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姪の旅立ち、叔父の開店9

「飼うと決めたのだし、名前をつけないとなぁ」


 俺の膝の上で丸々としたお腹を見せてすっかりリラックスしている幼竜を撫でながら、名前候補を考える。

 竜だしかっこいい名前がいいんだろうけど……。

 名前は一生を左右するものだし、これはなかなか悩ましいぞ。


『ピーッ! ピッピッ!』


 喉のあたりを指先で撫でれば、幼竜は笛のような愛らしい鳴き声を漏らす。

 すでに愛着が湧いてしまっているし、いい子に育てないとな。じゃないとこいつは、将来パルメダさんとルティーナさんの腹の中……なんてことになってしまう。

 丸焼きになった竜を、よだれを垂らすパルメダさんとルティーナさんが囲む。

 そんな光景がありありと想像できてしまい、俺は背筋を震わせた。


「そうだ。お前の名前、ピートなんてどうだ?」


 はっと名前を思いつき、その勢いのままに幼竜に訊ねてみる。

 ピーピーとずっと鳴いてるからピートだ。由来はともかく響きはとてもかっこいいと思う。……なんて、自画自賛が過ぎるかな。


『ピーッ! ピーッ!』


 幼竜は俺の提案を聞いて目を輝かせた……ように俺には見えた。


『ピッ! ピッ! ピッ!』


 幼竜は高い声で鳴きながら、俺の膝の上をころころと転がる。


「気に入ったのか?」


 話しかけつつ、幼竜のお腹を優しく撫でると幼竜──もといピートは嬉しそうにまた鳴いた。

 ……本当に可愛いな。

 子どもの頃の椛音を見ているような、そんな温かな気持ちになる。

 竜と一緒にするなと、椛音は怒るかもしれないが。


「いいお名前ですね」


 微笑みつつルティーナさんに言われてほっとする。どうやら、妙な名付けではないようだ。


「うん、とても美味しそうな名前です。よいと思います」


 パルメダさんのこれは……褒めてくれているのだろうか。

 不信感も露わな視線を向ければ、パルメダさんはにこりと爽やかな笑顔をこちらに返した。


『ピッ、ピシャー! ピッ!ピ!』


 命の危機を感じたのか、ピートがパルメダさんに牙を剥く。


「ピート、落ち着け」


 俺は苦笑しながら、ピートを宥めようと頭をわしゃわしゃと撫でた。するとピートは喉をクルルと鳴らしながら気持ちよさそうに目を細める。


「おやおや、人に牙を剥くなんて悪い竜ですね。美味しく食べられたいのですか?」

『ピッ!』


 パルメダさんがピートを覗き込みながら、からかうような表情で言う。するとピートは小さな悲鳴を上げた。


「冗談ですよ。そんなに怖がらないでください」

「パルメダさん、あまりピートに意地悪を言わないでください」


 くすくすと楽しそうに笑うパルメダさんに、苦笑いをしながら一応釘を刺す。


「そうですよ、パルメダ卿。ショウ殿が怒ってご飯を作ってくれなくなったらどうするんですか」

「むむ。それは困りますね」


 頬を膨らませつつのルティーナさんの言葉を聞いて、パルメダさんは真剣な表情になる。

 この人たちって本当に、食いしん坊だなぁ……。


 そんな会話をしている間にも馬車は進み、店へと近づいていく。

 そして……馬車は店の前に停まった。

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