湖での逢瀬。
間違えてシリーズ終わらせてしまった。新参者故笑って許してください。
舞踏会の次の日、ルナリアナは失恋の傷を癒すように西門からでた先湖へと馬車に乗って向かった。この国は水の女神の恩恵を受け、水に枯渇することもなく緑生い茂る大地である。
西の先の湖は恋人達のデートスポットとして人気があり、戦の少ないこの国では気軽に平民達も危機感を持たなかった。ルナリアナも同じである。若干の護衛兵と侍女のアリエッティだけを連れての散歩である。
「…お嬢様、近頃は近隣の情勢がきな臭くなっておりますので、お散歩は控えられたほうが宜しいかと。それはルナリアナも理解していた。「………確か北側にある宗教都市国家に新しい大司教が着任したのよね。名前は確か……」少し考えたがその言葉は紡げなかった。
ルナリアナが情勢や世俗に疎いわけでも、頭が悪いわけでもない。寧ろ、才女と褒め称えられるほどである。侍女に至っては北側の宗教都市国家の国主の交代さえ疑問符を浮かべるほどである。しかし、宮仕えの侍女如きが主に意見するのは極刑に処せられても文句が言えず、寧ろ口答えも国外追放ぐらいの重い罪である。しかし、ヴァルゴ家では全てを許されていた。公の場ではきつく言い含めねばならないが、家族ないであればそれも許された。
「………何故、国主の名を口に出来ないのかしら?」アリエッティは感じ得ぬ恐怖感に身震いして、ルナリアナに進言する。「………お嬢様、何やら私は恐ろしく感じます。どうか、この話はこれきりに……」言い終わらずに聴こえてきた草笛の音色にアリエッティの恐怖が打ち消された。
振り返った侍女とルナリアナは現れた黒水晶の鎧に身を包むリキの姿に神々しささえ感じた。雄々しくそびえ立つその剣士の姿に勇者の残像さえ重なる。勿論、この世界には勇なる者も、それに相立つ魔の王も存在しはしないが、彼と相対した存在は、皆須らくそう称し、その証たる武も備われば女は全員惚れる。ルナリアナもその一人だった。「……ああ、スマン。愛らしき花々の囀りに釣られて女神たちの園に迷い込んでしまったな・・・赦されよ。」所作の一つ一つが礼と配慮を保ち、平民、貴族の隔てもないのだから侍女のアリエッティが女の色香で見つめるのも頷ける。
だが、ルナリアナだけは別だった。「………お疲れなのです?今日は確か午前中に訓練と陛下達の狩りに同行されていたのでしょう?」苦笑いを浮かべれば、リキは苦笑で返す。「………疲れていたけど、愛らしい花々の香りに癒されたのでもう一踏ん張りできそうです。」この言葉に中てられて、侍女のアリエッティだけでなく護衛騎士のも魅了されたようである。(………死人が出る前に退散しようかしら?)
ふわりとほころんだルナリアナ。リキはその安らいだ笑みに安堵しつつ思わず呟いた。「・・・この世界は好きか・・・?」いきなりの質問にルナリアナは戸惑いつつもこう返した。「あ、当たり前ですわ。大好きな人達が居る世界ですもの。」そう返されてリキの表情が瞬間暗みを帯びた。が、それに気づけたのはルナリアナだけである。
ーーー「・・・愛らしい少女達よ。君達にこの天馬の片翼のペンダントを贈ろう。窮地に陥った時は強く握りしめて願うといい。きっと、神の加護を得られることだろう。」アリエッティとルナリアナは湖畔の眩さを背に微笑む男にただ、ただ、想いを募らせたのである。ーーー
少女の物語の続きです。




