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変異の話

男と数分斬り結ぶも決着がつかない。


「「いい加減に」」

「「しろ」」


男は、どうやら撤退をしようとしていた。

こちらは男を息の根を止めようとして動くも結果は伴わない。


だからこそ放っておくには危険な相手で、姿を表している今のうちに叩いておきたい相手だ。


「マックさん!」


この場にいた騎士達が意識を取り戻したようで、介抱していた騎士から声がかかる。


「先に行け!」


他所にいる隊長が合流するだろう。

反対方向へと駈けていくのを目の前の男は見てから、此方をみた。


「ついていかないんですか?」

「お前を放っておく方が危険だ」


はぁと男はため息を吐く。


「面倒ですね」

「だったら大人しくしろ」

「無理ですねぇ」


じりじりと焼けるような感覚が背中を走る。


「来ましたか」

「ルゥ、なにをやっている?」


黒いマントを羽織った。

随分と小さい子供のような。

というか。


「子供?」

「子供じゃない! 私は立派な大人だ!」


口に出た言葉にマントを羽織ったのは、高い声をさらに高くさせて吠えてくる。


「リーン、それよりこの状況をなんとしてくれませんか。一人で はきつい」

「ふんっ。私を子供扱いしてやつなんて私にかかれば、子供みたいものさ」

「ん?」


胸を張った、リーンの言葉に一瞬目の前の男と眼を合わせたがそのまま流すした。


「ぶっ飛べ!」

「っつ」


言葉とともに周囲が光り輝く。

男とともにすぐさま離れる。


轟音。


地響きがまだ鳴り止まず、巨大な穴が形成されていた。


「馬鹿! 俺まで殺す気ですか!?」

「ご、っごめん」


男は責めるように黒いローブに吠えた。

同じく、こんな洞窟で爆発系統の魔法をぶち込んできた馬鹿に怒鳴りたかった。

若干涙声であったので止まる。

これ以上言えば何故か泣きだしてしまう気がした。


「で、どうする?」


「うぉ?」

「あっ」


言い合う二人に尋ねると、思い出したように二人はこっちを見た。

なんだろうこの緊張のなさは。


どうにもこのやり取りから、この二人と周囲で伺っている奴らが騎士団を危険にさせた人間とは思えない。


「そうだ!逃げるぞ、ルゥ。竜がこっちにむかってきてるんだ」

「ああ、そうだな」


何やら大事そうに語りかけて彼女が来た方角の方を見た。

男が疲れたように返事をしたのがわかった。


「もういるぞ」

「へっ」


水竜が1体。

一度見かけたのより随分と大きいのが、猫のように鋭い瞳をこちらに向けていた。


「最悪」

「それはこっちの台詞です」


俺の言葉に、男は老け込んだように返事をした。


「に、逃げないと」


慌てるようにいうリーン手を動かす


「わかってるから、リーン」

「なんでそんな落ち着いているのさ!?ルゥは、私の騎士だろ。なんとかしてよ!」

「はぁ」


傭兵ではなかったのか。

男にその視線を向けると、彼は首を横に振った。


「兼任なんです。傭兵を止めたつもりはない。ひとまず、これを倒してからお話をしようとおもいますが」

「了解」


リーンの方は、口を滑らした事に気づいたのか口元に手を当てて塞ぐ仕草をしている。


眼の前に竜がいるというのに随分と余裕があった。

それほど目の前の男を信頼しているのだろう。


「よーし、じゃぁ倒すよ!」

「「おー」」


先ほどの動揺はどこにいったのやら、リーンは張り切った声を上げた。

まるで負ける事を知らないような、純粋さだった。

一時的に共同戦線が始まった。













「っち」


とはいえ数分程、竜の攻撃を流すだけの時間だけが過ぎた。

彼らは味方と決まったわけでもないのだ。


竜に突っ込んだらとんずらされるされるかもしれないし、周囲で伺っているのもいる。

威力の高いに爆発を起こせる魔法を使えるのもいる。


後ろからうたれたら。

人数で隙をつかれたら。


自身の命が脅かされる。


それが竜を倒すための方法を逡巡させていた。

ルゥと呼ばれた男の方はリーンの方をかばうように動くだけであるし。


共同戦線なんて所詮口約束だ。


「でも、逃げるのは」


竜が生み出す水弾を避けながら隙をうかがう。

一応、向こうから話すという事を言ってたのだ。


完全に敵と決まった訳でもなく、こちらから信頼をなくような行動はとりたくない。


「止めた」


足を止めて、剣で水弾に弾いた。

滑るようにして逸れて地面に穴をあける。


らしくなかった。

彼らが敵ならば、逃げた後で斬ればいい。

味方ならば、竜を倒した後で聞けばいい。


俺は兵士だった。

敵を倒す事に迷いは要らなかった。


前に出た。


「グオオオオオオッッッ」


と竜が鳴く。

俺も応えた。


何時ぞやの竜よりも大きい巨体。

水竜にしては黄色に変色した燐。


竜が大きな口を広げて噛み付こうと長い首を伸ばしてくる。

眼と眼があった。


視界が真っ赤になった。

全身が血で染まった。

竜の頭がつぶれるようにまっぷたつになった。


振り下ろした剣についた血を振飛ばしながら、逃げなかった二人の方へと歩いていく。

片方は怯え片方は常態で構えていた。


「逃げなかったんだ」

「話すといいました。それにもともと、逃げるような理由ありませんし」

「そうだそうだ。私たちは、他の場所にいた騎士達を介抱してやったんだぞ!」


むしろ敬えといったように胸を反らす。


「じゃぁ、何故あの幻影を?」


だったら最初からまどろこっしい登場は止めておけばよかった。


「私達の部隊はここにいちゃいけないんだ」


それだけでは伝わらないと、ルゥと呼ばれた男がリーンの頭に手を置いて答えた。

リーンは子供扱いするなと手を払う。

「お忍びでこの洞窟に来ていたんです。まぁ、混乱していた騎士達に剣を向けられたというか。それで仕方なしに、捕縛させてもらったというか」


ここは危険ですからとルゥは言った。


「なにかあるの?」

「どうやら、この洞窟で毒草が増殖しているみたいで、その草に当てられた魔物達が活発もしくは異種の魔物が生まれているみたいです」

「わかった。でも部隊までは帯同してもらう」

「うぐぅ、それは嫌だ」

「駄目です。もうお忍びなんていってられませんからね」

「わかったよぉ」


ルゥに言われて、リーンはしょんぼりとしてうなだれた。

どうやら、後の叱責されるだろう状況に落ち込んでいるのだろう。


「部隊は?」

「皆、いるか?」

「はい」


ルゥが訪ねると、一斉に10人近い人数が物陰から出てきた。

全員フードをかぶっているが、雰囲気が戦闘者のそれではない。


ルゥ以外脅威となる感覚がなかった。


「ノベル、イエリ、フェスタ以外全員無事です」

「もう騎士達はいない?」

「おそらく」

「じゃぁ、話は洞窟の外でいいですか?」

「うん」


ルゥの言葉に頷いた。

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