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カイの決意

風、火、水、土──四つの神殿の試練を乗り越え、カイたちは全ての〈神殿の鍵〉を手に入れていた。神殿の力が呼応し合い、空に四重の光が立ち昇ると、天より五体の光の像──四人の仙人と、かつて姿を見せなかった“中央の仙”が現れた。


石畳に膝をつくようにして現れたカイは、全身に戦いの痕を残したまま、静かに言った。


「俺たちは、仲間のリクを救いたい。彼は今、Dr.オーダの兵器――『コラプサー』に寄生され、次元の彼方へ連れ去られた」


仙人たちは互いに目を合わせ、中央に立つ白衣の男が一歩前に出た。彼こそが、知識の仙と呼ばれる〈シェン=セリオ〉。


「コラプサー……忌まわしき禁術。生命と魔力を喰い、その者の存在そのものを書き換える兵器だ。オーダめ、ついにそこまで……」


「救える方法は……あるのか?」


カイの問いに、シェン=セリオは重々しく頷いた。


「一つだけある。だが、それには“魂の核”に直接触れる力が必要だ。すなわち、精神界に飛び込み、コラプサーに囚われたリクの自我を解き放つという試み……」


「精神界……」


ノクスが眉をひそめる。「まるで夢のような、虚の世界だ。こちらの力が通用する保証はない」


「そこで使うのだ、カイよ」


火の仙人が言葉を継いだ。「お前が土の神殿で得た『神影の装』、その真価をな。捨てる覚悟の果てにこそ、魂の扉は開かれる」


シェン=セリオは、カイの前に小さな刀の欠片を差し出した。


「これは、コラプサーを斬るための概念の剣だ。元の名は失われたが……神影の装が完全に目覚めた時、“お前の覚悟”が名を与えるだろう」


カイはそれを見つめ、静かに右手で受け取った。


「……リクを、取り戻す」


その瞳に宿る光は、神々すらも沈黙させるものだった。




次元の狭間 ― Dr.オーダの研究所


鈍くうねる重力とひずんだ空間の中、リクは鋼鉄の拘束具に包まれて、意識の狭間を漂っていた。周囲は赤黒く明滅する球体の部屋。その中央には、禍々しい脈動を続けるコア装置。そして――その前に、白衣を着た狂気の男が佇んでいた。


「やはり、お前は美しい実験体だ……リク」


Dr.オーダはリクに近づくと、手に持った黒い注射器を掲げた。


「コラプサーの同調率は98%。あと少しで“完全同化”に至る。感情、記憶、魂までもが兵器の一部になる。お前という存在が“兵器の意思”となるのだ」


リクは、うめき声のようにかすかに呻いた。その瞳にはまだ微かに、かつての仲間たちの面影が宿っていた。


「……カ……イ……」


その名を呟いた刹那、オーダの眉がぴくりと動いた。


「……まだ“想い”が残っているか。だがそれも、あと数時間のうちに消える」


彼は床の奥に設置された透明な装置に目を向ける。中には、もう一体、別の肉体が浮かんでいた。


「だが……保険も必要だ。万が一、お前の魂が反逆するようなら……もう一つの“リク”を用意しておいた」


ニヤリと嗤い、オーダは背後の制御盤に手をかけた。


「迎えに来るだろうな、あの少年たちは……その時が、実験の仕上げだ」


そして、歪んだ空間に雷鳴が走る――カイたちの“魂の突入”が始まろうとしていた。



次元へと至る前の静寂 ― 星見の谷にて


旅の果て、五つの鍵を揃え、リクの居場所もついに特定された。

だが、決戦の前に――カイたちは仙人たちの勧めで、霊峰のふもとにある「星見の谷」へと向かった。


そこは、空と地の境界があいまいになるような静けさに包まれた場所だった。谷には星の光を受けて輝く湖があり、空には夜なのにゆるやかな昼のような光が満ちていた。


「……リクは、まだあの中で……戦ってる」


湖畔に腰を下ろしたカイは、砕けた剣の柄を見つめながら呟いた。


エルナは焚き火のそばで湯を沸かしながら静かに答えた。


「彼の心は……まだ闇に沈んでいない。私たちがその“光”を見つけ出す」


ノクスは影に身を沈めながら、そっと地図を広げた。


「オーダの拠点へ続く“次元裂層”は不安定だ。おそらく、行った者は戻れない。……この休息が、最後になるかもしれないな」


沈黙が流れた。


だがその静けさは、決して重苦しいものではなかった。


仲間たちは静かに食事を取り、語り合い、そして夜空に星を探した。そこには、これまでの旅路で生まれた絆と、未来への意志が確かにあった。


カイは立ち上がり、砕けた剣の柄を見つめて呟く。


「明日、取り戻す。仲間も、誇りも、全部……!」


風が谷を渡り、焚き火の炎がふっと揺れた。


星たちは静かに瞬いていた――まるで、これから始まる最後の戦いを見守るように。





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