第十一話 驚愕!草原を穿つ青白い光!
草原から街に戻る分には簡単だ、奥地のモンスターでなければまず負けないから、そこら辺のモンスターを蹴散らしながら帰るだけ。簡単3分クッキングである。それにしても、初対面のロボと狩りに行くとなった時、結構緊張してたんだけど、いつの間にか打ち解けてたな。気づかないうちに、お互いに呼び捨てになっていたし。
オンラインゲームでガッツリ人とコミュニケーションを取るのは初めてだったから、ちょっと警戒してたんだけど、ロボが良い人で助かった。もちろん、僕からも打ち解けられるように努力してたんだよ?ロボに比べれば、緊張でガッチガチだったと思うけどね。
街に戻ってきてからは、掲示板にメンバー募集を掲載した後、一旦解散した。僕の銃の強化はダンガンさんに頼むし、ロボが来てもすることがないからな。
彼は、どうやらプレイヤーの生産職の人たちから、装備強化を頼める職人さんを探すらしい。革装備なら僕もお世話になるだろうし、ぜひ腕の良さそうな人がいれば紹介してほしいところだ。
考えながらテクテクと歩いていれば、ダンガンさんの作業場に着く。金属なんかが手に入った訳ではないので、強化できるかどうかは分からないが、某狩りゲーのようにモンスター素材で強化できる可能性は十分にあるだろう。
そうじゃなきゃ、この国の初心者向けのフィールドが動物型モンスターだけなのは苦情ものだ。絶対この国の何割かは銃を武器にしてるだろうし。
「おーい、ダンガンさーん!いるー?」
「ああ!いる、いるんだが来客中でな!入っていいから、適当に時間でも潰しててくれ。」
作業場の外から声を掛けてみれば、どうやら来客らしい。入ってもいいらしいので、用事はすぐに終わるものっぽい。
お言葉に甘えて中に入れば、細身でそこそこの高身長の人と話していた。帝国の服装は比較的近代的だが、この人はさらに現代的だ。羽織っているのは革ジャンそのものだし、髪は剃りこみや刈りこみの入ったパンクな感じだ。
「すいません、ご用事の最中なのにお邪魔してしまって。」
「別にいいよ、もう用事は済んだし。」
返ってきた声は、意外にも女性のものだった。確か、このゲームはリアルと違う性別は基本的に選べないはずだし、昔のMMOのようにネカマだとかは無いはずだ。ちなみに、いわゆる心の性別が体の性別と異なっている人は、リアルと違う性別を選べるらしい。配慮が行き届いてるゲーム、ということなんだろうな。
「ねえ、モンスターの背中に要塞建てたいって言った人って、あなたのこと?」
突然、僕の目標の話が彼女から聞こえたことに驚き、ダンガンの方を見る。苦笑を浮かべている様子を見るに、話したのは彼で間違いなさそうだが、彼自身の目的からしても僕に不利益になるようなことはしないはずだ。
それに、彼女の口ぶりからして、僕の名前や特徴まで話していたわけではないようだし、目的達成の目途が立ってテンションが上がり話してしまった、くらいのものだろう。
「はい、そうですけど。なにか御用ですか?」
「へー、面白いこと考えるね。良ければさ、パーティ組まない?これを選んだことに後悔はないけど、強く使えるならそっちの方が良いじゃん?」
と言いながら、作業机の上に置いてあった大砲を手に取る。明らかに重量感のすごい大砲を、引きずるように持ち上げる姿は、不思議と様になっていて、思わず見入ってしまった。しかし、これでこの女性がここにいる理由も、パーティメンバーに立候補した理由も分かった。
言ってしまえば、ダンガンの目的の搭乗者バージョンだ。もしくは、砲撃手バージョンとでも言おうか、モンスターの背中に要塞が建てられれば、そこに彼お手製の兵器が搭載される。それらを撃つなり、要塞という環境で彼女の持つ大砲を思う存分に撃ちたいのだろう。
「なるほど、丁度僕もパーティメンバーを探していたところなので、もう一人のメンバーとも会ってもらって決めましょうか。それと、自己紹介をお願いできますか?まだ、お互いハンドルネームすら知りませんよね?」
「確かにそれもそうか。私はハルシュレイ、メインが魔砲使いでサブが魔弾師の後衛アタッカー。ここにいたのは、魔弾師のチュートリアルのため。とりあえず、よろしく。」
ん?なんで魔弾師のチュートリアルでここに来るんだ?名前からして戦闘系ジョブなんじゃないのか?仮に生産系ジョブだったとしてダンガンは、銃器職人なだけじゃなく、整備士でもあり、魔弾師でもあるってことになるよな。
「ハルシュレイさんですね、よろしくお願いします。僕はフォート、テイマー兼整備士をやってます。パーティメンバーになるかは分かりませんが、よろしくお願いします。」
ハルシュレイと名乗った女性に、自己紹介を返す。というか、魔弾師が気になってたけど、大砲使いなのに魔法使いって言ってなかった?と疑問に思ったので、素直に聞いてみる。
「あー、音で聞くと分かんないか。魔法の『魔』に大砲の『砲』って書いて魔砲使い、MPを弾にして大砲を撃つってわけ。実物の砲弾も撃てはするけど。」
つまり、魔法の砲弾を放つのが魔砲使いで、魔弾師は恐らく大砲に装填する砲弾なんかを作る生産系ジョブってことになるのかな?
