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タイトル未定2025/06/27 01:23

 いつも通りの朝であったはず、なのですが。正門を過ぎると不思議な感覚に包まれて……校舎手前で考え込んでしまいました。

「摩耶様。本日はテストの予定はありましたでしょうか。」

「うんにゃ。なかったんじゃない?どうしたの?」

「校内に入ってから、何やら不穏な気配を感じるのでございます」

「テストのヤマは張らないんじゃなかったの?」

「テストと申しますよりも、それがその後の不穏な動きに繋がる奇妙な…違和感……嫌悪感が…」

 なんと申し上げれば良いのかわからぬまま、でもなんとかしないといけないという、強迫観念?

「ちょっと、ちょっとぉ。舞羅がそういう事言うと怖いんだけど。」

「対策は?」

「全クラスで、各教科の得意な皆様方で、ヤマを張られるのがよろしいかと。何故か、今日であるのは感じるのでございますが、どの教科なのか検討がつかないのでございます。いつもなら、大概先生のお顔が浮かんで来るのでございますが…」

「舞羅がこの状態って事は、非常事態だと思った方がいいわね。全教科の対策チーム作ってヤマ張って勉強しよう。」

「了解。先行って説明とチーム作っとく」

 さすがゆう様、機敏な動きで走って行かれます。

「よろしくー!……さて、舞羅。他に何か出題ポイントとか浮かばない?」

 「そうですね。各クラス……いえ、受け持ちの先生毎に対策をテスト内容が違うのかもしれません……」

 「わかった、とりあえLINEでゆうに伝える」

 摩耶様はすぐにスマホを出されて、ゆう様に連絡されます。その間も私は違和感に集中致します。まだ始業まで時間がございますので、ベンチへ向かい、タロットカードを取り出します。

 「先生方の置かれた状況を見れば何かわかるのでは……」

 タワー逆、エンペラー逆、ラバーズ正……。

 「先生方も混乱されているようでございます。どなたからの圧力。先生方は私達生徒の味方にございます。基本問題を。そのクラスに合った出題傾向だと思われます」

 「了解。ゆう聞こえた?よろしくね。私達も教室向かうわ」

 摩耶様は、いつの間にやらゆう様と電話をしていたようです。

 「片付けよう。ゆうがクラス代表集めて説明してくれたって。さっきの舞羅の占い聞いて各クラスに帰って山張るって言ってた。先生の受け持ちクラス毎に協力体制もできたっぽい」

 さすがは幼い頃から同じ学び舎で培った協力体制です。

 「皆様のお力になれて何よりです」

 「舞羅の直感とか占いがいかにスゴイかってのが、学校中にしっかり浸透してるからね」

 占いを始めましてから、摩耶様が勘のいい舞羅の占いなら、練習台でも構わない、占ってあげてとおっしゃいまして、週にお二人ほど占っていましたところ、噂が一気に広まったようです。都度都度、摩耶様が厳選された方を連れていらっしゃっていたようです。

