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神官戦士のルティーナさんと対面しよう7~巣蜜のパンケーキを添えて~

 ──やばいな、これは。


 しっかりとした、それでいてしつこくない蜂蜜の甘さ。鼻に抜ける濃厚な香り。巣蜜の生キャラメルのような食感。それらとふわふわに焼き上がったパンケーキが、とてつもなく合う。

 幸せを噛み締めながら、蕩けてしまいそうになるな。

 中年が蕩けた顔をしていても様にならないどころか見苦しいだけなので、できる限り表情は引き締めていよう。

 いや、これは難しいな! 糖蜜を口にした瞬間に、だらしない顔に戻ってしまう……!


「ああ、なんて素晴らしいのでしょう。舌の上で天使が踊っているような幸福感……っ」


 パルメダさんは少し独特な食レポをしながら、恍惚の表情で頬を押さえている。

 俺と違って、『蕩けた顔』が実に似合う青年だな。……これが格差というものか。


「美味しいね、ツァネル姉さん」

「そうだな。これは本当に……本当に美味いな」

「姉さん、口元に蜂蜜がついてるよ」

「む……? ここか?」

「もう、ここだよ!」


 リズベスさんとツァネルさん姉妹は笑い合いながらパンケーキを食べており、その様子を見ていると胸のあたりが温かくなった。……家族仲が良いのは、いいことだな。


「……うおっ」


 なんとはなしにルティーナさんの方を見た俺は、小さく声を上げてしまう。

 パンケーキが大量に盛られていた彼女の前の皿は、もう空っぽになっていたのだ。

 彼女は悲しそうな顔で、空になった皿を見つめている。

 ……あれは明らかに、まだまだ入るという顔だな。


 ──待てよ。

 護衛の任がはじまってからのルティーナさんの食費って、俺持ちになるのか!?


 パルメダさんとルティーナさんの護衛としての給与は、アリリオ殿下が持つことになっているが……。

 アリリオ殿下の方を見れば、ばちりを目が合う。

 俺が声に出さずに『食費』と口をぱくぱくさせると、それを読み取ったらしい殿下ににこりと柔らかな笑みで返された。

 ……これは、食費は俺が工面しろってことだな。

 ここまで世話になったのだ。食費くらいは仕方ないか。

 ルティーナさんほどではないとはいえ、パルメダさんもよく食べる。

 狩りをしたりで、ある程度カバーするしかないのかな。

 幸いなことに、この世界の魔物は食べられるものが多い。俺に戦闘能力はないが、習えば罠は仕掛けられるだろう。それに食事の量を増やすためと言えば、護衛二人も狩りに協力してくれる……はずだ。はずだよな?

 そうだ。椛音に旅先で狩った魔物を融通してもらえないかな。あとで相談してみよう。

 そんなふうに思考を巡らせていると──。


『ぐるるるるるるるる』


 と、大きな音が食堂に響き渡った。

 音の方を見れば……顔を真っ赤にしたルティーナさんがいる。

 もしかして今のは、彼女の腹の虫か!?

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