飯を作り一緒に食べる話
釣ってきた魚を持ち焜炉のあった場所に戻ると、ほとんど灰になり火は弱まっていた。
そこに枯れ木を足し、魚の鱗を軽く落とし棒を口からさしあぶるように置く。
「マックさん、こっちは準備終わりました」
「うん、スープをつくろうか」
「はい」
彼女の声を聞いて振り返ると、石の焜炉がもう一つ作ってありそこに鍋をおいてあった。
火も魔法でつけてあり、鍋にも十分に火が通っている。
皮を向いた芋や刻んだ野菜を準備する。
「わっとと」
タリアの包丁を扱う手がおぼつかない。
ひやひやとしながら、彼女が野菜の処理するの待つ。
彼女がやりたいといった以上、口を出すわけにもいかなかった。
水が沸騰するころに頃には、なんとか無事野菜も切り終えた。
ただそれだけのことで彼女は微笑む。
おそらく料理が新鮮なのだろう。
切った野菜たちを鍋に入れる。
魚をやいている焜炉の方からも焼ける香ばしい匂いし始めた。
ぐぅぐぅと本格的にお腹が減り始める。
タリアの視線も、焼かれている魚に夢中になっている。
早朝から出てもうすぐ昼前。
その間何も食べていないのだ。
腹も減る。
なにより彼女は何も食べてきてないらしいから余計にだろう。
「焼けたかな?」
あぶり焼けて油も滴った魚を持ち上げる。
ごくりとタリアの喉がなった気がした。
「食べてみる?」
「あの……いいのですか?」
「もちろん。かぶりついて」
魚を彼女に渡す。
受けとった彼女は、小さな口を開けて魚にかぶりついた。
「あっつ」
はふはふと息を吐きながら、粗食する。
「でも、おいしい」
「ならよかった。俺にも頂戴」
「はい、どうぞ」
彼女から受け取りかぶりつく。
臭みも少なく、風味があり柔らかい触感。
ああ。
これはうまいな。
そのまま、交互に渡して魚を食べる。
すぐ食べ終えてしまった。
「ふー」
「おいしかったですね」
「うん、野菜にも煮詰めれたみたいだし」
煮えた鍋に、だしの粉末を入れる。
それをゆっくりとおたまで混ぜる。
いい匂いが立ち込めてきた。
コップにスープを注いで、一つを彼女に渡した。
「ただ焼いただけのに、あんなにもおいしいんですね」
受け取ってから腰を下ろした彼女が、初めて知りましたと言う。
その彼女の隣に腰掛けた。
不思議と自然に座ることができた。
「食べたことのない?」
「はい、煮つけなら食べたことがあるのですが」
お金も時間もかからないこの食べ方しか知らない。
塩ですら高価なのだ。
あまり手のこったものは当然高くつく。
だから彼女がいっている煮付けとはどんな感じのものかすごく気になった。
「うん、食べてみたいな」
「機会があるならぜひお勧めします」
彼女がまた無茶を言う。
「大丈夫です、私が作りますから」
「つくれるの?」
「……練習しときます」
彼女の真剣な表情、ふっと笑みがこぼれる。
そんなに真剣にならないでもいいのに。
「あ、笑いましたね。今」
「え、別に」
「笑いました、私だって少しくらいなら料理できますから」
自身あると彼女は言い切る。
先ほどの包丁の手つきを見ているとそうは思えない。
「煮つけは?」
「今は、できません」
試しに聞いてい見ると開き直って彼女は、突っぱねるように言い切る。
普段からそのくらい堂々としておけばいいのに思う。
だったらこうして兵士なんかと一緒にいることもなかっただろうに。




