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01-04 衛星軌道防衛戦 「キャラック艦隊 ヤヨイ級軽巡航艦ユキシロ」

 緊急通信の数分前。

 キャラック艦隊所属のヤヨイ級軽巡航艦ユキシロは敵隠密艦と砲撃戦を繰り広げていた。 フィギュアヘッドとして製造されて約一年、はじめての実戦だ。

 ユキシロは白銀の剣を思わせるすらりとした艦体の上下に並んだ多目的ミサイル発射筒(ランチャー)から、続けざまにミサイルを発射する。

 殺到するミサイルに対しチャフとジャマーをばらまいてなんとか目を眩まそうとする隠密艦だが、ユキシロの狙いは直撃ではない。

 近接信管にセットされたミサイルは敵艦の傍で派手に炸裂し、宇宙の闇に紛れるその艦影をくっきりと浮かび上がらせた。

 

「そこ! 両舷、主砲斉射!」


 至近距離の爆圧に身をよじる敵艦めがけて、両舷のターレットに備えた二連装レーザー砲を同時に放つ。

 胴中に四本のレーザー光を叩き込まれた敵艦は、一瞬宙に縫い付けられたように静止した後、爆発した。


「よし」


 ユキシロは長い黒髪を揺らして小さく頷いた。 中空に浮かんだ表示窓(モニタウィンドウ)に目を走らせ、索敵を行う。

 だが、ユキシロの周囲に漂うのは彼女自身が撃破した隠密艦の残骸が合計四隻分、それだけだ。


「敵影なし、オールクリア」


 初陣でありながらユキシロは全く平静であり、落ち着いて敵に対処できた。

 製造されてから一年の間、一人で黙々と繰り返していたシミュレーションの成果だ。

 繰り返すうちに高難易度のステージもクリアできるようになったユキシロにとって、現実の戦場は拍子抜けするほど簡単な代物だった。

 当然のことだ。 敵艦は隠密性能を重視した小型のステルス艦であり、その戦闘能力はユキシロとは比べ物にならない。

 勝利の高揚よりも、弱い者いじめをしたような微妙な後味の悪さがあった。

 だが、勝利は勝利。 彼女にとって初めての戦果だ。


「コマンダーに、報告しないと……」


 初めての戦果を報告する前に、ユキシロは陣羽織(サーコート)の裾を直し、襟を整える。

 まったくカスタムされていない、官給品そのままの灰色の陣羽織はコマンダーに与えられたユキシロの一張羅だ。


「よし……!」


 身嗜みを整えたユキシロは小さく気合を入れると、旗艦との間に通信回線を開く。

 展開した表示窓(モニタウィンドウ)の中では戦場と言うには不謹慎な有様が繰り広げられていた。

 だらしない笑みを浮かべた赤い髪の青年士官が紅白の陣羽織を羽織ったおとなしげな美女に背後から覆い被さり、豊かな胸を両手で揉みしだいている。


「コマンダー、その、困ります……」


「見える範囲の敵は全部始末したんだろ、ならいいじゃないか」


「そのぉ、こういう事は帰ってから……」


 痴漢そのものの光景だが、揉まれている方は満更でもないらしい。

 ユキシロの同僚であるフィギュアヘッド・イワイは大和撫子という言葉そのままの柔和な美貌を朱に染めて、困ったような笑みを浮かべながらもコマンダーの手を振り払おうとしていない。

 代わりにユキシロの柳眉が逆立った。


「コマンダー」


 表示窓(モニタウィンドウ)ごしにユキシロが冷えた声をかけると、取り込み中の二人はびくりと動きを止めた。


「ユキシロ、敵を撃破しました」


「あ、あー、ご苦労!」


 ユキシロのコマンダー、マシュー=キャラック中尉は士官の威厳を取り戻すべく咳払いをすると、緩みきっていた表情をきりりと引き締めて表示窓(モニタウィンドウ)に向き直った。

