若い女性。


 だったはずだが…若いのか?


 俺は少し疑問に思うのだがね。


 俺との距離をゆっくり縮めてくる先生は俺のテントから目を離さない。


「心配することは無いぞ、トライ。聞いたときについでに手の動きやら口の動き、舌使いもちゃんと動作含めてレクチャーしてもらっておいたぞ!悦ばせる自信があるのじゃ。だから、好奇心が強くての~」


 ダメじゃないか、そんなメイドが王城で働いてるとか…それに、教え子が何教えてるんだよ!


 教育上よろしくない。


 迫力に負け、思わず入って来た扉のほうへ後退りしてしまう。すると…


『ん~おかしいねぇ~?ねえ、せ・ん・せ・い?今日は満月でしたかね?ねぇ?そこに居ませんか?』


 ぴたりと動きが止まるヴィオリラ先生…


『声が聞こえてくるな~おかしいな~リラちゃんだったかな?お子さんが居るんですよね?あれれ~今思えば未経験だとか言ってた気がするんだよな~じゃあ、あの子は誰なのかな~ねえ、せ・ん・せ・い?」


 扉が少し開いてますね、はい。


「タケル~そこに、ヴィオリラって名前の先生は居ないかい?金髪碧眼でね、白っぽい服が好みなんだ。リラちゃんとかじゃなくてさ、正直に頼むよ~?」


 リーナの声色は優しいのだが…


 ヴィオリラ先生は綺麗な碧眼から透明な汗を流しながら頭を左右に振る。


「おしまいじゃあ…今宵二度目の乱心なのじゃ…。教え子に見放されるっ!これじゃあ近づいてくるのはアホのアコーぐらいじゃ!バル子は数に数えん、あの子は我を子ども扱いするからな…。アメあげるとか言われてみよ、悲しくて涙が出るんじゃ。そしたら、バルちゃんのほうがおね~ちゃんだからね~よしよし~とか言ってくるんだぞ!うぐぐ…。」


 バルちゃんに子ども扱いとは…


「もうっ、どうせボクに見放されるから黙っていてほしいとか言われたんでしょ?タケルは女性に優しすぎるきがするんだ。もっとボクを主に優しく接してくれないかい?先生はまあ、何番目くらいかに優しくしてあげたらいいんじゃないかな?」


 そう言いながら少し呆れ顔のリーナがトイレに入ってくる。


「騙してごめんよ~我のリーナよ~!子はいないし、経験は皆無じゃ!そして、満月じゃなくても城内をうろついてたりするのだよ~。」


「我のじゃないでしょ?それに、タケルはそう易々と渡さないからね!」


 …。俺、ぽつーん。


 渡さないって、モノかナニカデスカ?


 お二人できゃっきゃと言い合いをしはじめたので、俺は空気のごとく移動し一人で個室へと入る。



 Oh!木箱!そして、コイツがスライムか…透明に近いな、少しだけ緑色をしている。


 そして、種とやらは梅干しの種のような見た目だ。サイズも似たようなもんだな。


 半分に割れていて二枚貝に近い感じを受ける。その中からこのスライム部分が出ているのか…


 こんなんだが、植物らしい。細胞と核のような…ファンタスティック!


『…じゃぞ!この…は…べきだっ!』


『…ですが!…だと…ですよ!…は…ですからね!』


 外から声が聞こえ…



 バアアァンッ!!!



「トライ!失礼するぞ!『シャドーバインド!』」


「ちょ、先生!途中だったらどうする気なんですか!」


「その時は手間が省けるだろう!儲けモノじゃ!」


 声と共に足元の影が紐のように伸びて…足首と手首の自由が…


<バインド耐性を手に入れた。>

<バインド耐性が上がった。>

<それにより、バインド状態の時間が短縮されました。>


 意味がわからないよ!なにこの状況!


「な!?おい、どういうつもりだ!動かせんぞ!」


 かつかつと足音が後ろから聞こえる。二人分。


「なに、簡単なことじゃ。好奇心が勝った!今はそれだけが正義なのだよトライ君?」


「何が正義ですか…好奇心ってだけですよね?」


「ええいっ!リーナも志は同じじゃろう?トライの『勇者の剣』が見たいのだろうに…」


 な、俺のを見たいだと!痴女じゃないかっ!