 「それにしてもホント舞羅の信頼度高いよねー。凄いわー」

 「凄いのはそのようにプロデュースされた摩耶様かと」

 「いくらプロデュースしたってホンモノじゃないとここまで信頼されてないよ。森羅センセ」

 照れ隠しでしょうか。摩耶様は占い師の私の名前を出されました。

 「摩耶様ありがとうございます。それでは早く教室に行ってテスト勉強に励みましょう」

 「そうだった。急ごう!」

 「はい、摩耶様」


 教室では既に各教科の担当者が予想問題まで作り上げたようです。

 「舞羅、いつ頃テスト来ると思う?」

 「1時間目から始まるのでは無いかと。それで急いで頂きました。教科の順番はさっぱりわからず…申し訳ございません。思い違いなら更に……」

 私の言葉を遮るようにクラス委員のあゆみ様がおっしゃいます。

 「いいのいいの!きっと何らかがあるわよ。無くてもどうせ定期テストも近づいてんだし!」

 「舞羅の勘と占いは信用度高いからね。誰も疑わないし、当てにしてるから」

 なんという嬉しいお言葉でしょう。

 「今回ばかりは皆さんの期待に添えるのか自信がございませんが……皆さんのこの頑張りで先生方も救われるような、不思議な感覚がございまして」

 「なるほどね。とにかくおかしな感じなのね。んじゃ、先生達にも感謝されるぐらい頑張るよ、みんな!」

 「不安な方は八割を目指しまして山を絞りますので確実にそれだけでも覚えてくださいませ」

 そう言いますと、皆様がその方が良いに決まっているとおっしゃいまして、詰め寄られてしまいました。

 「では、教科の問題をこちらへ。問題番号は……ございますね。摩耶様、では数字に印を付けてくださいませ」

 「OK。まず、国語」

 「1、2、5、7……それと問題文5~7行目。漢字や語句の意味は確実に、といったところでございましょうか」

 「次英語」

 「英語は……」

 こうして、教科全てを絞りまして、テストに挑むことに致しました。


 「……ということで、本日は時間割を変更して1時間目からテストをします」

 担任の須田先生はそう言われますと、黒板に時間割を張り出されました。生徒の反応に多少戸惑っておられていたのは、申し上げるまでもなく……。

 「あまり驚かないのねぇ。……ああ。うちのクラス、勘のいい人がいたわね」

 と、こちらを見て苦笑していらっしゃいます。

 「はい。このクラスだけではございませんが」

 「言っちゃっていいの?」

 ゆう様が驚いてつい声を上げてしまわれたようです。

 「私は定期テスト前に皆様に勉強を促したまでですから」

 「ありがとう。舞羅さん。他の先生方にも職員室に帰ったら伝えるわ。それじゃ、後は勉強に時間を当ててください。朝のホームルームは以上です」

 須田先生は挨拶も手で制されてそのまま教室を出て行かれました。

 「きっとこれで先生方も安心されるのではないでしょうか。後は私達が頑張るだけでございます」

 「気合いいれてこ!」

 あゆみ様の掛け声と共に皆様それぞれ気合いを入れられ、勉強に取り掛かられます。

 「あゆみのお陰ですっかり体育会系クラスよね」

 「はい。リーダーシップがおありになるので、本日も大変助かりました。さて、摩耶様。勉強なされてください。分からないところはお教え致します」

 「ん、全部説明よろしく!」

 隣で聞いていたゆう様と一緒に、ため息をついたのは言うまでもなく……。


 さて、無事にテストを乗り切り、ゆう様は解き放たれたように部活へ向かい、クラスの皆様も居なくなった教室で、摩耶様と今後の仕事の予定確認をしておりましたところ、通りかかられた湯川先生が私を見つけられて声を掛けてくださいました。

 「舞羅さん」

 摩耶様は慌ててメモをしていたノートを閉じられます。仕事の内容を見られるのを気になさったのでしょう。

 「湯川先生、どうなさいましたか?」

 「今日も大活躍だったそうね。あなたのことだから、教員の心配をしているんじゃ無いかと思って」

 「やはり、何かあったのですね」

 「私、席外しましょうか?」

 ノートを抱きかかえて摩耶様が立ち上がられます。湯川先生が教室に入って来られてから、摩耶様はずっと落ち着かないご様子です。

 「摩耶さん、大丈夫よ?学校内にあなた方をとやかく 言う人はいないわよ。気づいていてもね」

 やはり先生は気づいていらっしゃるようにございます。

 「摩耶様も一緒にお話しをお聞きになっても構わないと思いますよ?」

 「あはは。では、同席させていただきまぁす」

 そう言うと摩耶様は諦められたのでしょうか、椅子に改めて座られました。

 「新しい理事が学習の指導方法に口を出して来たの。やり方が悪いから偏差値が上がらないとかなんとか難癖を付けて」

 「それで、抜き打ちテストをしろと」

 「摩耶さんも話が早くて助かる。さすが森羅先生の助手」

 摩耶様は一瞬怯んだご様子でございましたが、かえって開き直られたご様子で、

 「一番の親友ですからー」

 とお答えになられました。

 「相談した内容とも被る出来事だったから、どうしても話しておきたくて」

 「ということは、先生方の中に協力者がいらっしゃったわけですね」

 「そうなの。うるさく指導してきた先生が新しい理事を焚き付けたみたい」

 ちなみに、お気づきかと思いますがこちら、湯川《和葉》先生でございます。

 「先生方の中でも嫌われている先生でございますね。なるほど。では、私が手を回したのはやはり間違いではございませんでしたね」

 「うわー、全クラス頑張ってて欲しい!ぎゃふんと言わせたい!」

 相談内容を把握していらっしゃる摩耶様もかの先生には怒りを覚えていらっしゃったようですので、つい力が入ったようにございます。

 「そうなの!で、まだ午前の分だけなんだけど、いい感じなのよ、平均点」

 よほど嬉しかったのでしょう、先生もついくだけた言い方になっていらっしゃいます。

 「そうでございますか。皆様のお力になれて、安心致しました」

 「舞羅さんありがとう。そうそう、彼も受け入れてくれたっていうのも報告しておきます。ありがとう」

 「きゃー、先生幸せじゃんー」

 「摩耶さんもありがとう。それじゃそろそろ行かないと」

 湯川先生が立ち上がられて、とても晴れやかなお顔で教室の出口へ向かわれます。

 「ご報告ありがとうございました。では、ごきげんよう」

 「さようなら」

 小さく手を振りながら教室を出て行かれました。

 「やっぱり素敵な先生でございますね」

 「私にも報告してくれたのかな」

 「はい。摩耶様にも聞いて頂きたかったのだと思います。それにしても……新しい理事の方は許せませんね。お父様にも報告いたしませんと」

 「そうだよね。私もパパとママに報告しとく。今帰国してるんだよね。衣装また新調してくれるって」

 摩耶様のご両親はデザイナーをなさっていて、海外を飛び回っておられます。占い師の衣装は、摩耶様のご両親からのプレゼントにございます。

 「まぁ!それでは私からもお礼を伝えに伺ってもよろしいでしょうか?久しぶりにお会いしたいです」

 「それじゃ、今日は占い休みだから、家で打ち合わせしよう!夕飯食べて行きなよ」

 「素敵なご提案です。すぐにお父様とお母様に連絡しておきます」

 スマホを取り出しまして、まずお父様に連絡を致します。

 「もしもし?お父様今お時間よろしくて?学校の事でご連絡が。はい。それが、今晩摩耶様にお食事に誘って頂いておりまして。わかりました。では帰宅後に」

 「お父さんなんて?」

 「学校の事は直接落ち着いて聞きたいそうでございますので、帰宅してからと申しております。お母様にも連絡して下さるそうです」

 「よし、それじゃ家に参りましょう」

 そう言われまして、摩耶様は素早く帰り支度をなされます。私も帰り支度を整えまして学校を後に致しました。


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