◆プロローグ
「あの~店員さん。」
「はい?」
最近良く見かける子だな…そう思いながら商品を棚に並べる手を止めて返事をする。
俺、渡来トライタケルはフリータ歴3年目に入ったコンビニ店員である。高校卒業してすぐに就職したのだが、入社して3ヶ月でその会社は倒産してしまった。
そこからニートな日々を一月ほど続けたのだが叔母から怒られてしまい、求人誌を漁っているうちに今勤めているコンビニにアルバイトとして入った。
「専門学校にでも行け!」とも言われたが、今更勉強する気になれない。
両親は高校一年の夏、俺を置いて旅行に出かけてそのまま…帰ってこなかった。その後家に一人残された俺のところに叔母が暮らすようになり生活を共にした。
世話になりっぱなしじゃいけないと思い高卒後就職したが数ヶ月で躓く形となった。だが、コンビニ店員は今の所続けられている。
このままな日々を過ごすのかな~と最近は不安も確かにある。他に当てが在る訳でもないのでどうしようもないけどな。
「なんでしょうか?」
「『名士チョコ・やきいも味』という商品なんですけど、置いてありませんか?新発売だったと思うのですが…」
ん?その商品は確か今並べている菓子類の下から二段目のダンボールの中にあったな…
名士製菓のチョコはユニークな味を期間限定でよく出すよな。
「その商品ですね、今から並べるところだったんですよ。少々お待ちください。」
そう言いながら一番上と二段目のダンボールを持ち上げ横に置く。そして、下から二段目になっていた箱の中から商品を取り出す。
それにしても、この子も甘いものが好きだよな。このコンビニ来たときはパックのコーヒー牛乳とチョコレート製品をセットで必ずといっていいほど買って帰る。
なぜ詳しいかって?俺がレジしてる所に来るからだよ。決して他意は無い…いや、カワイイんだけどね。メガネ女子で高校の制服に両サイドのおさげが似合う。髪を結ぶ髪ゴム、今日は青のようだな。
「ありましたよ。この商品で間違いないですか?」
「はい。ありがとうございます!」
おお、とても嬉しかったようだな…素敵な笑顔だ。
「いえいえ、いつもこのコンビニをご利用いただきありがとうございます。」
「あっ、えっと、それは…先輩が…」
おや?声が小さくてよく聞き取れなかった「それは…」なんだったのだろう。
その時、店の外が急に騒がしくなった。車のクラクションが複数鳴り響き…
ゴオオオオォ~~~ ガシャンッ!!!!
は?大型トラックがコンビニに突っ込んできやがった!このままでは…
隣りの女の子も唖然としていた。悲鳴を上げるまもなく、まさに商品棚と共に押しつぶされそうになった時、足元が光った気がして…
そのまま意識を手放した。