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 その日、明音は家でゴロゴロしていた

 明音はとある国立大学に入学したばかりで、独り暮らしを始めたばかりだった

 歳は20

 明音は高校の時に2度留学している

 高校に入って直ぐドイツに留学に行き、3年の夏にフランスに行った

 明音は親戚の中で唯一と言ってもおかしくない、子供だった

 両親の弟兄姉妹は子供がおらず、祖父母の弟兄姉妹 にも10以上歳の離れた孫しかおらず、明音はよく可愛がられた

 留学の資金も、資産家の多い親戚たちが出してくれたものだ

 明音が留学しようと思った理由はない

 ただ、ふと、行ってみようと思ったのだ

 両親は良い兆候だと思ったらしかったが、逆に個人主義を徹底し、日本に帰って孤立する要因になったが

 心配性の祖父母のお陰で、明音はこの不況の中で大学生の割に良いマンションに住んでいた

 寝室のベッドに潜り、腕を伸ばし灯りを消す

 明日は早い

 ぐっすり寝れるようにと考えながら、ゆっくり瞼を下ろした




「 … ぃ…ぉ……ろ、おーい……起きろー」

『んー……何?父さん…………………………………………………え?』

 パチリ

 今までこれほど直ぐに起きたことがあるだろうかと思うほど、物凄い勢いで目を開く

 明音は独り暮らしで、父はいないはずで、父以外の男の人の声が聞こえるはずがなくて

 明音の目の前には優しそうな茶色の髪をもつ、それはそれはキレイなお方がいた

『だ…誰?』

 胸元の布団をぎゅっと掴み、身体を固くする

 目の前の男の人は、にっこりと笑うだけで、特に何の反応も示さない

 どうすれば良いか分からず、呆然とする明音の頭上から、甘い声が響く

「父上、あまり姫君を困らせてはいけませんよ」

 意味は分からなかったが、目の前の男の人にかけた言葉だとは分かった

 キョロキョロと首の動かせる範囲を見渡す

 男の人の後ろにも、ベッドヘッドにも誰もいない

「ここですよ、姫君」

『!?……ひっ』

 耳元で囁かれ、弾かれるように背後を見る

 キスをしそうなほど近距離にいた白銀の髪をもつ青年は、にっこりと微笑む

「残念ですね。もう少しだったのに」

『……?』

「クスッ…かわいらしい反応ですね」

 青年の片腕は明音の肘枕と化しており、空いている片手は布団を握る明音の手にそっと添えられている

「さあ、陛下、姫君も起きられたことですし、移動いたしましょう」

 そう言って明音の肩を抱きながら起き上がった青年は、白いシャツに黒いスラックスをはいている

 おそらく寝間着だろう

 楽しそうに笑っている男の人は、軍服の上からローブを羽織っている

 一見コスプレのように見えるが、如何せん見た目が日本人でないので普通に似合っている

 対する明音はパジャマだ

 白地に黒いドットのワンピースに、黒いサブリナパンツ

 まさか部屋から出るとは思っていなかったであろう明音は、呆けている

 頭は正常に働かず、口から漏れる言葉は、あだのうだの意味を成さない

「陛下、どちらに?」

「会議室」

 青年の問いにぶっきらぼうに、しかし、顔は楽しそうで、青年もそれが分かっているようで

 知らないところ、知らない人

 明音は混乱する頭をなんとか宥めようとする

 勿論その間青年の足は明音を抱えて会議室に向かっていた

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