本当の原因の話
泣きつかれて眠ってしまったアグリアをベットに寝かせて病室から出た。
「ほんとうに」
救いがないなぁ。
誰かと生きたい願えば願うほど。
遠のいてしまう。
呪われているじゃないかと思う。
痛む身体を動かし、彼女が持っていた剣をかかえながら。
あの場所へ。
「なんですか?」
「やっぱり、そうか」
どうやら行動は読まれていたらしい。
行方を遮るように隊長とタリアが行方を塞ぐようにたっていた。
「異常を来したら、消える。これは兵士達の鉄則」
「ここは、戦場じゃないぞ」
「俺は、兵士だ」
今も昔もそれ以外はない。
隊長が、俺の肩をつかんだ。
「最後まであがけ」
「あんたには、わからない」
ずっと。
血にぬれた夢を見続ける。
仲間の死骸やその瞬間を見せられる地獄。
今の環境に対する怨念。
戦え。
殺せ。
あいつらがそんな事を言うはずがなかった。
聞いていたくなかった。
「じゃまするなら、たたかわないと」
「やめろ、本当に死ぬぞ」
「もう、死んでいるから」
アグリアが持っていた剣を抜く。
「死ぬなら、貴方のような汚れた血で彼女の剣を汚さないでください」
「ひどいなぁ。だったら、剣が欲しい」
「いいえ、どの剣で今の貴方では、剣を汚している」
能面の表情でありながら侮蔑の視線。
「なんで、こんな急に壊れてきた」
「わからない。でも、身体がおかしい」
ああ、まただ。
また何かが。
身体が燃えるように熱い。
「見えた、術式が埋め込まれています」
「っち。なるほどな。条件式のものか!」
術式?
何をいっている?
腹部を見れば、黒く光る円。
「こんなの、いつのまに」
どくん。
どくんと跳ねれるように鼓動する心臓。
その近くに反応にするなにか?
「うぐぅ」
手をそこ持っていく。
固く石のような手触りの物があった。
引っこ抜く。
血が、肉が、赤が、手にこびりつく。
「これは?」
「ばか、無茶するな。タリア。治療してくれ」
「はい、動かないでください」
隊長が支えてくれて。
タリアが、癒しの魔法で傷を塞いでくれる。
「隊長、これは」
手にあった、石を見せる。
黒く淀んで、歪な魔力も放っている。
「ああ、これは。強化石だ」
「強化石? 魔法の強化や飛行船を動かすのに使う」
俺の質問に二人は深刻そうな顔をした。
「......これって、人に投与するのは禁止のはずでは」
「そうだ、爺に報告する。マック、お前はピニオン地方の砦あたりから合流したよな」
隊長の言葉に頷く。
「となると、その付近の貴族は怪しいか」
「あの、隊長?」
「ああ、もう病室に戻っておけ」
自分に身に起こっている事なのに、全く詳細が語られない。
けど身にある倦怠感が抜けたような感覚。
すっきりしすぎたのか眠気も酷い。
「後で、説明をお願いします」
そういってから、病室の方へ歩き出した。
傷も塞がり支障はない。
多少ふらついたが、部屋までは問題なくたどり着きベットの横になった。
「あぁぁ、血が。どうしましょう」
「うぁ?」
ばたばとベットが振動する音。
慌てるように既に胸元に、治療の魔法がかけられる。
「なに?」
「どうして、怪我をしているんですか? なにがあったのですか?」
心配する彼女をよそに、魔法をあてられる場所をみた。
服に穴がいてあり、そこから大量の血が漏れたのがわかるくらいの結婚が服についていた。
「これ、塞がってる」
「え?」
落ち着いたのだろう。
彼女も自身がかけていた傷があったであろう部分を見た。
それから一転して怒りの表情になる。
「なにをしたのですか?」
「ええ、と。穴をあけた」
「なぜですか?」
「あけたかったから」
ぶちんと、アグリアから切れるような音がした気がした。
「もう一度聞きます」
迫りくる、彼女。
だけど怖くなかった。
「ふふ、勝手に出て行って勝手に解決した顔をして」
笑ってしまったのだろう。
彼女が怒りが増えた気がする。
だから、抱きしめた。
「ちょっと」
待ってください。
それを言わせない。
暖かかった。
瞼を閉じる。
「ぷはっ。あの、寝ないでください! って、聞いているのですか!」
「うん、大丈夫。隊長は寝ておけっていってたから」
「私は、起きないと駄目なのです!」
彼女は、抜け出そうとする。
反対に俺は、押さえ込む。
「この、この」
「そら、そら」
指をほどいても、身体をずらそうと身をよじっても。
無駄。
「おーい、何をやってるんだ?」
「あ、隊長」
「ジオさん!? あの離してください!」
本当にいやそうな声になったところで、拘束を解く。
「なんだかこういちゃこらされると、腹が立ちますね」
「タリア!?」
隊長の後ろから出てきた彼女に、アグリアは声を荒げて顔をさらにあからめる。
彼女は、もっと前からいろいろ知ってますよ。
「それよりもだ。マック」
「はい」
「お前の身体に入ってあった。石の詳細がわかった」




