翼の代償。
少女は主の死に嘆き翼の奇跡にその願いを託した。それは奇しくも、惑星再構築後の聖女概念の誕生でもあった。
侍女の【アンリエッティ·ヴァイス】が駆けつけた時、執務室で眠るルナリアナがいた。「お嬢様、お嬢様‼」懸命に起こせども少女が起きる気配は一向になかった。こう言う摩訶不思議の概念の誕生のない惑星にとって、神々の邪な妨害は人間では防ぐことができなかった。
水の女神の恩恵を受ける世界とて、祖神からの刺客を防ぐ力はなく、その妨害を撃退するのが脆弱な独自惑星には求められていた。安易に魔導書に縋るも由、武器や肉体の改造を図るも由、であり、それに因りその惑星独自の進化を特出させ人口増加率に変化をもたらせていた。この国は王自体が魔導を好まず穏健派を続けた結果、祖神の介入を容易にしていたのである。
これは惑星に罪があるわけではないが、その根本の火消しの話は別世界の騒動のため、被った世界と神には同情の念を否めない。しかし、祖神の手に因って深い眠りに着いた彼女を救うには、【純真なる祈り】が必要であり、再構築後のこの惑星に【聖女】の概念を練り込む基盤が成り立った。
アリエッティは嘆き涙が零れ落ちた先に視線を向ける。【片翼のペンダント】・・・それはリキから託された代物である。「・・・願えば・・・」叶う、そう呟こうとして背筋が冷えた。本能が死を察知しての警戒信号だと思われた。然しながら主に尽くすしか術を持たぬ存在の少女は、主に生きてほしいとしか考えられなかった。
ーーー「・・・お願いッ・・・お嬢様を連れて逝かないで・・・」翼が光り輝き少女の願いは尊き命を代償に果たされた。後の【聖女概念】の誕生の礎となるが、守られた少女の記憶には残らず、存在その物の消滅と同時に少女の歴史は閉じたのだった。ーーー
少女の生きた半生を代償に、奇跡は物語の継続を赦した。後の世に聖女概念を構築する定めの布石であろうとも、少女の生きた記憶までもが無かったことになるのは酷であるとも思われた。




