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Introduction

背後から足音が聞こえてきた。

頭が重い。徐々に息が荒くなっていく。

それでも私は……逃げなければ。

固いアスファルトを叩くように走り続ける。

片方の靴が脱げた。お気に入りの靴だったのに、でも、拾う時間はない。

どこへ行っても同じ景色。どこにいるのかもわからない。

闇雲に十字路の角を何度も曲がり、右、左、右、左……。

どれだけ逃げても、不気味な足音は消えない。

坂道を駆け下りて、また上り坂。

血の滲む腹部がズキズキと疼き、薄い霧が徐々に濃くなっていく。


私はゆらりと足を止めた。

行き止まりだ。

塀は低い。助走をつければ登れるはずだ。

二歩下がって、悲鳴を上げるアキレス腱を無視してジャンプした。

視界がゆがむ。目の前は青空だ。嫌気が差すような白と青。

光はないのに、眩しい。

最後の一歩を踏みきって、塀を乗り越え、さらに飛んだ。

赤い屋根。頂点から頂点へと飛ぶ。

黒い影も同じ道をなぞって追ってくる。

遠くで爆音が聞こえた。

あの人だ。

私も戦わなければ。

ほとんど自由の利かない右手に集中する。奇跡的に、それは動いてくれた。

全てを巻き込み飛ばす風をイメージする。

水色の、LEと書かれた右手の焼印が徐々に深い傷跡のようになっていく。

手に、足に、背中に、空気が吸い込まれるように集まってきた。

足をまた止めて、振り返る。


「死ね!」

誰かの声が聞こえた。

何も分からず、私は全てを吹き飛ばした。


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