 なんとか取り繕ったものの、表示窓(モニタウィンドウ)の下半分には相変わらずイワイの乳を揉み続ける両手が映っているので台無しだった。


「何隻落とした?」


「四隻です」


「お、やるなあ。偉いぞ」


 鷹揚に頷いてみせるキャラック中尉に、ユキシロは相変わらず冷たい声で具申する。


「中尉、任務中のセクハラはどうかと思います」


「いや、ちょっとしたスキンシップだよ、スキンシップ」


「部下の報告を聞く時くらいは、そのスキンシップを止めるべきではないでしょうか」


「え、映ってる!?」


 慌ててイワイの胸から手を離すキャラック中尉にユキシロは嘆息する。


「イワイ、あなたもあなたです。 任務中に不埒な真似を許してどうするのですか」


「で、でも、コマンダーですし……」


「軍務と関係のない命令ならば私たちにも拒否権はあるのですよ、嫌なことはきちんと拒否しなさい」


「べ、別に嫌ではないので……」


 頬を染めて俯くイワイと、彼女の言葉に鼻の下を延ばすキャラック中尉。

 見本のようなバカップルの有様にユキシロは疲労を覚えざるを得ない。

 撃破報告は済ませたのだ、今後の行動指示を聞き出したらさっさと通信を切るに限る。


「コマンダー、行動指示を」


「んー……任す」


「……任意で索敵、敵を発見次第攻撃という事でよろしいですか?」


「じゃあそれで」


「承知しました」


 いい加減極まりないオーダーをそれなりに格好の付く形に訂正して受領したユキシロは、一礼すると表示窓(モニタウィンドウ)を閉じた。


「はぁ……」


 仮にも戦闘の場であるというのに、能天気にいちゃつく上司と同僚に溜息も漏れる。

 アドミラルジーンの持ち主は本人の意思や適正に関わりなく徴兵されるご時世である。 キャラック中尉のように熱意に乏しく軍人としての適正も低いコマンダーなど珍しくもない。

