表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/77

もう一人のリク




---


リクが崩れ落ちるように膝をついたその瞬間――

背後に、呻くような声が響いた。


「……よくも……よくも……私の理想を……!」


Dr.オーダ。

顔は血に塗れ、片腕は千切れ、装甲の下から覗く機械と肉がむき出しになっている。

それでも、なお立ち上がる彼の目には狂気と執念だけが残っていた。


「人類は愚かだ……私は……それを正そうと……!なぜ貴様らは……!」


オーダの手に再び魔力が灯る。

今にも巨大なコラプサー兵器を再起動しようという気配。


だが、立ちふさがったのは、カイ。


「……もう終わりだ、オーダ。お前の理想は誰も救わなかった」


断誓のカゲヨロイ。

その漆黒と光の鎧が、最後の輝きを放つ。


背後では、エルナとノクスが、かつてない力をカイへと託していた。

エルナの魔力の残滓、ノクスの影を通じて送り込まれる補助。


「これが俺たちの……総力だ!」


カイが跳ぶ。


オーダが魔力を放つ。無数の光線と破滅の術式がカイを襲う。


だが、全てが断ち切られる。


カイの身体はすでに武器であり、信念そのものだ。

そして最後の技が、今、放たれる。


「――零式奥義・命誓還影めいせい・かんえい……ではなく」


「――無刀解・魂断穿むとうかい・こんだんせん!!」


光と影の奔流が、一直線にオーダを貫いた。


彼の身体は空中で弾け、コラプサーの核が砕け、理想を唱える声が、霧散する。


「……あぁ……私は……完璧だったはず……なのに……」


言葉と共に、オーダの肉体も、音もなく崩れ落ちた。


沈黙。

世界に、静寂が戻った。



---





---


オーダが崩れ去った後、

静まり返った戦場に、突如として歪んだ空間が現れる。


「来る……!」


ノクスが呟くと同時に、空間の裂け目から現れたのは――


もう一人のリクだった。

だが、その姿はかつての幼いリクとは違い、瞳は深い銀色に輝き、まるで時を超えたような重みと孤独を背負っていた。


「やはり……こうなる運命だったんだね、僕たちは」


崩れ落ちた本体のリクが、かすかに目を開く。

視線が、そっくりな自分自身を捉えた。


「……お前は……」


「僕は、“もう一つの可能性”。オーダによって作られた、でも……君の心から生まれた《純粋な知》そのものさ」


銀のリクが歩み寄る。カイたちは警戒するが、彼は静かに膝をついた。


「君は人間の愚かさを見た。でも、それでも救いたいと思った。僕はその記憶を持ってる。だったら――分かってるはずだ」


「今こそ、一つにならなければいけない。破壊と再生、迷いと覚悟――全部受け入れて、“本当のリク”になるんだ」


リクが、震える手を伸ばす。


「……それで……全部、終わるのか?」


「いや、始まるんだよ。君が本当の意味で“選べる未来”が」


そして二人の手が触れた瞬間――


光と影が重なり合い、眩い輝きが爆ぜた。


融合する記憶、想い、時間。


その中で、カイたちは確かに見た。

まだあどけない、純粋なリクが涙を流しながら、もう一人の自分に微笑みかける姿を。


――やがて光が収まった時、そこに立っていたのは。


「……僕は……リク。すべてを受け入れた、本当の“僕”だよ」


新たなリク。

その姿はかつての少年と同じでありながら、確かな強さと優しさをその瞳に宿していた。



---





---


光が収まり、そこに立っていた“新たなリク”――

だがその瞳に宿っていたのは、慈悲ではなく、冷徹な覚悟だった。


「僕は、ようやく迷いから解き放たれたよ」


その声には、もはや少年の迷いはない。


「人類は、自らを滅ぼすしかない存在だ。愚かさを繰り返し、憎しみで積み上げた歴史に縋るしかない。ならば――僕が終わらせる」


カイが一歩踏み出す。


「リク……それでも、お前は――!」


「カイ、君たちがいたから、僕は最後まで迷った。だけど気づいたんだ。“再生”には“絶滅”が必要だと。この腐った世界を一度、終わらせなければならない。」


彼の背後に、融合した存在から生まれた禍々しいオーラが噴き上がる。

その力は、かつてのオーダすら凌ぐ。


「仙人どもも同じだ。世界の調和を守ると言いながら、誰一人として変革を起こそうとしない。だから、消えてもらう」


すると、空間がねじれ、仙人たちの気配が遠ざかっていく。


「次元そのものを……切り離している!?」ノクスが声を上げた。


エルナが言葉を詰まらせる。「……そんな、リク……本当にそれが……」


「違う、エルナ。これは“始まり”なんだよ」


そして、リクはゆっくりと右手を上げる。


空に巨大な魔方陣が浮かび上がる。

それは世界全体に及ぶ規模の、《浄化》の陣式。


「さあ、終わりを迎えよう。この世界を――創り直す」



---













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