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姪の旅立ち、叔父の開店7

 これはどうしたものだろう。生まれたら、野生に帰せばいいのか?

 いや、でもこの赤竜って討伐対象の危険な生き物なんだよな? 一体どうすれば……!

 もっと情報を得ようと、卵にさらに『鑑定』を使う。すると──。


『赤竜。平均寿命は約百八十年。卵生ではじめて見たものを親と思う習性がある。その肉質は柔らかくとても美味。成竜よりも幼竜の方が美味とされる。おすすめの調理方法は──』


 などという、追加の情報がどんどん出てくる。しかしなぜか『食』に関する情報が多いな!


「いやいや、美味って書かれても! 成竜ならともかく、幼竜を食べるのはちょっと気が引けるだろ!」


 ついつい俺は、まだまだ流れていく『鑑定』の文章にツッコミを入れてしまう。

 するとパルメダさんとルティーナさんが、首を傾げながらこちらを見た。


「ショウ殿。どうされたのですか?」

「いや、鑑定を重ねがけしたら情報が滝のように流れてきて……」


 怪訝な顔のパルメダさんに訊ねられて、自身に起きたことをそのまま話す。


「え? それは本当ですか?」


 俺の話を聞いたパルメダさんは、その美貌を驚きに染めた。


「……へ?」

「鑑定というものは、表層的な情報しか見えないものなのです。そして、重ねがけなんてことは不可能だ。本来ならば……ですが」


 彼がそんなふうに説明してくれたので、『なるほど』と腑に落ちる。

 これは俺の鑑定スキルの『+』の部分なんだな。まさか、こんな効果だったとはなぁ。


「……そんな希少スキル。持っていると世間に知られたら、問題が起きますね」

「問題、起きますかね」

「確実に」


 パルメダさんは苦い顔をしながら言い切ると、腕組みをしてふうと息を吐いた。ルティーナさんも同意を示すようにこくりと頷く。


「ええ。相手の秘密を暴けるスキルなんて、いろいろな使い方が考えられますものね。あっ、私には使わないでくださいね?」


 ルティーナさんはそう告げて、俺から少し距離を取りながら自身の身を両手で抱いてみせる。

 いやいや! 人のプライバシーを暴くような真似なんてする気はないぞ! ましてや相手はうら若き女性である。

 ……セクハラはダメだ、絶対に!


「つ、使いませんよ!」

「ふふ、冗談です。貴方はそんなことをしないと、確信しておりますので」


 ルティーナさんは口元に手を当て、楽しそうにコロコロ笑った。どうやら、俺はからかわれてしまったらしい。


「……会ったばかりなのに、そこまで信用されるのも不思議ですが」

「貴方はいい人です。あの優しい味の料理を食べればわかります」


 頭をかきつつ言えば、にこりと笑ってそう返される。パルメダさんも「そのとおりです」などと言いつつ深く何度も頷いているが……。二人とも、料理の味にそこまでの信頼を置くのはどうかと思うぞ。


「いやいや、美味しい料理を作る悪い料理人もいますからね」

「ですが、ショウ殿はそうじゃないでしょう?」


 ルティーナさんはそう言うと、女神のような微笑みを浮かべる。うう、眩しすぎる…!

 その時。手元でパキッというなにかが割れる音がした。

 反射的にそちらに目を向けると──卵の殻の一部が割れて内側から押し上げられている光景が目に入る。

 そして……中にいる『それ』と俺の視線はばっちりと合ってしまったのだった。

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