「その認識で、概ね間違いありません。補足ですが、魔弾師は銃系統の武器の弾薬も作成可能です。また、初期取得可能なジョブは、メニューからいつでも確認できます。」
と、聞き覚えのある音声が流れる。思考の読み取りによるチュートリアルを許可していたので、今の疑問にも答えてくれたらしい。
それにしても、魔弾師は銃の弾薬も作成できるのか、このゲームの銃は通常の弾薬は無限だけど、なんの効果もないからな。特殊効果付きの弾薬があれば、僕本体の攻撃力もアップするだろう。
「あ、忘れるところだった。ダンガンさん、武器の強化をお願いしにきたんだけど。今ある素材で出来るかな?」
インベントリを開いて、ウィンドウをダンガンに見せる。ダンガンは、ウィンドウから幾つか素材を見繕うと、そろばんを弾いた。
「うーん、これならホーンカウの角を銃身に使えば、もうちょい火力が上げられんな。それと、ブランチウィーゼルの毛皮でグリップ補強すれば、耐久も上げられるか。これなら、割引して500Wでいいぜ。」
そう言われてから気づいた。素材を売らずに来てしまったので、金がない。素直に相談すれば、後払いでも分割払いでも良いとのこと。ライフルをダンガンに預けて、ハルシュレイと共に作業場を出る。
「じゃあ、パーティメンバーのロボにメッセージを送るので、返事が来たら合流する形にしましょう。それまで、とってきた素材を売りたいんですけど、良いですかね?」
「分かった。こっちが頼んでる立場だし、そのくらいは付き合う。」
と、了承が取れたので帝都中央付近の広場近くにある、プレイヤーの出店を回る。今はどこも素材を集めまくっているため、良い値段で売れる。
僕には使い道が思いつかなかった、モンスターの尻尾やらは、筆や刷毛、布系の装備に使われるらしく、これも良い値段になった。
これなら、ライフルを分割払いにすれば、防具も強化できそうだ。お金を取り出してみれば、木貨ではなく紙幣で出てくる。所持金が4桁を超えたのだ。
そうこうしていれば、ロボから返事が届く。彼もこの辺りにいるようなので、広場の方で合流する。
「パーティメンバー候補が見つかったんだって?仕事が早いな、フォート!」
広場に向かって歩いていると、先に着いていたらしいロボが声を掛けてきた。
「そうなんだよ、たまたま装備強化で寄った所に、チュートリアルで来てたみたいでね。僕の目的を知って興味を持ってくれたらしい。」
「なるほどな、取り敢えず経緯は分かった。まずは、自己紹介だな。俺はロボ、メインは拳闘士でサブが気功士の、前衛バランス型だ。よろしくな!」
「私はハルシュレイ、メイン魔砲使いでサブが魔弾師の後衛アタッカー。よろしく。」
ロボが快活に自己紹介をすれば、ハルシュレイが淡々と返す。やっぱり、オンラインゲームってジョブとか役割まで自己紹介するんだな。いや、パーティを組むにあたって必要な情報だからかな?
