第三話 神秘!草原に住まう魔獣!
主人公初テイム回です。
テイムするためにアイテムを採取するって言っても、やり方がわからない。そんなあなたには、チュートリアルクエスト「採取をしてみよう」がオススメ!というわけで、クエストを開始する。
「現在持っている道具で採取可能な物は、植物や石のアイコンが表示されます。アイコンをタップすると、採取に使用する道具がわかります。」
らしいですよ、採取できるやつはアイコンが出るって覚えればいいか。チュートリアルしたばっかでなんも持ってないし、素手で拾えるやつだけ集めるとしようかな。パッと見だと木の下とか、草むらに紛れてるな。アイコンが出てるってことは、素手で採取可能なわけだ。
どれどれ、これはリンゴかな?草原リンゴね、そのままでバリエーション出すのを見据えたネーミングだな。草食のモンスターとか、小動物みたいなモンスターに使えそうだな。草むらの方は、石、ただの石。
まあただの石も需要あるよな、今の僕には全く必要ないけどね!近くの草むらにもう一つ、こっちは微薬草か、まさに序盤の薬草的な名前だ。薬草はテイムにも使えそうな雰囲気があるし、いい感じだな。
肉食っぽいモンスターを狙うなら、それこそ肉とか欲しいんだけどなんか狩らなきゃいけないよなぁ。スモールラット、肉落としてくんないかな。戦い方もわかったし、落としてくれると楽なんだけど、ネズミ肉なら蛇とか鳥とかが食べそうだし狙ってみるか。
というわけで、ネズミ狩りを開始します!飛び込んできたら、ブン殴る。吹っ飛んだら、撃つ。この繰り返しでノーダメージで勝てるはず、多分。草むらに隠れられる大きさなのだけ注意して、自分から発見する意識を持って動こう。
おっと、早速発見!落ち着いて飛びつきの予備動作を見る、ジャンプと共に、「フンッ!からの、バン!」よしよし、考えた戦法が通じることがわかったのは大きい。
そして繰り返しで倒す、今回のドロップは皮と牙か、肉のドロップはないのかな?もしくは、解体用のナイフみたいなのがないとドロップしないとか?いくつか考えられる要因はあるけど、単にドロップ率が低いだけで普通にドロップする可能性も大いにあるし、もう何体か狩ってから考えよう。
軽く採取と狩りをしながら草原を散策すること数十分、草原リンゴ7つ、微薬草5つ、石ころ12個、ネズミは6体ほど狩り、毛と牙に皮をメインにたまに尻尾がドロップした。
肝心のネズミ肉はなんと3つも手に入った、単にたまたま最初の2体で手に入らなかっただけだったらしい。アイテムも結構集まってきたし、ノーダメージで狩りが出来たから体力も回復したし、いよいよテイムするモンスターを探しに行くか!
あ、その前に「採取をしてみよう」の報酬受け取っとこう。報酬は、採取用手袋か、装備して採取するとごく稀にもう一個追加で手に入る、ちょっと嬉しい効果だな。今なんも装備してないし着けとこ。おっ、クエストの経験値でついにレベルが上がった、ゆるっとやってたとはいえ結構かかったな。あんまMMOとかやったことないけど、レベル上がりづらいみたいなのは聞いたことあるから、このゲームもそうなんだろうな。
さて、気を取り直してテイムするモンスターのことを考えよう。草原を数十分歩いて、まぁまぁな数のモンスターをみたけど、その中で1番強そうで見た目も好みだったのが、ワシみたいな猛禽類のモンスターだ。スモールラットを攻撃してるところ見たし、ネズミ肉が効果を発揮してくれそうだな。
それにしても、食物連鎖も再現してるのを見た時は結構驚いたわ、流石に惑星を名乗るだけはあるか。キャッチコピーも「異星のリアルを体験しろ」だったし、ゲーム的な不便さを減らしつつ、リアルさを追求するのが上手いなぁ、思わずどっかの評論家みたいなこと言っちゃったもんね。
とにかく、テイムするモンスターはワシっぽいやつに決定!草原で飛んでる肉食は多分アイツだけだし、割とすぐに見つかるはず、いざ出発!
