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姪の旅立ち、叔父の開店6

 店に向かう馬車に揺られつつ、大きなバスケットを椅子の上に置く。

 それがお弁当だと察した食いしん坊ふたりは、そんな俺の様子をわくわくした様子で見守っていた。

 お弁当は、野球部の高校生五人が食べる程度の量を想定して作った。

 ……ふつうなら、この人数で食べ切れる量ではない。

 そんな量だけれどルティーナさん相手だと、どれだけもつのだろうなぁ。先日の彼女の食べっぷりを思い返して、俺は内心苦笑いをする。ルティーナさんほどではないけれど、パルメダさんもよく食べるもんな。


「ショウ殿! 早く中身が見たいです!」

「はいはい、わかりました」


 口の端からたらりとよだれを垂らすパルメダさんに急かされて、バスケットの蓋を開ける。

 すると、ふわりとよい香りが馬車内に漂った。それを嗅いだルティーナさんがごくりと喉を鳴らし、パルメダさんはぐうとお腹を鳴らす。


「本日のお弁当は。厚焼き玉子サンド、カツサンド、唐揚げ、白身フライ、豚肉のカイワレ巻きの五品を用意しました!」


 俺はお弁当の中身の説明をふたりにする。

 今回は、おかずも男子高校生が好むものをイメージした。なのでなんというか、全体的に茶色い。野菜メインのおかずも入れればよかったかな。

 バスケットの内側には布を敷き、仕切りつきの木の容器におかずは入れている。この世界にはアルミホイルやサランラップ……は当然としてクラフト紙やパラフィン紙のようなものもないので、おかずの仕切りや汁漏れ防止には多少の工夫が必要なのだ。陶器の容れ物を使うことも考えたが、馬車の揺れで割れたら困るしな。

 今回は王宮の食材のみで作ったので、椛音やパルメダさんが持ってくるような『特殊』な食材は使っていない。だけど、美味しく出来たと思うんだよな。


「とっても、美味しそうです……!」

「た、食べてもよいですか? ショウ殿!」


 ルティーナさんとパルメダさんはしばしの間おかずに見とれてから、瞳を潤ませながらこちらを見つめる。


「いいですよ、食べてください」


 頷きつつ許可を出せばふたりは高速で食前のお祈りをしてから、お弁当に手を伸ばした。

 ……神官のルティーナさんがお祈りを省略するのは、ありなのかな。

 そんなことをふと思ったけれど、俺にはこの世界の作法はわからないので考えないことにする。


「いただきます」


 俺も手を合わせて食前の挨拶をすると、分厚く焼いた厚焼き玉子を挟んだサンドイッチに手を伸ばした。


「うん、美味いな」


 サンドイッチを頬張り、俺は満足げな声を上げる。

 シンプルに塩とハーブで味つけをした厚焼き玉子はなかなかに美味い。生地にマヨネーズを入れてふわりと仕上げられなかったのが、少々残念ではあるが。

 ……サルモネラ菌が怖いので、自家製マヨネーズは作る気にならないんだよな。

 自家製マヨネーズは、殺菌されていない卵を使うため食中毒リスクが実は高い。マヨネーズがあれば料理の幅が広がるんだよな……とは思うものの、食中毒リスクを犯してまで導入するものでもないしなぁ。人に提供するものなのだから、安全性が一番大事だ。

 浄化魔法は菌の駆除もできるのか、今度パルメダさんに聞いてみよう。いや、そもそも細菌という概念がこの世界にはあるのかな。そんなことを考えつつ、今度は唐揚げを口にする。完成から時間が経ち、しっとりとした衣がなかなか美味い。

 美味しそうに……しかし爆速でお弁当を食べる二人を横目に見ながら、俺はツァネルさんからもらった飛竜の卵を手にした。これはどんなふうに調理しようかな。そんなことを考えながら、卵をためつすがめつ眺める。

 どんな食材かよく知るために、一応鑑定しておくか。

 そう思った俺は、アリリオ殿下からもらったスキルの効果を弱める腕輪を外す。


「……鑑定」


 卵にスキルを使うと、説明文が浮かび上がる。

 いつもながら、不思議なものだなぁ。

 飛竜の卵に関する説明文を目で追ってから……俺は目を瞠った。


 これ、有精卵だぞ。しかも孵化が間近らしい。

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