 任務に関してはこちらに一任してくれるし、いちゃつく相手をイワイだけに定めてユキシロに食指を延ばさない分、まだマシなコマンダーと言えよう。

 好色ながらも妙に一途な辺り、キャラック中尉の根は案外真面目なのだろうとユキシロは評価している。

 イワイと比べて胸部の隆起に乏しいユキシロの体型に、キャラック中尉がそそられていないだけではないかという客観的な分析はこの際置いておく。

 ユキシロの所属するヤヨイ級軽巡航艦は高速と航続距離が売りの艦種で、すらりとした細身の艦影が特徴だ。

 その艦影を反映しているのか、ヤヨイ級のフィギュアヘッド達は総じてスレンダーなボディラインの持ち主が多い。

 火力重視のムツキ級のフィギュアヘッドにグラマラスなスタイルの持ち主が多い事とは対象的であった。

 ヤヨイ級もムツキ級も標準型軽巡航艦であるナガツキ級をベースにした改装設計艦種である。 

 それなのに生じるこの奇妙な差異について、ユキシロは疑問を感じずにはいられない。


「まあ、考えても仕方ない事ですけど」


 ユキシロは頭を一振りして積年の疑問を心のロッカーに放り込むと、センサー群を起動し索敵を開始した。

 軽巡航艦ユキシロに装備された無数のアクティブレーダーがフィギュアヘッド・ユキシロの目となり、周囲の異物を洗い出していく。


「……レーダーに感なし、この辺りの掃討は終了したようですね」


 表示窓(モニタウィンドウ)に投影したクリアなレーダーマップにユキシロは小さく頷いた。

 続いて、カメラ類を使った光学探査を実行する。

 これは訓練マニュアルに実直に従った行動である。

 隠密艦といえども、ドールローダーが備えた高性能レーダーを完全にごまかす事は難しい。

 そのため、レーダーに反応がない場合は省略される事も多い手順であった。

 だが、この時においては、ひたすら訓練マニュアルを読み込んで自習し続けたユキシロの愚直なまでの実直さが功を奏した。


「なっ!? お、大型艦!?」


 わずか数十キロ先、宇宙空間においては目と鼻の先といってよい距離に箱型の船体を持つデータにない大型艦がひっそりと浮かんでいた。


「そんな、レーダーに反応ないのに……なんてステルス性能なの」 


 慌ててレーダー波を集中照射するものの、相変わらずレーダーマップに光点は現れない。

 目測で1000メートルはあろうかという大型艦を完全に高性能レーダーから隠し通すとは、先ほど撃破した小型隠密艦など比べものにならないほどに高度なステルス性能である。


「でも、なんで停止して……」


 言いさして気づく。 

 いかに高度なステルス性能を備えているとはいえ、所詮大型艦一隻だ。 軌道警備艦隊全てを相手取れる訳もない。

 すぐ傍でユキシロが戦闘を繰り広げていた間も、ユキシロが大型艦に気づいて仲間を呼ばないように息を潜めて隠れていたのだ。

 戦い終わったユキシロが立ち去る事を期待して。

 だが、ユキシロは改めてレーダー波を照射してしまった。 大型艦にしてみれば、それは同胞を見殺しにしてまで行った隠蔽を見破られたということ。

 死んだように沈黙していた大型艦はスラスターを全開にして加速を開始すると同時に、箱型の艦体に並んだ砲をユキシロへ向けて続け様に撃ち放った。


「ヴァ、虚数転換力場ヴァニシングフィールド、展開っ!」


 ユキシロ目掛けて放たれた無数のレーザー光はとっさに展開した虚数転換力場ヴァニシングフィールドにより虚数空間へと放逐される。

 質量でも熱量でも構わずに虚数空間へと放り込む虚数転換力場ヴァニシングフィールドだが、虚数転換(ヴァニシング)システムには稼動限界が存在する。

 質量や熱量を虚数空間へ送る度に虚数転換(ヴァニシング)システムは加熱し、限界を超えると強制冷却が必要になる。 都合の悪い物をなんでも放り込める便利なゴミ箱だが、その容量は決まっているのだ。

 表示窓(モニタウィンドウ)に表示した虚数転換(ヴァニシング)システムの加熱メーターは、レーザーの雨を浴びて見る間に上昇していく。


「相手に対する面積を最小にして、防御体勢……!」


 加熱メーターの急上昇に戦慄しながらもユキシロは教本から自習した防御用戦闘機動(マニューバ)を実行した。

 艦首を相手に向け、真正面から敵の攻撃に相対し攻撃を受ける箇所を最小限に抑える。 そのまま両舷のスラスターで平行移動しながら敵の狙いを少しでも逸らす。

 だが大型艦の船体一面にハリネズミのように装備されたレーザー砲塔は、ユキシロの必死の小細工をあざ笑うように濃密なレーザー弾幕を展開した。

 回避運動の隙を縫うように飛来しては目の前で消失するレーザー光に総毛立ちながら、ユキシロは旗艦への通信を開いた。


「コ、コマンダーッ!」


「のわっ」


 キャラック中尉は取り込み中だった。 相変わらず後ろから抱きすくめたイワイの乳を揉んでいる。 軽宇宙服のファスナーを半ばまで降ろし、右手を突っ込んだ直揉みだった。

 秀麗な顔を真っ赤に染めたイワイの首筋に唇を這わせて仰け反らせていた中尉は、お楽しみタイムを邪魔され狼狽した声を上げる。


「ユ、ユキシロ、これはその」


「てっ、敵っ、敵の新型の大型ですっ!」


 表示窓(モニタウィンドウ)の中で繰り広げられる極めていかがわしい光景に突っ込む余裕もなく、ユキシロは必死で報告した。


「新型? ユキシロがそんなに焦るのって初めて見たな。 待ってろ、すぐに行くぞ」


「んっ、コマンダー、そこはスロットルではありません。 乱暴に揉まないでください」


 相変わらず乳繰り合いながらもキャラック中尉はイワイの進路を変更した。 レーダー上のイワイを示す光点がこちらに向かっている事を確認し、セクハラを咎める余裕もなかったユキシロは僅かに安堵する。