「なっ!た、確かにタケルのズボンを先ほどから持ち上げているのは興味がありますが、堂々とそんなことは、心の準備が…」


「何を今更、さっきからひたすら我にアピールしおって!我とてトライには興味があるのだぞ?正直に言え。気になるのだろう?」


「…はい。」


 俺の左右にいるようだ、首は少しだけ動かせるな…


「俺のを見てどうするつもりだ?てか、拘束してなにをするつもりだ?」


 ヴィオリラ先生の方が俺の正面に来る。


 そして、テントへと手を伸ばす。


「もちろん。お主のを楽にしてやるのじゃよ?他にすることもないだろうに、こんなにしおってからに…気になってしょうがないじゃろう。」


 ズボンのファスナーに指が触れると、引き手を握り下へとスライダーを下ろす。そして…


「「ん、ごきゅっ!」」


 生唾を飲む二人。


「こ、これがタケルの…対策を考えておかないと。」


 リーナさん?何を言い出すのかね?


「さあ、今すぐ暴走しそうなほど溜まっている力を解き放って楽にしてやるとするかのぅ…。」


 ヴィオリラ先生は不安と好奇心に揺れる碧眼を細めながらえらいことを言い出す。


 いや、えろいことか?


「ま、待つんだ!何かイケナイ気がする!このままではいけない気がする!」


「何を言うとる。我らはお主より年上だぞ?何の問題も無い。いけるさ!」


 いけるの意味が違う気が…


「リーナも何か言ってくれ!」


「そ、そんな…タケルのをこれ以上元気にさせれる言葉が見つからないよ。こんな立派なの初めてなんだ…お父さんのは見たこと無いからね…。子どもの頃は水浴びの時に同じくらいの年のころの男の子のはちらっと拝見させてもらった事があったけど…流石に違いすぎる。」


 ヴィオリラ先生の隣りに並ぶリーナ。


 いや、元気にさせる言葉って…


 うおおおおおお~近い近い近い…




















<魔王の力により削除されました。>


























 まさか異世界に来てこんなことになるとは…。


 あの後は暴走したヴィオリラ先生にリーナが『ショックショット』と『スタンショット』をお見舞いして…


 おやすみのようだ。


「ごめんよタケル。先生がこんなで…気難しいかたなはずなんだけど…。」


「なあ、この先生とやらはサキュバスなのか?」


 俺がおんぶしている先生の事を聞いてみる。


 ヴィオリーンよりもサキュバスっぽいのだが…角も尻尾も無い。


 だが、暴走した時はコウモリのような翼が背から出てきたんだよな。


 アレには驚いた。


「先生の種族かい?ヴァンピールだったかな?でも、血じゃなくても力を手に入れられるんだね。タケルのアレで暴走するとは思わなかった。」


 俺の魔王や勇者としての存在が彼女の身体に異なる影響を与えたのかね…。


 今の姿はあの時のナイスバディーな金髪レディーの姿だもんな。


 魅了時に一瞬見えた姿が満月の夜の姿だったとはね。


「俺が思うに行動や思考はまるっきりサキュバスっぽかったんだがな…俺の世界でのヴァンパイアではちょいとずれている印象を受けるよ。」


 隣りを歩くリーナは苦笑い。


「まあ、おやすみさせれたからよかったよ。特にボク的にはやはり…タケルとの初めてはボクが先に済ませたいし。」


 「ボク的に…」なんだ?声が小さくて聞こえなかった。だが、リーナは耳の先まで赤くなっていてひょこひょことそのエルフ耳も動いている。


「そうか。それで、この先生はどこに持っていくんだ?」


「なんだい?その言い方じゃどっかに投棄するみたいじゃないか。ふふっ、こんな扱いしてくる連中はいないだろうからこれからは先生、気楽になるかもね~。少しは気難しくなくなるかも?まあ、拗ねたりするのは変わらないだろうからね。」


 お偉いさんだから知っている連中からは気楽に接してもらえないということか?だが、アホのアコーとバルちゃんはちょっかいを出してくるらしいな。


 拗ねやすいのは俺も身近でみたからわかる。すぐに愚痴もこぼすしな…子どもっぽいよな。


「だえがこどもれしゅって~」


 なんだ、子ども扱いには敏感だな。


 背中からヴィオリラの声が聞こえてくる。リーナは声のほうを見て…


「まったく。先生は子どもですよ?ワガママ言い出すこともしばしばですからね…。タケルも何でもかんでも引き受けないようにしなきゃね。気をつけとくんだよ?」


 今度は俺が苦笑いする番か…参ったね。ワガママっ子か。世話が焼ける。


 でも、エロイことは普通にしてくるからな…好奇心。恐るべし。


「ぶー!とりゃいっ!おぬしをむこにしてりゃりょうか~!」


「だ~め~で~す~!」


「いいじゃにゃいの~!ひゃ~りぇむめじゃしにゃよ!にゃりぇりゅしゃ!とりゃいにゃら!ハーレム王にっ!」キリッ!


