おかあさんへ。
病院の廊下で、長椅子に座り、あなたは泣いていました。
わたしのために泣いていました。
わたしの体のことで泣いていました。
わたしはそのとき何も言いませんでした。言えませんでした。
だって何を言えばいいというのでしょう。
あなたが泣いているというのに
『わたしは全然気にしてないよ。あはは。』 とか言えないでしょう?
そりゃ、悲しい思いや歯痒い思いも、少しはしました。
だって、できないこともありましたから。
でもね、わたしの体の弱いのは、生まれつきのことだから、よく分かんないのです。
わたしのありさまがどんなに悲しむべきことなのか、よく分かんないのです。
だってもとからこうだから。
自分では、よく分かんないのです。
それで……それはたぶん良いことです。
それはあなたのおかげです。
泣かないで、とは言いません。
よく分かんないのです。
ナリばっかりおおきくなって、それでもわたしはこどもなので、分かんないのです。
あなたの悲しみも、あなたの苦しみも、よく分かんないのです。
だから、泣かないで、とは言いません。
でもね、おかあさん。
わたしの生には、ひかりがあります。
わたしの生には未来があります。
それは、あなたが与えてくれたもの。
だから、泣かないでっていうかわりに、ありがとうって、言いたいです。
でもたぶん、実際には言いません。言いたいだけです。
だって恥ずかしいじゃないですか!
照れくさくって死にます。
だから、こうして詩を書きました。
感謝は行動の端々にあらわすようにするので、これで勘弁してね☆(なんて親不孝)
おかあさんへ