好きって、どんな気持ちなの?
和君の周りには、ドロドロとした黒煙が立ち込める。
魔王降臨!
「かっ!和君私、用事有るから帰るね。」
奈都は、慌てながら俺の胸をドンと押すと出て行った。
「嘘だろ・・」
俺は、金縛りにあったように身体を動かせなかった。
初めて奈都に会った日を昨日のように覚えている。
小さなフワフワした綿菓子のような女の子。
その頃お気に入りのシンデレラの王子様だと思ったらしく初対面なのに飛びついてきたっけ。
あの頃スッゴク妹が欲しかったから、スッゴク嬉しかったのを憶えている。
奈都は、単純でなんでも俺の事信じちゃうから、可愛いくってお風呂も寝るときも手放せなかったんだ。
母さんが俺の気持を察知して予防線張ってきたのは、予想通り、俺もさすがに我慢も限界だったから、奈都は、バカだから俺のこと本当のお兄ちゃんだと思ってるみたい、だから、俺のこと意識させる為に毎日わざとキスしたのにまさかキスも挨拶だと思ったりして。
「ハァ‐。」
深いため息をつき前髪をぐちゃぐちゃにかき乱す。
「馬鹿みてぇ」
その頃から、わざと奈都に対して「奈都に拒否権ないから。」
って言うようになったの。
奈都、もっともっと君を乱してあげる。
覚悟していて・・「ハァ‐なんなの?
和君たら急なんだもん。」
私は、和君の部屋から飛び出して和君の家にある自分の部屋にはいりベットに寝転んだ。
「好きってなぁに?
ママやパパ、彩ママ、和君ん家の犬のぷりんも好き。もちろん和君も大好きだよ!」
私は、いつの間にか傍にきた犬のぷりんを抱き上げて鼻先をくつっけた。
ぷりんは、ミニチュアダックスフンドなんだ。私が名前をつけたんだよ。
背中から頭にかけてキャラメル色で美味しそうだったから、和君は、変な顔してたけど可愛いんだ。
「ねッ!ぷりん、和君変なんだよ。俺の事好きだろって聞くんだよ。嫌いなわけないじゃんね。」
実は、私は初恋もまだです。
和君は、ずっと一緒だったから一番安心するんだ。
親友の杏ちゃんは、私がそういうと決まって「あんなパ‐フェクトな王子が側にいたらほかの男なんて目に入らないでしょ。贅沢もの。」
って言って軽く
ペシっとオデコを叩かれた。
確かに、和君はかっこ良くって素敵だけど、究極の猫被りだし、和君の本性は魔王だよ!
なんで皆分からないんだろう?
機嫌を損ねた時のあの禍々しいオ‐ラ、私は、ブルッと寒気がして彩ママのいるリビングにぷりんを抱き上げて降りた。
「彩ママ、ココアちょうだい。」
彩ママは、キッチンに行くと手作りのクッキーと一緒に持って来てくれた。
「奈都?なに難しい顔してるの?」
彩ママは、私の頬っぺたをツンツンした。
彩ママは、和君によく似た細い指先を私の眼の前にかざした。
「彩ママ?どうしたの?」
「奈都、近すぎると見えない事って一杯あるよね。和と奈都もそうじゃないかな?