 なぜハーレム王だけキリッとしながら言った!


「はいはい、なれるなれる。ついたよ、ここが屋上につながる扉だよ。今夜は星空はあまり見えないけど…見える日はすごいんだからね~ささ、先生の塔へ行こう。その後は部屋に戻って休もうか。それで、起きたら屋上で一緒に朝日を見ようね~タケル♪」


 そうだった。一緒に見るんだったな。何時間寝れるかな?


 扉を潜り、屋上を歩く。あれが塔か…


「ぶー!いいな~我も朝日が見たいのぅ。トライ!更にエネルギーを分けておくれっ!次は暴走せぬから、なっ、このとおり。」


 引き受けないようにしないとな。


「先生が昼間行動できるようになるなら…でも、今はまだだ~め!(まあ、今回はボクも好奇心から加担してしまったけど。凄かったなぁ、タケルの…)」


「え~」


 等の扉が開かれ、中へと足を踏み入れる。


 しがみ付く先生はひたすら俺の背に胸を押し付ける!


 調子が戻ったなら、下りてくれるかな?


「我は降りぬぞ!この素晴らしきトライの背に乗っていたいのだ!安心感が半端ないぞ!」


 ふっ…駄々をこねる子どもだな、自分のベッドで寝なさい。


「ぐうう…子ども扱いしおってからに!今の我は ないすばでい だぞ?ほれほれ~この胸の感触でわかるじゃろうに~背中じゃわかりづらいか?」


 わからんな、もっと強く押し付けてもらわなきゃな。


「ねえ、タケル。さっさと下ろさないのかい?先生なんて力ずくで落とせるだろうに…。このやり取り楽しんでない?」


 ジトッとした目で俺とヴィオリラ先生がじゃれている所を見るリーナ。


 ああ、背に当たる感触を楽しんでます。


 ごめんなさい。


「ボクだってタケルの背にお世話になりたいのに…。あ、そうだ!塔からの帰りは部屋までのせてもらおう!うん。そうと決まれば、先生!はよ降りろ!ボクとタケルの時間を奪うな!ぐぐぐ…強情な!は~な~せ~!」


「い~や~じゃ~!にゅっ!こ、こっれ!我は猫じゃないぞ!首ねっこを掴むでないトライ!」


 騒がしいので背に手を回すと先生の服の襟首辺りを掴む。そして持ち上げるとベッドに下ろす。


「あ~ヴィオリラ先生?スカート丈短くないか?フリフリフリルなパンツが丸見えなんだが?ピンクってど~よ?」


 ベッドに下ろされた先生を正面から見る位置となる。


「だからの~トライ、我のことは敬意を込めてヴィオリラ様と呼べと!な、パンツを見たな!うう、これでは嫁に行けん!責任を取るのじゃ!さあ、婿になれ!今すぐ押し倒すことを許可する!かかって来い!勇者よ!」


 挑発ポーズをしながら魔王みたいなことを言い出すが…それでいいのか勇者殺し?おい、足を開くな足を!


「パンツ程度で大げさですよ先生。スカート丈が毎度短すぎるのがいけないし…それに、タケルはやらんぞ!いにしえの魔王!」


 ノリノリだな…。


「もしかして、いつも短い丈のスカートなのか?」


「そうだよ、だから先生の戯言に耳を傾けちゃダメだからねっ!」


 アレかね…見せパンだっけ?


 だが…あまり直視しないようにしないとな。今の先生のパンツは先ほどの暴走の所為か…まあ、ちょっとね…うん。


 だめだ、みてはいけない。


 まさか、本人は気付いてないのか?冷たいとか思わんのかね?


 あんなにぐしょ…おっと、止しておこう。


「リーナ。行こうか…先生はお疲れのようだ。早急に退散しよう。さよなら先生。」


 リーナの手を優しく握りながら退散することにする。



 キイイ…ガチャン!



 見なかったことにして逃げるのが一番だ。うん。


 復活し、イケナイ気分になってきていたから危なかった。


 やっぱり先生はサキュバスなんじゃないか?


 塔の扉を閉めると…


『あ、ちょ!待つのだトライ!このカラダのほてりが、うぐぐ…。寂しいの~また部屋で一人っきりか。』


 悲しそうな先生の声が扉の向こうから聞こえてきた。ほてりとか言うなよ!