「へえ、大砲持ってるってことは読み方がややこしい方の魔砲使いだろ?遠距離の単発火力で言えば、トップクラスのジョブだな。」
「そうなんだ、やっぱりロボは詳しいね。ってことは、探してた条件とは一致してるな。」
まあ、魔法の砲弾を放つ大砲使いが、単発火力が低いとは思ってなかったけど、条件が一致してるのは素直に嬉しい。
「後衛アタッカーだけど、今までソロで狩りしてたし防具も更新してるから、足手纏いにはならないと思うけど。」
彼女の言葉に少し驚く。だが、考えてみればスキルの無い僕の攻撃1発で、スモールラットはかなり削れていた。魔砲使いがトップクラスの単発火力なら、ワンパン出来てもおかしくない。
それに、防具を改めて見てみれば、革ジャンということはホーンカウの素材から出来てるんだろう。ホーンカウをソロで狩れるなら、ロボ並みの実力があるのかもしれない。
「フォート、これはかなりの逸材かもな!組んでみて試す必要はあるだろうがな。」
「ロボもそう思う?それじゃあ、一旦お試しで組んでみるということで。」
「そう、お眼鏡に適ったみたいで良かった。じゃあ、フレンド申請とパーティ加入申請送るね。」
そう言って、ハルシュレイがウィンドウを操作する。送られてきた申請を承諾すれば、フレンド欄とパーティメンバー欄にハルシュレイの名前が載る。
「そういえば、防具を更新したって言ってましたけど、どこで買ったんですか?帝国の服は近代的ですけど、革ジャンは初めて見たので。」
「あー、出店で革職人に会ったの。その人もパンクな感じの見た目だったから、革ジャンとか作れない?って聞いたら、これが出てきた。」
どうやら、ハルシュレイの革ジャンはプレイヤー製のものだったらしい。その革職人の出店の場所を聞いてみる。
「さっき通ったとこを、一本路地に入ったとこにあったはず。それと、フォートってロボにはタメ口なんだ。私はゲーム内で敬語使うタイプじゃないし、そっちもラフな感じでいいよ。」
ロボと同様に、ハルシュレイも言葉遣いに厳しくないタイプのようだ。まあ、彼女自身が最初から敬語を使ってなかったから、今回は予想済みだ。それに、僕自身もオンラインゲームとしての距離感というのを分かってきたしな。
「分かった、それなら僕もタメ口で。じゃあ、その出店に案内してもらってもいいかな?」
と問えば、軽く頷いて歩き始めた。彼女について行けば、すぐに出店に到着した。そびえたつモヒカンが立派な、小柄な男性が座っていた。
彼に、防具を更新したい旨を伝えると、何も言わずに革製のロングコートが出てくる。一緒に置かれた値札には、ホーンカウの革3+300Wか1500Wと書かれている。素材を持ち込めばその分お安くなるシステムらしい。
素材込みの方を指差せば、素材と300Wが引かれ、インベントリにロングコートが増えていた。革職人の彼は、無口なタイプらしい。だが、やり取りがシンプルなのはありがたい。
取引が終わり、インベントリのロングコートを確認しようとすれば、今度はロボが買い物をしていた。彼が提示された商品は、革製のパンツだった。膝当てもついており、分厚そうな革で出来たそれは、かなり防御力が高そうだった。
ホーンカウのロングコートというシンプルなネーミングのコートを装備してみれば、当たり前だがシャツの上から着用することができた。胴装備が帝国風シャツになっていたから、ロングコートを着たら脱がされるんじゃないかと危惧していたが、そんなことはなかった。
着用の邪魔にならない形なら、幾つか装備できるみたいだな。まあ、他の装備の着用を邪魔しないものは、大した防御力もないだろうし、問題ないんだろう。
ロボも、早速新しい防具を装備したらしい。足首まである丈のパンツは、ロボの山賊感をある程度減少させたが、ヤンキー感はちょっと増したかもしれない。
防具の更新が終わり、僕のライフルを回収する。銃身が白く滑らかになり、滑り止めや補強にブランチウィーゼルの毛皮が使われている。名前を確認すれば、ホーンライフルと記されていた。
今はまだ、簡単な強化だから十数分で出来ているものの、より良いものになれば時間も相応にかかるものらしいので、武器を預けるならもう一本用意するか、戦闘以外で時間を潰す必要があるみたいだ。
「それと、フォートさんよぉ、ライフルを鈍器みてぇに使うんだったら、自分でも整備できねぇと厳しいぞ。戦闘中でも、インスタントリペアっつースキルなら使えんだから、やばくなったら使ってくれよ。」
そうダンガンに指摘されたので、久しぶりにステータスのスキル欄を開く。
スキル
テイム 召喚 送還 インスタントリペア 整備
思い返せば、サブジョブを取得してからスキル欄を開いてなかった。改めてダンガンから説明を受けると、インスタントリペアは戦闘中、一時的に武器や防具の耐久力を回復させるらしい。
整備はパッシブスキルらしく、機材や道具を使って、本格的かつ永続的に修理などを行うのに補正をかけてくれるらしい。サブジョブの取得クエストのクリア時に手に入っているはずの、整備用具一式を使えば、フィールドでも多少は修理出来るらしい。
そういえば、サブジョブ取得のクエストクリア報酬受け取ってなかったな。クエストの欄を開き、報酬を受け取る。インベントリに整備用具一式が追加され、経験値も手に入った。あっ、今のでLv上がった。
先ほど確認したはずの、新スキル獲得の通知が光っているので、再度スキル欄を開く。
スキル
テイム 召喚 送還 コネクションヒール インスタントリペア 整備
コネクションヒールか、多分テイムモンスター限定の回復スキルなのかな?と疑問に思えば、また声が流れてくる。
「コネクションヒールは、テイマーのジョブスキルです。テイムモンスターだけでなく、プレイヤーの回復も行えますが、回復量は使用者と被回復者との繋がりの強さに依存します。」
繋がりの強さか、テイムモンスターとの繋がりの強さだと、恐らく好感度やなつき度って呼ばれる値なんだろうけど、プレイヤー相手はどうなんだ?
