プロローグ
生まれて初めて小説を書きました。見るに堪えないものかと思いますがお許しください。
やる気と時間が確保できたらまた続きを書いてみたいです。
梯子を少しずつ下っていくと、草木がまばらに生えた地面がぼんやり見えてくる。
視線を目の前の梯子に戻す。多くの者に利用され続けたソレは、鉄臭く、かつては金属特有の輝きを放っていたのだろうが、今となっては錆びて、ライトのように赤黒く発光している。
毎度のこととはいえ少々うんざりしてしまう。目にはちかちかと眩しく不快で、上り下りするたびに梯子のにおいが移ってグローブが臭くなる。そして何より問題なのが、毎度毎度の上り下りが面倒なことだ。
梯子を下した地点から地面に到達するまでおよそ2kmほどだろうか。こっちの単位でどれほどかは知らないが。実に馬鹿げた高さであり、こんなもの人力で降りようとする高さではない。が、こっちの者共は気にせずやってのける奴ばかりである。無論できないやつも世界には大勢いるだろうが、そういった人材はこの街には辿り着かない。いや辿り着けない。
こんなに頻回に梯子を上り下りした経験は、小学生の時が最後かな、などど益体もないことを考えながら梯子を下っていると、もう少しで地面に到着しそうになる。何かの競技かと見紛うこのふざけた”移動”をどうにか毎回やれているのは、気が触れるほどに鍛え続けた肉体のおかげだろう。それはそれとして無駄な疲労は極力排除してほしいと思わずにはいられない。
もともと望んで手に入れた体でもない。
エレベーターの紛い物を取り付けてくれなどという贅沢を言うつもりはないが、せめて自動で床が流れるスロープくらあってほしい。
こちらの技術でもできないはずはないが、以前この梯子を作った工房にいた、同僚の彼にそう漏らしたところ「ロマンが分かってねぇ」と一蹴された。ここがバリアフリーになるのは遠い先のようだと感じた覚えがある。
地面まで残り数十段の足場を横着して一気に飛び降りる。着地の際、以前は足裏から全身を伝った痺れに悩まされたものだが、今はうまいこと衝撃の逃がして着地している。「いや普通に最後まで梯子使いなさいよ」と呆れながらそう指摘してきたのは同じ≪荒場屋≫をやっていた彼女だった。
もうそのどちらの声も聞ける日は来ない。
・・・
地面に降り立ってからひと言「ありがとう」と声をかける。自分の体重を支えてくれた梯子に、ではなく梯子のかかる緑がかった岩壁にも似たその肌に。
伝わっているのかは定かではないが、いつもこの言葉をかけることは忘れないよう心掛けている。我々の足であり、街であり、国を滅ぼす存在と言われているソレに向かって。
この行為の源が、感謝を常に忘れない清廉な心故に、という訳ならさぞ外聞もいいのだろうが、礼儀が足りていなかった為にソレの機嫌を損ねてしまい、被害を受けた誰かに後ろ指さされても御免被るためである。ソレの上やら横に住む者たちはみな彼、または彼女、いやそのいずれにも該当しないかもしれない存在に礼儀を欠かさない。
とはいえ自分が荒事屋を始めてから、ソレが暴れたなどということは一度もないため、この不安は杞憂でしかないのだろう。事実ソレによって国が滅びたという記録は、世界のどんな歴史分野の書物にも残されていない。どこの本屋にもおいてある御伽噺コーナーの創世神話となると話は別だが。
梯子を取り付けたソレが離れていく振動を、背中に感じながら、足を進める。既に地面に降りていた数人の同僚達と何となく距離をとって横並びになる。自分は最後に上陸するのがいつの間にか決まりのようになっていた。
100mほど離れた向かいでは数百人の集団が声をあげている。一人ひとりの呟きは小さくとも、数が集まる事でそれは確かなざわめきとなってこちらにまで届いてくる。全員の顔まではよく見えないが、最前列の表情はきっと青ざめたりひきつっているのだろうと推測する。
腰元のポーチに収納されていた小さな短剣を取り出して緩く握る。とある鉱石を研いで持ち手を布で巻いただけのものだが、適当な武具屋から買い付ける得物より余程信頼している。
〈敵〉と呼称するに相応しいような相手にならば只の自殺行為でしかないが、眼前の集団の雰囲気は及び腰、軽い恐慌状態。今度の襲撃先はこの程度で十分だろうと判断したうえでの武器選択である。
敵集団最前列の一人がとうとう堪えかねた様子で悲鳴を上げる。
「間違いない!!あ…あいつ!!真ん中の男!【血塗れ】のブラントだ!!!」
集団のざわめきはより一層大きくなり、後方の動きが慌ただしくなる。恐らく指揮官へ報告の伝達でも言っているのだろう。時すでに遅し、というやつであるが。
横にいる同僚達はニヤニヤとこちらの表情を覗き込むように視線を向けてくる。
血塗れ…生活のため日々黙々と仕事をしていただけで、いつの間にかついたこの不名誉な異名を、自分が気に入っていないことを知っているからだ。
はぁぁ、と小さくため息をついて短剣を逆手に握り直し、姿勢を低くして構える。
「帰りたい…」
荒場屋ブラント・ブルース・ブラッド、転移6年目。齢22歳。今日も己の人生を悔やむ。
なにがなんだかよくわからない、という方が多いかもしれないです。自分もです。
ちょっとずつ「1話のあれってこれね」となっていただけたら幸いです。読んでくれる方がいればの話ですが。