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お久しぶりです

長らくお待たせいたしました!

今年成人式を迎えられる方々に、お祝いの言葉を

成人おめでとうございます

…なんか変な日本語かも?

 リベルムとスティーヴが退室した後、明音はべネットから借り受けた物語を読み進めた

『アイオーン物語』である

 そして一時間後、ついに数百ページに及ぶ物語を終演させた

 テーブルに本を置き、身体を解す

「あー………疲れた」

 この国の建国について簡単に学べると手渡されたそれには、マクリマやモーホなどよく分からない単語も多かった

 しかし、何となく、この国の住人のほとんどがマクリマ族で、モーホ族に追われてこの地へ来たのだとは理解した

 そして、主神テンプスパティウムを中心とする多神教を信じるが故に、唯一神を信じるモーホ族に追われたのだとも

「宗教ねー…」

 リッテラエリングアと会話をした手前、この世界において神を否定するつもりはないが、自分が面倒なことに巻き込まれるのは頂けない

 そして、

「百年も生きられないモーホに、か」

 物語のなかである老人が悔しそうに言った台詞の一節

 それはつまり、マクリマ族が百年以上生きれると言うことで

「ああぁぁぁーめんどくさいぃー」

 首を曲げ、背凭れに頭を落とした明音は、心の底から声を出す

 明音からすれば、宗教はそれほど重要なものと考えていなかった

 だが、この様子からして、そうも言っていられないだろう

「面倒だな」

 世界史においても、日本史においても微かに、宗教や思想というものは争いの種になる

 テストの度に、先人たちに悪態をついたこともあった

 あんたらのお陰で覚えることが増えたんだけど、と

「大体、誰が何を信じるかは他人に関係ないでしょ」

 留学中にもそう言った明音に、現地の友人は苦笑いを浮かべ、そうは言ってもね、と宥めた

 自分は自分、他人は他人って割りきっている明音のことは好ましく思うし、その方が良いと思っている、けれど、それができないのが宗教であり、人間であるのだと

 哲学のような話をよくする友人は、この国をどう見るだろうかと考える

 数少ない明音の友人の中でも、一際仲が良く、お互い良い具合に距離をとれていた彼女は、明音が得に尊敬していた友人で

「もしやこれがホームシック?まだ二日しか経っていないのに?」

 留学中など、一度もホームシックにはならなかったのに

 そんなバカなと首を振り、気合いを入れるために頬を叩く

「何かよく分からないけど、頼まれたんだから、仕方ないもの。よし、大丈夫。今できることをする。モーホ族は気にしない。うん、気にしちゃダメよ」

 そう自分に言い聞かせ、勢いよく立ち上がった


「リベルム殿下!オウレット秘書官!」

「おや、マーガレット殿」

「どうかしましたか?」

 ラスキン伯爵令嬢マーガレット・ハースが焦り顔で二人に駆け寄る

 次王付き王室女中レーギア・アンキッラらしからぬ作法に、リベルムとスティーヴは訝しげな顔をする

「アカネ様がお部屋にいらっしゃらなくて…心当たりはおありでは?」

「…いいえ。兵には」

「知らせました。今辺りを探してはおりますが…」

「マクレイヤー卿は」

「ご存知ないそうで、陛下の方に」

 考え込んだリベルムとスティーヴの横を、失礼しますとマーガレットが通り抜ける

 走って消えていった姿を見送った二人は、

「さて、」

「困りましたね」

「困りましたね」

「これは、我々が怒られるのでしょうね」

「でしょうね」

「一度部屋に戻ってみましょうか」

「そうしましょう」

 来た道を引き返す

「それにしても、無断でいなくなるような方とは思えないのですが」

 リベルムが首を傾げると、スティーヴも首を傾げる

「そうですか?わたくしにはそうは見えませんでしたが」

「おや。なぜです?」

「根拠はありませんよ。何となくです」

 リベルムが片眉をひょいと上げ、スティーヴの顔を覗き込む

 分からないといった様子の第二王子に、笑みを向け、

「さ、参りましょう、殿下」

 さくさくと歩きはじめた

 要領の得ないスティーヴの言葉に不満げな顔をしたリベルムも、駆けるように元の道を戻った



そう言えば、明音は成人でしたね

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