少し距離を置くと相手が良く見えるもんだよ。」
「和君と離れるの?」
私は、口にぽんっとクッキーを入れて彩ママに聞いた。
「そう、今日から離れて寝てみたら?」
彩ママがウィンクしながら私の髪の毛に指先を絡ませた。
「和君から離れたら寝れないよ。」
私がそういうと、彩ママはパチンと手を叩いて立ち上がった。
「前から欲しがっていたモフモフしたウサギのぬいぐるみ買いに行こうか?」
「えっ!いいの?行く~!今から?彩ママ早く行こうよ(o^-^o)」
彩ママの胸に抱きついて彩ママを見上げた。
「奈都ってば可愛いんだから。」
彩ママは、私をギュッと抱きしめた。
「彩ママ~くっるしいよ~!」
私がバタバタすると笑いながら腕を緩めてくれた。
「ちょっと和君とこ行ってくるね(^^)」
スキップしながら和君の部屋の前に来るとドアごしに感じる禍々しい妖気。
「やっぱ、止めとこっと(ノ>д<)ノ」
その時ドアがカチャとあいて魔王もとい和君の指先が私の襟首を掴んだ。
「急いで帰らないでゆっくりしていけよ、奈都。」
和君、目が怖いです。今の和君ならみんな震え上がってひれ伏しちゃうよ。
「な~つ、声に出てるから。そんなにお仕置きされたいんだ?」
ブンブンと首を降って口を開こうとすると和君の唇が近づいてきた。
私は、慌てて手でガ‐ドした。
「和君、今から彩ママと出掛けて来ます。」
「ふ~ん、何処へ?」
和君は、言いながら私と和君の口の間にある私の指先をペロリと舐めた。
「奈都、指先って感じるらしいよ、試してみる?」
和君は、私の親指、人差し指、中指、薬指、小指の順に舌でたどって行く。
私は、身体が硬直して和君がする行為を見ていた。
小指まで舌で辿ると舐めながら上目遣いをして目尻を細めると私の小指を口に含み飴玉を舐めるように転がした。
「か、和君、嫌っ!」
和君の口から小指を奪還すると後ろ手に隠した。
ドキドキする心臓を身体を丸めて大きく深呼吸した。
「かっ和君なんでこんなことするの?」
和君は口元を拭うと私の頬に手をやり甘い笑顔で笑った。
「奈都、真っ赤っかダネ。言っただろ奈都の初めては、俺が貰うって、奈都に拒否権ないから。」
「キョッ拒否権って、幼なじみは、こんな事しちゃいけません。」
私は、ぷるぷる首を降ってさっき和君が舐めた指先をギュッと掴んだ。
「な~つ、可愛いね、言っただろ?初めては、全部貰うって。」
「和君は、私の事が好きなの?」
私は、和君を見上げながら小さな声で呟いた。
和君は、口元に手をあて身体をくのじに曲げて笑い出した。
「奈都は、鈍感な上に残酷な事を言うんだね。又そこが可愛いんだけどね。
教えてあげない。」
和君は、ニヤリと笑うと私の鼻をギュッと摘まんだ。
「きゅるしいです!ひゃずひゅん、ヒャナシテ~。」
私が和君の腕の中でバタバタしてると彩ママの声がした。
「な~つ、行くよ~!」
私は、両腕で和君を押すとやっと解放された。
「和君、彩ママとお出かけして来ます。」
「そっ、何買いに行くんだ?」
和君は少し拗ねたらしく機嫌悪い。
「彩ママがね、モフモフのウサギのぬいぐるみ買ってくれるんだっ(^○^)」
「前から奈都が欲しがってたぬいぐるみだろ、何で今頃?」
私は、和君の目を真っ直ぐ見つめてゆっくり話した。
「和君、私..和君離れして見ます。
私が何時までベッタリ側にいたら和君彼女もつくれないもんね。」
和君は、地の底から響くような低い声で
言った。
「俺がいつ、彼女が欲しいって言った?」
和君は、私の耳の側の壁を力一杯叩いた。
和君の怒りを肌でひしひし感じる。
私は、何か間違ったんだろうか?
「勝手にしろよ。」
和君は、バンっと大きな音をたてて部屋に入ってしまった。
「奈都?どうしたの?行くよ~!」
彩ママが私を呼んでいる。
「は~い!」
私は、後ろ髪を惹かれながら下に降りた。
「彩ママ、和君怒らしちゃいました(T^T)」
彩ママは、私の頭を優しく撫でた。
「和は、怒りんぼさんだから、ほっておきなさい。帰りにケ‐キでも食べよ!」
「彩ママ!大好きです。」
和君の事は、気になるけど今は、ぬいぐるみとケ‐キです。