草原を走り回ること数分、早速発見しました、仮称草原ワシ。ん?なんかさっき見たやつと色が違うように見えるし、なんだか強そうなんだけど。ネズミ1発で仕留めるとかできてなかったじゃん!もしかして、僕がさっき見たやつの上位種というか、レアモンスター的なやつじゃないの?ドラ○エでいう転生モンスターみたいな。
テイムするんなら、せっかくなら強い方がいいのは間違いないんだけど、初っ端から明らかに強そうなのは避けたいんだけどなぁ。まだレベル3なんだよ?貧弱なテイマーだよ、すぐ死んじゃうよ。やるだけやってみるけどさ!さてと、テイムスキルの発動方法は頭で考えるか、口に出すかだよな、最初だし確実に声を出していこうか、せっかくのゲームなんだ、ハッチャケて行こう!
「テイム、発動!」
と叫ぶ。すると、
「スキル、テイムの発動を確認しました。これよりテイムのチュートリアルを開始します。」
というテロップが、僕とワシの間を占拠する。と同時、半径50メートルほどの淡い水色のドームが僕とワシの間、ちょうどテロップを中心として現れる。相変わらず派手なチュートリアルだな。
「テイムスキルを発動すると、モンスターとの距離やモンスターの大きさを基準として、余裕がある大きさのドームが形成されます。」
あ、今回はチュートリアルの演出じゃなくてスキルの効果だったのか。
「このドームは、外部からの侵入や攻撃を阻み、スキル発動者とスキルの対象となったモンスターを隔離します。」
もしかして、相手と完全にタイマンしなくちゃならない感じ?流石にテイマーじゃ厳しい気がするんだけど!
「スキル対象のモンスターが、発動者に戦闘での勝利を望み、一対一と指定がない場合、テイムモンスターやパーティメンバーもドームに入ることが可能となります。」
それなら良かった、って言い切ることも出来ないなぁ、一対一って指定してくる可能性があるんだよね。パーティメンバーも戦えるってことだけど、テイムに成功した場合ドロップアイテムとかどうなるんだろ、ドロップなしだったらパーティ組んで貰えなくなりそうなんだけど。
「パーティを組んで戦闘を行い、勝利しテイムに成功した場合は、数は減りますがドロップアイテムはパーティメンバー全員に入ります。」
さっきから思ってたけど、チュートリアルの文章がこっちの疑問に答えてない?フルダイブって、思考を読み取ってるわけだし不思議じゃないんだろうけど。
「デフォルトの設定では、プレイヤーの思考を読み取ることによるチュートリアルが、許可されている状態になっております。思考が読み取られる状態が嫌でしたら、このまま設定を変更することが可能です。」
ちょっとビックリしたけど、こっちの疑問に答えてくれるのは便利だから、設定はこのままでいいや。
「では、設定を変更せず続行いたします。テイムスキル発動時に形成されるドームですが、悪用を防ぐためテイムスキルは、ほとんどの状況下でキャンセル不可能な上、テイム成功した場合、契約をしないことも不可能になっております。」
一回始めたら、すぐにやめるみたいなことは出来ないし、契約解除は出来ない上、同時契約数に制限があるのに、テイム成功したら契約をしなきゃダメ、と。まあ、テイマーだけどんなに多くの敵が来ても一対一にしてやり過ごせる、ってなったら強すぎるもんなぁ。これは納得のいく制限だな。
「モンスターによる、テイム成功条件の提示は最初に行われます。」
「ウィンドホーク、テイム成功条件、一対一での勝利」
へー、こいつはウィンドホークって言うんだ。名前がわかると、何をしてくるか想像できるしちょっと有利だな。ホークってタカとワシどっちだっけ?多分タカかな?そもそもタカとワシの違いってほぼないんじゃないっけ。
それはさておき、これから一対一するんだから、そんぐらい教えて貰わないとほんとに無理だけどね!テロップの流れが止まったな、次のチュートリアルはテイム成功後かな?じゃあ今回はもう出てこないかもね。
最初っから強そうなのを狙ったのは確かだし、一回挑戦しようとも思ったけど、いざとなると怖い!しかし、どうやらウィンドホークくんは待ってくれる気は全くないらしい。もしかしてネズミ肉とってきた意味なかった?いや、気を引くくらいなら出来るかもしれない、ポジティブ思考で行こう。
