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ぬいぐるみにペニス

作者: 雉白書屋

 彼女にプレゼントしたクマのぬいぐるみ。

前から欲しがっていた彼女はかわいい、かわいいって喜んでくれた。

 本当にすごく気に入ってくれて、彼女は僕の名前をつけたんだ。

僕がいないとき、部屋でギュッと抱きしめるって……。

 

 だからかもしれない。

僕の死後、その魂と呼ぶべきものがこのぬいぐるみに宿ったのは。

 とは言ってもまったく動けない。ぬいぐるみだからかな。

だから彼女は気づかないけど、でもいいんだ。

彼女をこうして見守れるのだから……いつまでも……いつまでも……。



「うぃー」


 ……って誰!? チャラそうなその男は!

 いや、まあ、彼女は可愛いしモテるのはわかるけど……いや、早過ぎない?

僕が死んでからまだそんなに経ってないはず……。


 それに、ああ、そんな! きききき、きすを! 僕なんて全然、ああ!


「ん、そのクマのぬいぐるみ、前来た時あったっけ?」


「ん、あん、あれ、好きなブランドのやつ」


「あー、ぽいね。誰から貰ったの?」


「さぁー」


 ん?


「あー、例の彼氏くん?」


「あ、ああん、ふふっ、多分ね」


 んん? 


「本命は俺だもんね。はははっ、悪い女」


 え? は? 二股!? そんなの……ひどいじゃないか……うぅ……。


「あん……ねえ、どうしたの?」


「いや、なんか気になってさ……」


 呪ってやるよ……くそくそくそ……。


「あのぬいぐるみが?」


「ああ……なんか、変な」


 気づいたって遅いぞ……ゆるさない、うっ、ゆるさなぃ……。


「ほらぁ、いいから、しよ? ほーら、ほらほらぁ」


「ん、ははは、わかったわかった脱ぐからさ……ん?」


 ゆる、ゆる、ゆるさない、うううぅぅ、はぁぁう、あ、あ、あぅぅぅ。


「ねえ、どうしたのー?」


「あ……あれ」


「な、なに……?」


 く、くぅぅぅ、う、う、う、う、は、はぁ、はぁ、うぅぅ! うううぅぅぅ!



「……あ、あは、はははははははっ! ほらぁ! 見てみろよ!」


「えー? うわ、なにこれ」


「これ、くくくくっ、こいつ、ペニス生やしてるよ! はははははははっ!」


 うっ、え?


「うわなにこれー。ちっちゃ、キノコ?」


「はははは! 掃除してないのかよ、はははは!」


「してるよ! もー、ホント最悪これ……」


「はぁーあ、ふくくくく、これくれた客がなんか擦り付けてたんじゃないの」


「うえー、マジ最悪、誰からだったかなぁ。マジで思い出せない」


 え? 客? でも僕のこと彼氏って言ってくれたよねぇ!


「把握しなきゃダメでしょ、それじゃナンバーワンになれないよ?」


「はいはい、アンタもね」


「うへぇ、でもこいつ、お前の裸見て興奮してるのかな」


「バカ。するわけないでしょ」


 まぁさっきからしてるし、なんなら仰る通り、擦り付けたこともありましたけども……。


「はぁーあ、笑った笑った。いやー男だね、こいつ」


「女の子よ! はぁ……メイニーちゃん……」


 僕の名前は!?


「で、捨てんの?」


 え、やめて! お願い!


「うーん……限定品だしなぁ……」


「いいじゃんいいじゃん、このペニスくま。こいつサイコーだよ」


 おふぅ! お、お前が触るな! ……って感覚あるんだ。

 彼女が愛でてくれないかなぁ、へへへ……ってそんなこと考えている場合じゃない。

お願い、お願いします! 捨てないで! お願いお願い!


「ペニス言うな。でもやっぱ捨てないでおこうかな」


 よぉぉぉし! ふぅー、まったくもう……。


「はーあ、おもしろ……ん?」


「今度は何よ?」


「いや、これ、あ。こいつの目の部分、これ、カメラだ」


「え……」


 あ……いや、あのですね。へへへ、そのまあですね。好きすぎるあまりと言いますか

ちょっとした好奇心と言いますか、生態を知りたかったと言うか

決して、やましい気持ちは、ええ、この先もね、大事にしてほしいと言いますか。

ええ、このペニスちゃんもね、そう、言わば男の魂ですからね、ええはい。

引き続き可愛がっていただいてね、ええ、ニギニギとぜひ、あ……包丁なんて握って何を……。

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