表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/45

上司と部下の話

あの後何ら問題なく服を取り戻し王都に戻ってから三日後。


「んで、何も進展もなかったのかよ?」

「ええ、まぁ」


俺は隊長と久しぶり酒場で飯を食らいながら話をしていた。


「けど、竜がいたとは思わなかった」

「ははっ、あそこは近くの山脈とつながってるみたいだからな。水竜がいたっておかしくねぇな」

「だったら、事前教えてくれてもいいのに」

「水竜くらいなんとかなんだろう。現に生き残ってかえってきてるじゃねぇか」


それはそうだろうけど。

タリアもいたのだ。

彼女がもし怪我をしていたら大問題だ。


「そう、睨むなって。お前だって、良い所をみせれてよかったろ」

「別に、竜は倒せていないし」

「はぁ?なんで狩らなかったんだ?」

「あれは、子竜だったから」


俺の言葉に、隊長は納得したように頷いた。


「なら仕方ねぇな。親が出てきたらめんどうだろうし」


そうならば二対二もしくは三対二になる。

数の有利もなくなるし、危険すぎる。


「で、いつになったらその娘を紹介してくれんだ?」

「隊長には絶対紹介しません」


ひでぇなといって、彼は酒を煽るがある意味しょうがない。

こんなに髭を蓄えてかつ柄も悪く、悪ふざけも好きでさらに性格もサディストだ。

確実に彼女をおもちゃにするだろう。


「まぁ、いい。そういや聞いたか?」

「何をですか?」

「騎士団が新設されるとさ」

「聞きましたよ」

「それで、ベオ爺のほうに依頼がきてんだとよ」

「なんの依頼ですか?」


酒も回り、鈍くなった頭で隊長の話を聞く。

どうせ俺に言う事だ。

その以来が隊長の方に回ってきたのだろう。


「新人の騎士団に戦いの術を教えろってさ。まったく、エンベルンの爺もベオ爺も心配性だ。どうせ、碌な戦場にでねぇ騎士団に何を教えろってんだ」


愚痴をいった隊長が大きく息を吐き出した。

言う事もわからなくもない。


貴族のお嬢様、お坊ちゃんが、あの魔物にあふれた戦場に投入されるのは想像もできない。

そうなった場合ならこの国の末期だろう。


「それは、俺もですよね?」

「当たり前だろう。今はもう、俺とお前しかいねぇんだから」


隊長は不満の声色を漏らす。

ベオ爺の部隊はどこも人員が足りていないのだから運用できる部隊をつくるため生き残った仲間も異動してしまった。


「俺は、指導なんて無理ですよ。隊長がすべてやってください」

「てめぇ、逃げんなよ。ベオ爺にぶっとばされんぞ」


つか、逃げたら俺がぶっ飛ばす。

ぎらりと獰猛な視線が向けられる。


「で、どうするんですか?」

「あ? 訓練内容なら適当でいいだろ。」


明らかにやる気がない。

というように見せかけて、この人は鬼のように扱くんだろうな。

自分が嫌われるのも気にしないで。


「ベオ爺はなんか言ってた?」

「珍しくあの人が謝った」


ああ、だから隊長は断れなかったのか。


「いつからですか?」

「来週に叙任式がある。その三日後からだな」

「人数はどれくらい」

「三百はいる」

「二人で見るんですか?」

「基本は、団長と隊長クラスだけだ。それ以外はそいつらに任す」


隊長が、肉を取り粗食しながら言う。

俺も同じく肉を噛む。


「どれくらいの期間、やるんですか?」

「一年だ」


一年。

長いと思った。


今まで部隊の増員もなかった。

という事はこれが本当に最後の命令なのかもしれない。


「ベオ爺の後の後継者は、どうなるんですか」

「わかんねぇ。もしかしたら全部の部隊が解散されるかもな」


そうしたらどうなるのだろう。

また、一番最初の頃のように砦暮らしになるのだろうか。


それもいい。

今の暮らしも悪くないが、あの血にまみれた場所で終われるのなら。

悪くない。


「お前はどうする? ここに残んのか?」

「わかんないです。命令があれば、それに従います」

「はっ、その頃には俺はおまえの隊長じゃなくなってんよ」

「それでも、戦えと言うのなら従いますよ」

「お前、馬鹿だろ」


隊長の罵倒の声。

少しだけいつもよりも、嬉しそうで感じがした。

それからは酒場がしまるまで黙々と酒を飲んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