って、うおっと!さっき待ってくれないってって言ったばっかなのに長々考えてたから、普通に攻撃してきた!なんか風で石持ち上げて投げて来たな、風で直接攻撃ってよりは物理的なエネルギーを利用するタイプか。
とにかく、攻撃を当てなきゃ話にならない。未だにガンガン石投げられてるけど、MP消費もあるだろうし無限じゃないはず、攻撃が切れたタイミングで1発入れるか。近くの木々の影に入りながら移動する、走り続けておよそ30秒ほど、3本目の木に隠れた辺りで連続攻撃が止む。
今だ!1発入れる。バン!単発式ライフルが発射され、弾丸はウィンドホークの胴を貫く。どれほど効いたのか確かめるために、頭上のHPバーを確認するが1割も削れていない。ウィンドホークはあまりダメージを受けた様子を見せず、緩やかにこちらの方へ飛んでくる。
遠距離攻撃が当たらなかったから、直接襲いかかろうってことなんだろうが、いかんせん自分が銃を使う都合上近づかれたらキツイ。意図してるのかしてないのかわからないが、こっちに不利な戦闘に持ち込まれることになる。ウィンドホークが、爪と嘴に風を纏わせて急降下してくる。
ただの服でしかない初期装備の自分では、直撃すれば1発耐えられるかどうかも怪しい。回復アイテムはポーション1つに、微薬草が5つ、即死しないように常にHPを全快にしておきたいことを考えるとかなり心許ない。
ウィンドホークの急降下を横に転がってかわす、風属性かつ鳥系モンスターのくせにこいつはスピードが遅い。遠距離攻撃手段がなければ、相手の攻撃に合わせて殴るしかなかったんだろうが、幸い自分の武器は銃だ、急降下突撃に失敗して地面に足をついているウィンドホークの頭を撃ち抜く。
ウィンドホークのHPバーが9割を切った、一撃が重い単発ライフルにしては削れていないが、明らかに強敵に見えるウィンドホークに対してのダメージだ、十分効果的だと言えるだろう。急降下突撃が失敗したどころか、反撃まで食らったウィンドホークは、その立ち回りを大きく変える。
深く考えず連射していた石の射撃を、こちらの進行方向を予測して撃つようになり、動きが止まったところに急降下突撃をするようになった。急降下を確認した瞬間に、急いで横に跳ぶことで避けるが、反撃の余裕がなかなかない。
急降下、跳ぶ、急降下、跳ぶ、急降下、反撃!よっしゃ、運良くまたヘッドショット!2度目のヘッドショットに、ウィンドホークも堪らずひるむ。
さらに近づき、ほとんど銃口に頭が接しているような距離で発砲。これで3連続ヘッドショット、ウィンドホークのHPバーが7割を切った。ウィンドホークはまた攻撃手段を変える。急降下での一撃を狙うのではなく、完全に地面に降りて体に風を纏い連続攻撃を開始する。
普段空を飛ぶ鳥とは思えない華麗なステップで攻めてくる、体を捻りながら左右の翼ではたくように連撃を行う。右、左、左、右からの少し跳び上がっての蹴りつけ、小石をいくつか風で持ち上げると、翼で仰ぎ勢いよく衝突させようとしてくる。
翼の連撃は逆の翼側に転がることで避け、蹴りつけを銃で受け止める、小石はライフルを芸のように回してできる限り弾く。ぐあー!キツすぎる!HPもう半分行きそうなんだけど!攻撃の手が緩まったので反撃、右の翼に当たりウィンドホークが嫌がる。
近くの木に走ってスライディングしながらリロード、一回の戦闘で5発使ったのなんて初めてだよ、戦闘中にリロードのタイミングを図るのまだ難しすぎるんだけど。一旦木を盾にして回復する、ポーションで9割まで回復し、微薬草を一つ口に突っ込み全快する。
木に小石が幾つもぶつかる音が響く、音が止んだことを確認して飛び出す、予想より2メートル近い位置にウィンドホークがいたが、反応される前に射撃。また右の翼に命中する、これなら翼の部位破壊とか狙った方がいいのか?某狩りゲーみたいに部位破壊とかあるのかわかんないけど、リアルを追求してるなら、被ダメージの大きい部位が性能落ちるのもありそうなもんじゃん。というわけで、こっからは右の翼を執拗に狙ってみるとしようかな。
また、さっきの連撃を受け切らなきゃ行けないのか、ふー、気合い入れていくぞ!翼による殴打がくる、右、右、からの一回転してさらに右、後ろ向きで砂を蹴り上げ、風で巻き上げさらに砂を舞わせる。視界を遮り、静かに宙へ浮かぶウィンドホーク。
