やっと会えたね。
「奈都の奴!何を考えてるんだ?」
俺は、イライラした気持を奈都から貰ったクマのぬいぐるみにぶつける。
このぬいぐるみは、奈都からのプレゼントだ。奈都のいうモフモフのクマだそうだ。
感触?アイツみたいに抱きついたりしたら気持悪りぃだろ?
奈都曰くフワフワよりしんがあり程よい抱き心地だそうだ。
アイツは昔からぬいぐるみオタクだから、暇があればぬいぐるみ専門店?に付き合わされる。
ぬいぐるみは、いい俺から離れる?冗談じゃない!
多分、ばばあから何か入れ知恵されたんだろう。
くっくっ・・マァ奈都が一人で寝れる訳ないし、高見の見物と行きますか。
* * * * * *
「彩ママ~!早く~。」
私は、スキップしながら『マザーグース』のドアをあけた。
心地よいベルの音が店内に響く。
「いらっしゃいませ。」
鈴の音を転がしたような声がした。
「加奈さ~ん!こんにちは!」
私は、勢いよく抱きついた。
加奈さんは、少しふん張りながら抱きしめてくれた。
「奈都ちゃん!いらっしゃい。今日は、和君は一緒じゃないの?」
いつも和君と一緒に来るから加奈さんは、和君の姿を探す。
「加奈さん、今日は、彩ママと一緒に来たんだよ!とうとうあのモフモフウサギは、奈都のものになるのよん(^v^)」
毎日通ってる『マザーグース』そこで2年前に出会ったぬいぐるみ
もう一目惚れだったんだ。
余り毛足は、長くなくってクリーム色に茶色が程好く入った色
手足が長くてビロードのベストを着てるんだ。ネクタイの色は、黒白の千鳥模様ここがポイントだよ!
ズボンは、カ‐キ色でかっこいいんだよ。
ウサギの王子様なんだよ~(o^v^o)
「やっと、会えたね」
私は、密かに付けた名前シャルルをギュッと抱きしめた。
私がシャルルをギュッと抱きしめながら頬づりしてるとカランカランとベルがなり彩ママが店に入ってきた。
「な~つ、早すぎるよ~!」
フゥと息をつき目線の先に加奈さんを見つけると両手を拡げて抱きついた。
「かな~!久しぶりね、元気だった?この店加奈の店だったのね。」
「やっと夢を叶えたのよ。奈都ちゃんのママだったなんてこっちこそビックリだわ。」
加奈さんは、ニコニコして私達を見ている。
「えっ?違うよ~!奈都は、美紗の子供だよ。私の子は、可愛くない和だよ。」
彩ママは、嬉しそうに加奈さんと昔話に盛り上がっている。
私は、キョロキョロと店内を見回した。
加奈さんの店のぬいぐるみ達は、全て加奈さん手作りの品たちなの。
しっかりとした縫製、上質な生地どれをとっても加奈さんのこだわりがわかるんだ。
でも一番重要な事は、ぬいぐるみ達に愛情がたっぷり込められていることだよ。
マザーグースに来てぬいぐるみを抱きしめた人の幸せな笑顔を見る事が私の幸せなのよ。
前に聞いたら加奈さんそう言ってたっけ!
だから、和君の幸せな笑顔見たいから去年のクリスマスプレゼントに厳選してクマのナイトをあげたのに、和君ったら思いっきりひきつった顔をしたっけ。でも和君がナイトを抱きしめてるなんてあんまり想像出来ないけどね。
私が一人クフクフ笑ってると彩ママが不思議そうに私の顔を覗きこんだの。
「な~つ。ぬいぐるみは、決まったかな?
あら、ハンサムな子ね。」
彩ママは、シャルルを見ながらにっこり笑った。
私は、嬉しくってニマニマ顔を綻ばした。
「そうなの。彩ママ!イケメンでしょ、シャルルに初めて会った時一目惚れしたんだ!
毎日通ってシャルルに会うのがもう楽しくって(^^)」
「シャルルって?」
彩ママは、小首を傾げた。
「ウサギの名前だよ。だってこの子は、ぬいぐるみ界の王子様なんだもん。」
「奈都は、可愛いわね~!」
彩ママと加奈さんは、ニコニコしている。
「毎日、奈都ちゃんと和君が来てくれたのよ、私の愛するこの子達を気に入ってくれて私も嬉しいわ。クリスマスに買ったクマのナイト君は、元気している?」
「うん!和君の部屋のベットにいるよ。和君って寝付き悪いからと思ってあげたんだけど。なんでひきった顔してたんでしょ?」
私が頬をぷくっと膨らませると彩ママは、ツンツンつっいた。
「和には、奈都がいるから満足なんでしょ。」
「和君は、究極の猫被りだから頭ペルシャ猫乗せてそうだよね(^v^)彩ママ!」
「流石、奈都ダネ。
フッフッ、ペルシャ猫ね。確かに乗せてそうだよね。」
「じゃ、加奈。この子下さいな。」
彩ママは、私からシャルルを受け取ると加奈さんに渡した。
「お買い上げありがとうございます。」
加奈さんは、シャルルを受け取ってぬいぐるみの身体を隅々まで確認した。
「綻びは、ないみたいね。毎日奈都ちゃんが会いに来てくれてたから、シャルル君わざと非売品にしてたのよ。奈都ちゃんがきっと引き取ってくれると思っていたしね。」
加奈さんは、ペロッと舌を出してフワリと笑った。
「加奈さん、ありがとうございます。私、シャルルの事大切にするね。」
私は、嬉しくってシャルルをギュッと抱きしめた。
会計を彩ママが済ませてマザーグースを後にした。
「フッフッ、奈都ったらとろけそうな顔をしてるね。」
「彩ママ!ダンスを踊りたいくらい。ウキウキしてるよ。」
「ケ‐キは、どうする?」彩ママが目を細めて私の顔を覗きこんだ。
「もちろん、お茶していこ。でも遅くなったら和君拗ねちゃうかな?」
「和は、いいの。ほっといて。美味しい店見つけたのよ。奈都行ってみる?」