 ユキシロの担当宙域へ急行したキャラック中尉はレーザーを雨のように放つ敵艦を光学確認し、あんぐりと口を開けた。


「な、なんだありゃあ……。 超弩級並みじゃないか、冗談じゃないぞ!」


 1000メートル級は地球圏同盟のカテゴライズでは超弩級戦艦に相当する。

 ドールローダーではない通常艦とはいえ、その巨体に装備されているであろう予想火力は圧倒的だ。

 超技術の産物たるドールローダーといえど、所詮軽巡に過ぎないイワイとユキシロが超弩級戦艦クラスと正面切って撃ち合えばどうなる事か。

 地球圏の最奥担当とも言える軌道警備艦隊の仮想敵は密輸船や忍び込んだ隠密艦など戦闘能力に乏しい相手ばかりであり、キャラック中尉もユキシロ受領前に何度か隠密艦と戦闘した経験はある。

 それらは全て格下の相手であり、こちらよりも強力な戦闘力を持つ相手との交戦経験はなかった。

 キャラック中尉は震え上がり、慌てふためいて叫んだ。


「て、転進だ! あんなの相手してられるか!」


「コマンダー、それは」


 口を挟みかけたイワイは乳房を乱暴に握りしめられ、顔を顰めた。 


「いいから、急ぐんだ!」


 ユキシロは光学確認できるほどの距離に接近してきたイワイの行動に仰天した。


 搭載された火器のひとつも使わないうちに回頭をはじめたのだ。


「コマンダー、ダメです!」


 思わず表示窓(モニタウィンドウ)も開かずに叫んでしまうほどの悪手だ。

 ユキシロが敵艦の弾幕をしのいでいられるのは、一番被弾面積の少ない正面を向けているからだ。

 イワイは回頭のためにその広い船腹を敵にさらしてしまった。

 明らかな隙を敵艦は見過ごさない。 イワイに向けて濃密なレーザー弾幕が叩き込まれた。

 レーザーは虚数転換力場ヴァニシングフィールドに阻まれ消失する。 だが、敵艦はレーザーが消える端からお代わりを撃ち込み続ける。

 ゴミ箱が一杯になった。

 無数の熱量を虚数空間へ転送し続けたイワイの虚数転換(ヴァニシング)システムは稼働限界に達し、強制冷却に入る。

 虚数転換力場ヴァニシングフィールドの護りが失われたイワイの、その名にふさわしく紅白に塗られた派手な装甲を無数のレーザー光が貫き、焼き尽くす。


「コマンダーっ!」


 イワイが爆沈する様にユキシロは悲鳴を上げた。

 なぜ敵を前に回頭をするような悪手を、という思いはある。

 敵が強力でも、二隻ならばやりようはあるのだ。 なぜ逃げ出す必要があるのか。

 全てはキャラック中尉の経験不足が原因であった。

 超弩級戦艦に匹敵する敵艦の威容に怯え、判断を誤った。 元々軍人としての才に乏しいコマンダーではあったが、その軟弱さが致命的な局面で露呈してしまった。


「よくもコマンダーを……!」


 色好みで指揮官としては落第点な人物ではあったが、それでも主は主だ。 ユキシロは唇を噛んで敵艦を睨みすえる。

 だが、彼女に出来る事はその程度だ。 雨のようなレーザー弾幕の前に右往左往して逃げ惑うしかない。

 虚数転換力場ヴァニシングフィールドを展開したままではこちらの放ったレーザーも虚数空間へ転送されてしまうため、反撃すらできなかった。


「くぅっ……!」


 必死に回避運動を続けるも、被弾は免れない。

 じりじりと近づく虚数転換(ヴァニシング)システムの限界を睨みながら、ユキシロは思考した。

 この敵を単艦で何とかするのは不可能だ。 だが、軌道上警備の任を受けた自分がむざむざと敵を通す訳にはいかない。