視界を遮られたことに強い警戒を抱いて、すぐに距離を取る。強風を纏った爪が、地面に大きな跡をつけ突き刺さる。ウィンドホークくん、かなりキツい連撃だったけど爪がガッツリ刺さっちゃって、動けなさそうじゃないか。
ウィンドホークから見て右側に回り、翼に当たっても頭に当たってもいいようにすると、しっかり構えてこの銃で最速の連射を行う。最速でも数秒に1発しか出ないが、3発は命中した。
2発は翼、1発は頭に命中する、単発火力の高いライフルが合計で4発も当たった右の翼は、羽根がいくつも抜けて血が滲んでいる。あの翼で自由に飛ぶことは難しいだろう、と誰でも考えるような見てくれだ。HPバーも4割を切った、そろそろ終盤戦に突入するといったところか。
装填されてる銃弾は後1発だけ、ウィンドホークが体勢を立て直す前に、最後の1発も叩き込んでしまおう。銃声が響いた時、ウィンドホークの右目から血のエフェクトが吹き出した。
ラッキーショットだな、ゲーム的な面で見ても、ずっと右目が見えないなんてことにはならないだろうが、もうすぐラストスパートだ、十二分に有利を築けただろう。今の1発でHPバーが3割まで削れる、目は頭より更に弱点らしいな、動物なら大体そうか。
ウィンドホークの雰囲気が一気に変わる、荒々しく獰猛な風は敗北の危機に澄み渡る。自分に相応しくない弱者を篩い落とす腹積りだった草原の王者が、真に主人と認められる存在かを見極める戦士に切り替わる。
契約審議の決闘は死ぬまで続くことはない、あと一撃で勝負が決まる。王者が騎士として跪くか、未熟な魔獣使いが塵と消えるか。傷つき自由に飛べない翼に、無理矢理風を送り浮かび上がると、自らの許容量を超えるほどの追い風を産み出し、草原の王者が目で追うことが難しいほどの速度で魔獣使いに突っ込む。対して、魔獣使いは考えていた。
うーん、これは明らかに必殺技って感じだな。身体中が緑色に輝いてるし、鉤爪はもはや見えづらいくらいに光り輝いている。さて、これは確実に突っ込んでくるやつだな、それならやることは1つ。銃身を持ってバットのように振り切り、ぶっ飛ばす。
最初の戦闘から今まで、ずっとやって来たこの戦法で勝ちをもぎ取りに行く!こんな戦法、肝心のテイムモンスターが出来たり敵が強くなったら出来ない、ここで最後の1発だ。銃を撃つのと同じくらい、バットにして殴って来たんだ、そう難しくないはずだ。
風が吹く。翠緑の閃光が一人佇む男に対して、一直線に迸る。閃光が男を男を貫くかと思われたその時、ガッキーーンッ!と小気味いい音が響いた。たった一回の衝突ながら、鉤爪は弾け飛び、ライフルのグリップ部分も大きく曲がる。
損傷を受けたのはお互い様でも、それが身体か道具かでは大きな違いだ。両者、衝突した場所から大きく吹き飛ぶ。先に立ち上がったのは男の方だった。曲がったグリップを握り締め、銃口を倒れ伏すウィンドホークに向ける。そのまま引き金に指をかけるが、押し止まる。
「そういえば、テイムしに来てたんだった、狩っちゃダメじゃん。」
間一髪、自分の当初の目的を思い出した男は、銃をしまうとウィンドホークにゆっくり近づいていく。
「これは、僕の勝ちでいいよね?テイムされてくれるかな?」
と問いかける。ウィンドホークがゆっくりと頷くと、お互いを暖かい光が包み込む。
「ウィンドホーク、テイム成功、出会いの贈り物をすることが可能です」
テイム成功のアナウンスが流れる、それにしても出会いの贈り物ってなんだ?
「出会いの贈り物とは、テイム成功時に対象モンスターに対してアイテムをプレゼントすることで、初期好感度を上昇させられるアクションです。モンスターの好みであるほど、好感度の上昇幅は大きくなります。」
はい、分かりました。つまり、オマケで好感度が稼げるわけか。せっかく取ってきたネズミ肉が無駄にならなそうで良かったよ。テイム成功時に出てきたウィンドウから、ネズミ肉を選択する。
すると、ウィンドホークの目の前にネズミ肉が現れる、それを貪るウィンドホーク、どうやらお気に召したらしい。ふう、これでようやく完全にテイムが完了したか、結構疲れたけどあの強さのモンスターが仲間になるのは心強いな。
「これにて、テイムスキルのチュートリアルを終了します。お疲れ様でした。」
読んでくださりありがとうございます!
励みになりますので、感想や評価等して頂ければ幸いです。
少しずつですが、長く書いていけたらと思います。