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姪の旅立ち、叔父の開店11

 馬車の荷台にはこれからの生活に必要となる荷物をいろいろ積んでいる。

 それを下ろそうと馬車の後ろに回り込むと、パルメダさんに肩をぽんと叩かれた。


「重いものは私にお任せを」

「ショウ殿は軽い荷物をお持ちくださいませね」


 パルメダさんとルティーナさんは口々に言うと、それぞれ荷物に手をかける。


「えっ。騎士のパルメダさんはともかく、ルティーナさんに重いものなんて──」


 そう言ってから、ルティーナさんが『神官戦士』であることを思い出す。


「んしょっ」


 ルティーナさんは小さな声を発しつつ、大きな木箱を両手に持った。

 ……ひとつで数十キロはあるだろう木箱を、片手に三個ずつだ。

 そして、荷物の重さを感じさせない軽い足取りで店へと向かった。

 そんな彼女を目にして、俺は目を丸くする。肩に乗っているピートも俺と同じような顔をしながら、その小さな体を恐怖で震わせていた。

 ──ルティーナさんは想像していた以上に力持ちだったらしい。

 怯えなくても大丈夫だと宥めるように頭を撫でれば、『ピィ』と小さくピートは鳴いた。

 パルメダさんも大きな木箱を片手に二つずつ持ってから、店に入っていく。

 ……二人とも、すごいなぁ。いやいや、感心している場合じゃないか。


「よっこらしょっと!」


 小さめの木箱を抱えてみたが、俺にとってはかなり重いものだ。治療をしてもらったばかりの腰がもうピキッと嫌な音を立て、俺は内心冷や汗を垂らした。

 あんなに大きな荷物を軽々と持って行く二人はすごいなぁ。

 改めて店を眺めると、少し離れたところに以前はなかった二階建ての家屋が建っている。あれがルティーナさんの住居なのだろう。

 アリリオ殿下が建ててくれただけある、煉瓦造りの立派な一軒家だ。家屋には大きな窓が取りつけられており、建物からの見晴らしはよさそうだ。……というか、あの建物は見張り台の役割も持ってたりするのかな。


「あんなものをあっという間に建ててしまうなんてすごいなぁ。アリリオ殿下にはなにかお礼をしないとな」


 そんなことをつぶやきながら、えっちらおっちらと店へ向かう。

 俺が一往復する間に護衛二人は重い荷物を抱えて何往復もし……という感じで荷運びはあっという間に終わってしまった。

 パルメダさんとルティーナさんは疲れ知らずで、少しの休憩も取らずに運び込まれた荷をてきぱきと解き適切な位置へ収納していく。


「よし、俺も……!」

「ショウ殿は、休んでいてくださいませ」

「そうですよ。腰をやってしまったらどうするんです」

 

 腕まくりをして荷解きに参戦しようとしたけれど、ルティーナさんとパルメダさんにそんなふうに止められてしまった。

 俺、もしかしなくても戦力になっていないんじゃないか…!?

 申し訳ないなぁなんて思っていると、ふとキッチンが目に入る。


「……休憩用の菓子の準備でもしようかな」

「「菓子!?」」


『菓子』に反応し、護衛二人の顔が勢いよくこちらを向く。こういう時の二人の息はぴったりだ。


「キッチンの使い心地も確かめておきたいですしね。なにか簡単なものでも作りましょう」


 荷にはそば粉があったし、ガレットを作るかな。

 王宮にいる時に『こちら』にしかない果実で試作したジャムを持ってきているから、それをトッピングしよう。


『ピッ! ピピッ!』


 なにか食べられると察したのか、ピートも飛び回りつつ嬉しそうな声を上げる。

 期待に満ちた皆の視線を受けながら、俺は調理を開始した。

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