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期末考査期間なので、しばらく更新できません
すみません
明音はパジャマ姿のまま、青年に会議室まで運ばれる
ぶっちゃけ自分で歩くのに何ら問題なかったが、どう伝えればいいか分からなかったため、黙って運ばれていた
その間、恥ずかしすぎてずっとうつむいていた(二人には笑われてしまったが)
会議室の前まで来て、ようやく明音は青年の腕から降りる
前後にイケメンを固めながら、頭はパニックだった
何をどう説明しなければならないかが明音には分からなかった
ガチガチに緊張している明音など気にしていないかのように、前に立つ男の人はさっさとドアを開けてしまう
ここで一つ言うと、明音はこの時点で逃げ出すことは可能だった
が、あまりにも現在地付近は複雑で―おそらく、城らしき場所なのだが―土が足に届くには大分かかりそうだったため、早い時点で諦めた
「さ、姫君」
後ろの青年に背を押され、半ば無理矢理部屋に入らされる
部屋の中には十数名の男性と数名の女性が座っていた
「陛下、そちらが?」
その場にいる誰よりも上座に座る青年が、明音の腕を掴み、引きずりながら悠々と部屋を歩く男の人に声をかける
『っ、ちょ…』
転けそうになりながら、どうにかついていく明音を部屋にいる者たちは興味深く見つめる
「陛下、明音様が転けそうになっとりますよ」
初老の男性が呆れたように呟く
名前を呼ばれたような気がした明音は、その男性をじっと見る
『私の顔に何かついていますか?』
辿々しくだが日本語でそう聞かれる
『え…日本語話せたんですか?』
『ああ、すみません、もう少しゆっくり話してください。私はあまり日本語が上手ではありません』
困ったように微笑む男性は、
「さあさ、陛下、殿下、お座りください。説明ができませんぞ」
「ええ、そうですね」
青年がイスを引き、座るようにジェスチャーで明音に促す
ペコリと礼した後、席につく
部屋に入った直後に声をかけてきた青年の向かい側で、彼の隣には日本語を話す男性、明音の隣には当然のように王子様系のあの青年がすわる
「ベン、説明は頼みます」
上座、俗に言う誕生日席に座る陛下は、のんびりと仕事を押し付ける
「分かってますよ、陛下」
呆れの表情で彼を見たべネット・マクレイヤーは明音に向き直り、
『初めまして。私の名前はべネット・マクレイヤーです。あなたは明音様ですね?』
『は…はい』
『あなたはここがどこだかわかりますか』
『いいえ。でも、日本ではないことはわかります』
明音の答に、満足そうな表情でべネットが頷く
『あなたは気になっているでしょうから、私が説明します。聞いてくれますか?』
『え、ええ。聞きます』
こくこくと明音が頷き、
『あなたは何が一番知りたいですか?』
『説明するんやないんかい』
説明する、と言いながら、あっさり質問してきたべネットに、明音が小さく突っ込む
『!それはもしや、突っ込みではないですか?明音様の故郷では、挨拶のように交わされると言う!』
『何で!?誰ですか、そんなこと教えたの!』
『おや、違いますか?』
『突っ込みは突っ込みだけど、挨拶のように交わされるわけではありませんっ』
『おや…』
少々残念そうな老人に、罪悪感が込み上げるが、日本が変なところだと思われては困る
明音は心を落ち着かせ、周りの人にじろじろ見られながら、それでも気にせずに口を開く
『ここはどこですか?』
『アイオーン王国の都、ルーメンにある王宮レーギアです』
『は、し、城!?』
『いえ、王宮です』
『どっちも同じです!……えっと、すみません、私アイオーン王国って知らなくて…』
『ああ、仕方がありませんよ。異世界ですから』
『ですよねー異世界なら知らなく………ん?…………………は?………え、すみません、何ておっしゃいましたか?』
『おっしゃいましたか、はどう言う意味ですか?』
『〝言いましたか〟と言う意味です』
『なるほど……ああ、仕方がありませんよ。異世界ですから…と私は言いました』
『は……はは…あはははは……………………はあぁ!?』
明音のおつむはフリーズ中
『えと…つまり、私は神託で王になることが決まっていて、それで…え…あの、これ、決定事項ですか?』
『ええ、大丈夫ですよ、明音様。先代の王や歴代の異世界の王たちも初めは戸惑いながらも、皆様とても素晴らしい王でした』
『そ、そうなんだ…や、でも、私ができるかどうかは』
『それは私ども、側に使える者の敏腕の見せ所です』
『いや、あの、それは…そう言う問題じゃない気がするんだけど…』
『ふむ、まあ、お気になさらず。私どもはあなたが良い王になると確信しています』
『確信されても困るんだけど…』
『一週間後、戴冠式をします。楽しみにしていてください』
『いや、待って待って』
にこにこと嬉しそうなべネットに、明音が待ったをかけるが、
「さあ、説明は終わりました。後は’ご加護’があるのを待ちましょうぞ」
聞いていなかった