私たちの出会いは、まるで夢のようなものでした-1
私は無神論者であり、超自然現象も信じず、ましてや幽霊や怪物の様な荒唐無稽な伝説など、実際に体験するまでずっとそう思っていた。
★★★
今日もいつも通り、一人で静かに校門を出た。誰とも話さなかった。
慣れた道をずっと進み、すぐに自宅の玄関前に着いた。全てが普段と全く同じだった。しかし、ドアを開けようとした瞬間、地面にあってはならない物体が目に入りました。
それは手のひらほどの大きさの淡い黄色のノートブック——小学生が秘密を書くのに使うようなものでした。表面は汚れ一つなく、表紙にはやや奔放な文字で「願いの日記」と大きく書かれていました。朝出かける時には、それが見えていなかったことを覚えています。
誰がこんなものをここに置いたのか?
困惑しながら、ゆっくりと膝をつき、それを拾い上げた。最初のページをめくり、次に二ページ目……三ページ目……
最後のページまでめくっても、紙面は常に真っ白で、新品と全く変わらない状態だった。
最初は誰かが家の前にゴミを捨てたのかと思ったが、開いてみると、これは全く使用痕跡のないノートだった。
もしかして……誰かがここに落としたのか?
その時、背後から突然声が聞こえた。
「あら、拾ったのがあなただったなんて!いつも一人で行動している人だもの。」
彼女の声には少しの驚きが混じっていた。
突然現れた言葉に驚いて、私は全身が震え、急に振り返った——
目の前に現れたのは、美しい女性だった。彼女は滑らかで輝く黒髪をなびかせ、細長い睫毛が丸い目を縁どり、薄い唇には淡い桃色が差していた。
上半身は純白のシンプルなTシャツ、下半身は黒いミニスカートを合わせていた。全体のコーディネートはシンプルで素朴だった。
微風になびく前髪が額を覆い、日光に照らされた黒髪が輝いていた。
真夏の暑さの中、彼女の顔には一滴の汗もなかった。
彼女の大きな瞳は私をじっと見つめ、その丸く澄んだ大きな瞳には、私がドアの前で呆然と立っている姿が映っていた。
目の前の姿を見て、私は唇を噛みしめ、その場に固まった。しかし、私を呆然とさせたのは、彼女の天女のような美しさではなかった……
「久しぶりですね、伊藤くん。」
私の前に現れたのは、クラスの人気者——綾瀬良沙……同時に、ここにいるべきではない「人」だった。
「あなた……あなたは……綾瀬さん?」
「そう、私よ」
私がやっと絞り出した言葉を、彼女は淡々と返した。
「いや、不可能だ……あなたは去年夏にすでに……」
その通りだ。
彼女は去年夏にこの世を去った。
脳裏に埋もれていた記憶が再び蘇った。
それは返校清掃の時のことだった。私たちのクラスが教室に集まったその時、担任教師が真剣な表情で入ってきた。
『綾瀬さん、昨夜不幸にも交通事故に遭い、先ほど……ご両親から訃報が伝えられました……』
担任教師は震える声で衝撃的な事実を告げた。一瞬、教室は静まり返った。
その日、彼女の名前は過去のものとなった。だから、彼女は今ここに元気で立っているはずがない。
「そう、その通り。私はその時すでに死んでいた」
彼女は平然と恐ろしいことを語った。
「えっ、知ってる?最近話題になっているあの伝説』
朝の自習中、クラスメートたちが耳元で話していた話題が、静かに脳裏に浮かんだ。
「そ、それって……あなたは幽霊……?」
私は動揺して言葉も出ず、手が止まらず震え、背筋から寒気が頭まで這い上がってくるのを感じた。全身が恐怖で軽く痺れた。思わず数歩後ずさった。
私の反応を見て、「綾瀬良沙」は少し申し訳なさそうに笑った。
「ごめんね、驚かせてしまったみたい。でも、私が言ったことは全部本当なのよ。私を幽霊と呼ぶなら……別に間違ってるわけじゃないわ」
「これ、これ、あり得ない……」
これはまるで大きな冗談のようだ。死後の魂が世に残るなんて……童話の話ではない。現実では絶対に起こり得ないことだ。
「これが馬鹿げた話だと分かっている。どう説明すればいいのか分からないけど……今、ここにいる。あなたの目の前で話している」
「それは不可能だ……」
私は必死に首を振った。理性を保つためだった。
「そうだ、これは夢だ。私はただ夢を見ているだけだ」
私は自分の頬を摘んだ。
痛みがあった……
私はようやく目の前の状況を理解した。
彼女が言ったことは全て真実だった……
私は、本当に幽霊に遭遇した……