第12話 収穫祭
村にはすでに多くの村人でにぎわっていた。こんなに人がいるなんて知らなかった...。広場には色とりどりの旗が掲げられ、テーブルには各種の料理が並べられている。村人たちの笑い声や、子どもたちの元気な声が響いていた。
「すごい、こんなにたくさんの人が集まるんだな…」
俺は思わず声を漏らす。
「そうだろ? 収穫祭は村の一大イベントだし、みんな楽しみにしてるんだよ。」
「それに、親子でペアを組んで競うから、俺たちも一緒にがんばらないとな。」
テルラは俺に向かってにっこり笑った。
村長の声が広場に響き渡り、収穫祭の開始を告げる合図となった。
「さあ、みんな! 収穫祭が始まるぞ! 親子ペアで力を合わせて、今年の収穫を見せつけてくれ!」
村人たちの歓声があがり、広場は一層盛り上がる。テルラはヨウマの肩を軽く叩いて、笑顔で言った。ジジィなのにめっちゃうきうきだな。
「さあ、ヨウマ。行くぞ!」
ヨウマは頷くと、テルラと共に広場を駆け抜け、森へと向かう。彼の心臓はドキドキと早く打ち、期待と少しの不安が入り混じっていた。
森の中に入ると、視界が一気に暗くなり、木々の間から差し込む光が幽かな明かりとなる。空気はひんやりとして、気温も少し肌寒く感じる。しばらく進むと、ふとその先に見覚えのある大きな森の空間が広がっていた。
「ホーンピッグ、たくさんいるな…」
ヨウマの目の前には、うねるように大量のホーンピッグたちが集まっていた。これが、収穫祭の目的だったのか。ホーンピッグは猪のような姿をしており、角が生えているのが特徴的だ。普段は危険な存在だが、村人たちにとっては食料源として重宝されている。
「ヨウマ、準備はいいか?」テルラが問いかける。
「え? 準備?? 作物を収穫するんじゃないの?」
「本当に何も知らないんだな! この収穫祭はホーンピッグの収穫祭だ」
マジか。でも、そっちの方が都合がいい。俺の魔法がどこまで通用するのかも気になるところだ。それでもまさか、森の中で動物を狩るために来たのだとは思っていなかった。
テルラはにやりと笑って言った。
「ホーンピッグは狩るのが一番の目的だ。このイベントでは、親子で協力してどれだけ効率よくホーンピッグを狩れるかが重要なんだ。元々ホーンピッグは作物を荒らす魔物なんだ。だからこうして毎年ホーンピッグ討伐を行事として行っているんだ。お前の魔法を使って、少しでも多く獲れるようにしないと、今年の収穫祭での成績が悪くなるぞ。」
「わ、わかったよ...」
俺は気を引き締めた。ここで自分の修行の成果を見せる時が来たのだ。
森の中に足を踏み入れると、ホーンピッグたちがグループを作って食事をしていた。俺はテルラと一緒に近づきながら、慎重に状況を見極める。
「ヨウマ。やれるか?」
「多分。やってみる!!」
俺は鑑定を使った。すると、ホーンピッグたちの位置や、どれが特に食べごろで大きいかが一目でわかるようになった。元々は鑑定は相手の能力を鑑定するスキルだが、位置なども把握できると本に書いていた。使わないと思いながら習得した応用がこんなところで役に立つとは。
「これなら、無駄なく狩れるな」
俺は次に、リフトの魔法で少し浮き上がり、森の中を見渡して最適な位置を見つけた。そして、マナショットを手に取ると、ターゲットを定めて発射した。魔力の弾丸がホーンピッグのうち一匹に命中し、その場で倒れる。
俺は素早く次の動きを考え、リフトを使って高く浮かび上がり、周囲の状況を一望した。ホーンピッグたちはまだ警戒していない様子で、食事に集中している。自分の位置から見て、どのホーンピッグが最も効率的に倒せるか、さらにどのくらいの時間で次を狙うべきかを計算していた。
「次だ!」
俺は心の中で決め、再びマナショットを使った。今度は、別のホーンピッグを狙い、素早く狙いを定める。魔力の弾丸が空気を切り裂き、ターゲットに見事に命中した。そのホーンピッグもその場で倒れる。
テルラは俺の動きを見て、驚きの表情を浮かべた。
「お前、すごいな!本当に魔法を使っているのか?」
テルラはその魔法の威力に驚いていた。
「うん、サーチとマナショットは簡単だよ。」
俺はさらっと言ったが、内心では少しドキドキしていた。父に自分のスキルを見せることは、思っていた以上に気恥ずかしかった。
「それにしても、リフトで浮かびながら狙うのもすごいな。普段の修行のおかげだな。」
テルラは、俺が無駄なくスキルを使いこなしている様子に感心しきりだった。
「じゃあ、次はお前の得意なスキルで効率よく狩るぞ!」
俺は小さく頷き、次のホーンピッグを狙うべく慎重に位置を取った。今度は、リフトを使ってさらに高度を上げ、目標を見つけると、素早く手をかざしてマナショットを放った。魔力の弾丸はホーンピッグに命中し、そのまま倒れる。
「もうあと少しだな、ヨウマ! 頑張れ!」
テルラの声が背中を押す。俺はその言葉に応えるように、さらに素早く動き、魔法を駆使してホーンピッグの群れを狩り続けた。
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