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1.タイトルなどない

 没落した政治家の娘、それが私である。


 だが、そんなことは珍しくもない。


 努力による努力を重ねて、才色令嬢と呼ばれるくらいには成長した。


 しかしそんなことは、詮無きことなのだ。こんなところでは、辿り着けないのだから。


 【必ず殺す】その時まで。


 必ず殺すと書いて必殺、私は必殺技でも、覚えた方が良いのだろうか?


 着眼点は、悪くないと思う。だけど、漫画やアニメじゃあるまいし、我ながら子供ポッい。


 必殺と必勝は似ていると思う。しかし勝つことが目的ではなく、必ず殺さねば意味がない。


 人に害をなす人間の心には、鬼が住むと言われている。


 鬼は外、福は内。鬼は人の隙間に入り込み、不幸を呼び込むと考えられた。


 鬼とは比喩表現であり、その正体は、盗賊などの害なす者への隠語表現が一般的である。


 人間に対する差別的思考から、他者を鬼と呼んだりもする。


 少しばかり昔の話をしよう、不幸を呼び込むと噂された少年の話を。


 家族を不幸にも失くし、親族の引き取り手も死んだ。


 村のボロ小屋に住む、同い年の男の子。彼に石や泥を投げつける村の子供がいたが、何の反応も示さない。


 泥で汚れようが、傷を負うことに自らの感情反応がなく、それを見ている大人は止めようともしない。


「やめなさい」


 見て見ぬふりをすることができず、私はそう口にしてしまう。


 彼の名前は、東京華雫(とうけいかだ。


 華雫は、とても驚いた顔で私を見る。石や泥を投げていた男児の眼も、自然と私に向く。


「コイツは鬼だぞ」


「鬼の味方をする奴も、仲間の鬼だ」


「そうだそうだ」


 石や泥を投げる標的が、彼から私に代わる。


 顔に泥が当たり痛い、彼はよく我慢できるものだ。


 石が頭に当たり、赤い血が頬を伝う、


 私がキッと睨むと、男児たちはたじろいだ。


「お前たち何をやっている」


 やっとこの行為を、諌める大人が現れる。


「ご令嬢様に何てことをしたんだ」


 イジメをしていた子の親は、青ざめた顔をして額を地面につけると、同じように子供の頭を垂れさせた。


「馬鹿な息子が、とんでもないことを致しました。申し訳御座いません」


「子が馬鹿なら、親も馬鹿か。あなた方のことは、お父様に伝えておきます」


「お願いします。何でも致しますから、だからご内密に」


 七夜は呆れた顔で、土下座をする親子を見下ろした。


「変な奴」


 華雫はボソッと呟き、その場から離れていく。


「アンタに言われたくはないわよ」


 プルプルと怒りで震える七夜を、無視して華雫はオンボロ小屋へ帰って行った。


 私は何で、こんな奴を庇ったんだろ。


 華雫を見ていると、危なっかしくて目を離せないのだ。


 何か嫌なことをされて、誰かを頼るわけでもなく、それを受け入れてしまっている。


 私はお節介な人間であり、勝手に首を突っ込む。それでトラブルになったことも少なくはない。


 子供なりの正義感なのだが、ありがた迷惑ということをまだ理解できる年齢ではなかった。

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