 ならば援軍を求めるしかない。 他部隊に救援を求めるのはコマンダーにとって恥となるが、もうそのコマンダーも居ないのだ。

 ユキシロは緊急通信の表示窓(モニタウィンドウ)を展開すると声を上げた。


「こちら、キャラック艦隊所属ユキシロ、至急救援願います! 1000メートル級の大型艦と交戦中です、誰か支援を!」


 緊急通信を放つ間にも敵の手は休まることはない。 ユキシロは声を上げ続けながら必死で操艦し続ける。

 レーザー弾幕をかいくぐり続けるユキシロは敵艦の表面に新たな動きを見た。

 レーザー砲塔に並ぶように配置された箱型の機関が展開し、内部の砲身を伸ばしている。 あれは――。


荷電雷球砲(インパルスガン)……!」


 地球圏同盟で用いられる荷電粒子砲(パーティカルガン)の親戚といえる兵器だ。

 荷電重粒子を収束したビームの形で放出するのではなく、磁場で球形に圧縮し砲弾として用いるのだ。

 近接戦での手数では荷電粒子砲(パーティカルガン)に劣るものの、射程と一発あたりのパンチ力では勝る長距離戦向けの武装である。

 敵の艦長はちょこちょこと逃げ回る小艦に業を煮やして至近距離から主砲をぶっ放した。

 青白い光球がユキシロの虚数転換力場ヴァニシングフィールドに撃ち込まれる。

 戦艦クラスにも十分な損害を与えうるプラズマ砲弾はユキシロの虚数転換(ヴァニシング)システムを瞬時にオーバーヒートさせ、虚数空間へ消え去った。

 ユキシロの護りは失せた。


「ま、まだっ!」


 次弾をチャージする荷電雷球砲(インパルスガン)の砲口から逃れようとユキシロは身をよじるように操艦する。

 最早悪あがきの領域だ。 虚数転換力場ヴァニシングフィールドを失ったユキシロは並の軽巡と変わらない防御力しか持たない。

 ユキシロの艦首をレーザー光が穿った。


「あぁぁぁっ!?」


 艦首に装備された光学カメラが破砕され、ユキシロは左目を灼く激痛に顔を押さえて仰け反った。

 経験した事のない痛みに思わず動きが止まったユキシロの艦体をレーザーが次々に貫く。


「あぐぅっ!? あっ、がっ、はっ……」


 スラスターと連動した足、砲塔と連動した腕、推進材タンクと連動した薄っぺらい胸、それぞれに錐でえぐり回されるような激痛が走る。 殴り倒されたかのようにお立ち台(コントロールステージ)の上でひっくり返ったユキシロは全身をびくびくと痙攣させて失神した。

 白目を剥いた両目からは涙がこぼれ、半開きの口の端からは泡まじりの涎が垂れている。

 激痛の余り失禁すらしていたが、軽宇宙服の優秀な排尿機構のお陰でお立ち台(コントロールステージ)を汚すことだけはなかった。

 精密な操艦を行おうと、艦との神経接続係数を最大値にしていたことが仇となっていた。

 艦が受けた損害をそのまま痛覚としてフィードバックしてしまったのだ。

 熟練のフィギュアヘッドならこのような無様な事態に陥らないよう加減して艦との神経接続を行うが、初陣であるユキシロにはそんな加減は判らない。

 痛みに対しても経験値に乏しいユキシロは余りの激痛に耐える事もできずにKOされ、フィギュアヘッドの制御を失った艦体は力なく宙を漂う。

 敵艦は最早死に体のユキシロへ止めのインパルスガンを放った。

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