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新たな仲間とカイの力

リクとエルナが静かな広場に腰を下ろし、束の間の休息をとっていると、ひとりの青年が現れた。

長い黒髪に鋭い瞳、旅装を纏った彼は、周囲を警戒しながらも真っ直ぐに歩み寄ってくる。


「……あなたが、“スキルクリエイター”のリクか?」


リクがゆっくりと立ち上がる。


「そうだけど……君は?」


「ノクス。ずっと、君を探してた」


リクとエルナが顔を見合わせる。警戒を解かないまま、リクが問いかけた。


「目的は?」


ノクスは懐から古びた手帳を取り出し、リクに差し出す。そこには精密な魔法陣と構造解析がびっしりと記されていた。


「僕は、魔導構造研究を専門にしていた。だが、ある時気づいたんだ。どれほど理論を積み上げても、世界の根源に触れられる者は少ない。だが君は違う。創造という力を、実際に使いこなしている」


リクは手帳を軽くめくり、その知識の深さにわずかに眉を上げた。


「……ずいぶん詳しいな」


「自分でも、役に立てると思ってる。だから頼む。僕を、君たちの仲間に加えてくれ」


ノクスは、まっすぐにリクを見つめた。まるで、信仰に似た眼差しだった。


その視線にリクはしばらく黙り込んでいたが、ふっと肩の力を抜いた。


「仲間になるってことは、危険の中に身を置くことになる。それでもいいのか?」


「覚悟の上だ。真理に近づくには、現場に身を置くしかない」


エルナが小声でリクに囁いた。


「信じるの?」


「……いい目をしてる。少なくとも、敵じゃなさそうだ」


リクはノクスに手を差し出した。


「ようこそ。ノクス。これからよろしく頼む」


ノクスも迷わずその手を取る。


その瞬間、リクの右手に淡く黒い痕が浮かびかけ、かすかに疼いた。


だがそれに気づいたのはリクだけだった。


(……また、少し濃くなってる。まずいな)


彼の中で静かに進行する異変を知る者は、まだ誰もいない。


その頃、街の外れにある小さな訓練場に、ひとり剣を振るう青年の姿があった。

カイ――仲間を守れなかった後悔と、己の力の限界に苦しみながら、それでもなお剣を握る。


「……俺は、足手まといだった……」


剣筋は荒れていた。リリスとの戦い、ヴィクトールの圧倒的な力。リクやエルナが力を発揮する中、自分は何もできなかった――。


何度も地面に膝をつくカイの前に、ひとりの老人が現れる。


「悔しいか、少年」


「……誰だ」


「名乗るほどの者じゃない。ただの元剣士さ。だが、かつて“スキルを持たない者”として、誰よりも剣にすがった者でもある」


カイは黙って剣を構えたまま、老人の言葉に耳を傾ける。


「お前の剣は、迷っている。自分の力を信じられず、ただ悔しさだけで振るっている。それでは、誰も守れんよ」


「……でも、俺には“スキル”がない。だから、みんなの足を引っ張って……」


「そう思うのは勝手だ。だが――“無能力者”だからこそ、見えるものもある」


老人は、そっと懐から一冊の小さな巻物を取り出す。それは、古代剣術の記録だった。


「この剣術は、“補助魔法”や“共鳴具”を通じて、他者のスキルを刃に変える技術を記したものだ。つまり……他者のスキルを、“剣”として引き出す手法だ」


カイの瞳が、わずかに見開かれる。


「……そんなことが……」


「お前には“創造”も“魔眼”もないが、“魂を預けられる仲間”がいる。ならば、お前の剣は、仲間の力をつなぐ架け橋になれるはずだ」


カイは剣を見下ろし、拳を握る。


(――今の俺にしか、できない戦い方がある)


老人に案内され、カイは森の奥へと足を踏み入れていた。木々の間から微かに見えてきたのは、苔むした石段と、その先に静かに佇む神社。


「ここは古くから、魂の本質と向き合う場だ。お前が“自身の本懐”を問うならば、この社が応えるだろう」


老人の言葉に、カイは静かにうなずく。


鳥居をくぐった瞬間――


世界が、変わった。


景色が歪み、あたりは白く塗り潰されていく。次の瞬間、彼は“内なる世界”にいた。


「……ここは……?」


まるで鏡のような無の空間。そこに現れたのは、カイと瓜二つのもう一人の“自分”。


「お前は誰だ」


「お前の影……迷い、怒り、弱さの化身だ。ここを越えねば、お前は真に何も守れぬ」


偽の自分が構えたのは、血のように紅い剣。


「なら……斬るだけだ!」


魂と魂がぶつかり合う戦いが始まった。


技では勝てない。心でも、互角だった。


だが、カイは戦いの中で“自分が求めていたもの”に気づく。


(俺が守りたかったのは、強さじゃない。――仲間の歩む未来だ)


その瞬間、空間が眩い光に包まれた。


偽の自分は砕け、空に還る。


同時に、カイの額に浮かび上がる“第三の瞳”。それは物理ではなく、魂に宿る感覚。


■授体開眼:《魂為眼こんいがん

――他者の魂の“願い”や“怒り”を読み取り、戦闘中の“意思”を刃に変換する。相手が抱える恐怖、迷い、希望さえも、剣技の一閃へと昇華する。


気づけば、神社の境内。

空が明るくなり始めていた。


「……開いたか。お前の目」


静かに佇む老人の言葉に、カイは目を開ける。


その瞳には、かすかに青い輝き。彼は確かに、魂で世界を見る者となっていた。




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