過去の叡智
場所は、天空に浮かぶ要塞《オーダ・セラフィム本部》——
七人の監視官たちが集う“神律の間”では、巨大な結晶球に映された森の映像が流れていた。
「……確認されたか。未登録のスキルコードが世界に顕現した」
低く、重い声が響く。
「場所は第九区域。辺境の村。使用されたスキルは、推定で3つ。すべて未知の構造。既存の系統に分類不能。」
結晶球の中心部には、少年が右手に炎を灯す姿——リクの姿が映し出されていた。
「これは……創造系、か?」
別の監視官が言った。
声にわずかな恐れが滲む。
「……否。ただの創造系ではない。“創造の起点そのもの”だ。コード指定、《S級危険存在・原式》」
場が静まり返る。
この世界では、すべてのスキルは“世界の根幹コード”に登録された上で使われる。
これは、Dr.オーダが古代の叡智で構築した「スキルコード・ネット」という網のようなもので、スキルを使うたびにその情報が“微弱なコード波”として浮上する。
本来なら、登録済みのスキルはこの波をスルーする。
だがリクのように“未定義かつ創造されたばかりのスキル”は、存在した瞬間に世界コード網の中に“ノイズ”として発生する。
つまり、リクのスキルは使った瞬間に、
『規定外コード発生:コード未登録。分類不能』
という異常信号を世界中に響かせた。
これが、Dr.オーダの“感知結晶”に即座に捕捉されたのだ。
◆ 創造スキルには“観測の痕”が残る
スキルクリエイターの能力は、他のスキルと根本から違う。
通常はスキルを「使う」だけだが、リクは「定義して生み出す」。
そのとき、“世界の法則そのもの”を書き換えるため、時空間に「歪みの痕跡」が残る。
これは、特別な感知役職「時律観測士」だけが検知可能。
──今回、カナル村周辺に観測された“法則の軽い揺れ”が、彼らの注意を引いた。
◆ :過去に“似た存在”を記録していた
Dr.オーダは100年前にも、一度だけ“スキルを創った”少年の記録を保持している。
そのとき、彼のスキルは最終的に時間を操作する能力へと至り、世界にひび割れを生じさせた。
彼は処分されたが、彼が遺した「起源のコード」は監視対象にされており、
今回リクのコード波がそれと類似していたため、即座に“起源級存在”として分類された。
決議と命令
「これは放置できぬ。リク=フォルナは、“世界そのものを書き換える存在”だ」
「処分か?」
「否、まずは確保。“コード抽出”を行う。魂と精神を解析すれば、創造の式を複製できる」
「……仮に拒めば?」
「そのときは——世界に還してやろう」
監視官たちが静かにうなずく。
やがて、仮面の男が膝をついた。
「第六監視官、出撃を請う」
「許可する。対象の排除と回収は、君に一任する」
男は、淡々と立ち上がった。
「創造の起点に、終焉を——」
そして、再び森に、影が落ちた。