 煩悩を振りほどきながら屋上を歩く…


「そ、そろそろ手を離してくれると助かるかな。」


 屋内への扉を前にして、ぼそぼそと言い出すリーナ。


「ん?ああ、すまん。」


 小さな手を開放する。


「(強引なのもなかなかイイと思えてしまった。ちょっときゅんきゅんしちゃうよ。)」


 小声で何かぼそぼそ言っている。また真っ赤だぞ?風邪か?熱でもあるのか?


 俺は気になりリーナの額に左手を添える。


「熱でもあるのか?真っ赤だぞ?」


「ボ、ボクは大丈夫!いや、大丈夫じゃないようだ!さあ!タケル、おんぶを今こそするときだ!優しくしてくれよ?」


 言われたのでリーナに背を向け、方膝をつく。


「どうぞ、リーナ姫。アナタの勇者がお部屋までお連れいたしましょう。さあ、私の背に。」


「お、おおおお姫様だって!?ふふっ…はずかしいね。では勇者様、お願いするよ?」


 俺の背に乗ると肩をポンポンとたたかれる。


 俺はそれを合図に立ち上がる。


「イイ!実にいいぞ!こんな幸せをすでにバルちゃんと先生は得ていたとは!あったかいな~タケルの背は。…おっと、ローブを脱いだ時の姿を思い出してしまった。は、はずかしいな。あの逞しい背にボクは身を委ねてるなんて。(そ、それに、トイレの時の事も思い出してしまいそうだよ。)」


 ご機嫌のようだ。俺は扉を開け移動する。


 歩いてる最中もたびたび背に頬ずりされる。


 くすぐったい。


 おや、この後はどこを曲がるんだったかな?


「そこは左だよ~まだまだだね?いや、短時間で覚えれたほうが凄いのかな?」


 方向音痴ではないが、一回通っただけで覚えれるほどでもない。仕方ないよな。


 それに、帰りの時間を稼ぎたいと、もう少しこのままでいたいと思っている自分がいるのも確かなんだがね。


 あ~そう思っている間に見覚えがある通路に…


 ん~。この城自体そこまで大きくないのか?そう思えてきたのだが…明るい時に全貌を見ればわかるか。


 階段を下り、リーナの部屋の前へと到着する。


「『アンロック』さて、幸せな時間は終わりのようだ。いや、まてよ…ふふっ!ボクにはまだ添い寝が待っていたんだったよ!これは他の誰もまだだね!」


 部屋に入り下ろすように言われる。そして、添い寝らしい。


「寝るときは仮面外したほうがいいよな?」


「そのアーティファクトは優れものなんだよ?オン・オフ機能搭載!自分の意思で解除できるんだ!まあ、角からできた仮面もタケルのカラダの一部として扱われるからってのが理由だけどね。」


 ほ~すごいね~オフ!


 そして、目元を触ってみる…消えてる!


 スゲー!


 オン!ぺたぺた、おお~付いてる!ハイテク~


「ふふっ。タケルの驚く顔がちゃんと見れたね?ボクは満足だよ~さあ、休もうか?」


 白衣を壁に掛け、ソファーに横になるリーナ。靴は履いたままなのか?欧米だな。


 俺は裸足がいいんだがな…文化の違いというやつか?それに、エンチャントとやらで履き心地がいいからあまり気にならないのかね。


 俺もローブを壁に掛け…


「ん、ごきゅっ!」


 顔が真っ赤ですぞリーナ殿。まあ、上半身裸だもんな。今思い出したよ。


「に、にに日中にでも服屋で見繕うよ!タケル用の服は専用にオーダーメイドのほうがいいからね。普通の服だと角に引っかかっちゃうからね。うん。さあ、ボクの隣りが空いてるよ?」


 ソファーをポンポンとたたくリーナ。かわいい。


 去れ、俺の煩悩よ!


 なるべく無心にソファーに横になる。そして、仮面オフ。


「ふふっ、それじゃ明かりを消すよ。ライトオフ!」


 明かりが消えたぞ!


 これもハイテクだな、開発されてはいるんだっけか?


 音に反応して消えたり点いたりする照明。


 俺が感心していると…柔らかい何かが俺の頬に押し当てられた。


 まあ、大体なんなのか解ってしまっていたりするのだが…


「おやすみ、タケル。」


「おやすみ、リーナ。」


 寝れるかな…。

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