「テイムモンスターへの繋がりの強さの認識は、それで間違いありません。プレイヤーへの回復は、フレンドか否かや、パーティを組んでいるかどうかなど、互いを繋ぐ関係性の数で変動します。基本的に、プレイヤーへの回復は補助的な効果の域を出ません。」
へー、結局テイマーの回復スキルだから、あくまでテイムモンスターの回復がメインで、プレイヤーへの回復はおまけか。だとしても、今のパーティ編成で他者を回復出来るスキルの有無は、非常に大きい。
おっと、ウィンドウを操作していたら、皆を待たせてしまっていたらしい。ライフルの強化代を半分払い、ダンガンに礼を言って、作業場から出る。
「装備も更新できたし、そろそろ狩りに出ようか。2人とも、それでいいかな?」
「ああ、問題ないぜ。消耗品類も買い足したしな。」
「私も大丈夫。どうせ、素材がないと魔弾も作れないし。」
2人から了承を得たところで、帝都の東門に向かう。その道中、先ほど手に入れたスキルについて話す。ロボは驚いたように目を見開き、ハルシュレイは理解を示すように頷いた。
「へえ、プレイヤーも回復出来るスキルがあるとはなあ。回復手段を消耗品に頼っている今の編成には、相当ありがたいな。」
「フレンドかつパーティメンバーだから、現状では回復量が最大っぽいし。」
などと話しながら歩いていれば、すぐに東門に到着した。軽く立ち位置の確認を行い、フィールドに出る。今の編成なら、奥地で戦闘時の立ち回りを試しても問題ないだろう。そう考えて、さらに奥地へ足を進める。
しかし、野生動物に近く凶暴性の増したモンスターたちは、こちらの事情など気にもしない。草原の中程で、草むらから緑色のヘビが飛び出してくる。先頭を歩いていたロボが、咄嗟にヘビを蹴り上げる。
「あとは任せて。」
とハルシュレイが静かに告げた。頷きを返して見守っていれば、彼女が抱える大砲が光りはじめる。砲身に青白い光の筋が入り、駆動音と吸気音の混ざった機械的で魔法的な音が鳴る。
ロボに蹴り上げられ、宙を舞っていたヘビは、柔らかい草で衝撃を吸収するように着地すると、もう一度飛び掛かろうと長い体を縮める。ヒュッ、と大砲の大きさからは想像できないほど静かな砲撃音が響いた。その刹那、
『ガッ!!ズガガガガガガガガガ!!!』
青白い光弾がヘビに着弾した瞬間、その存在を消し飛ばした。だが、その程度で勢いは止まらず、10メートルほどの大きな溝を、草原に穿った。
えー、なんか規模感違くない?僕とロボの戦闘は、もうちょい人間の範疇だったと思うんだけど。これが、単発火力トップクラスの実力ってことか。ロボの蹴りによるダメージがあったとはいえ、ヘビをワンパンしてしまった。
ハルシュレイの方を見てみれば、スッキリしたとばかりに髪をかき上げ、大砲を片手で担ぎ直していた。頭上に浮かぶ青いMPバーは、3割ほど減少していた。あれほどの高火力を叩き出すには、数秒の溜めに加えて非常に大きいMP消費が必要らしい。
背の大砲に寄りかかるようして、MPポーションを飲み干す姿は、見惚れるほどに様になっていた。衝撃的な光景の連続に、呆けてしまっていた頭を振って意識を戻す。
「すごい火力だったね!今の攻撃は、魔砲使いのスキル?」
「違う、今のは通常攻撃。砲弾を魔力で構成して魔力で撃つから、MPの消費が激しい。でも、弾も推進力も魔力だから発射音は小さいし、スキルを使えば軌道を曲げることもできる。」
「ハハッ!なるほどな、溜め時間とリソースの消費を伴う分、圧倒的な高火力ってわけか。リアルなこのゲームでデケえ攻撃見ると、すげえ迫力だな!」
この分なら、雷シカにも痛烈な一撃を加えてくれることだろう。しかも、スキルを使用していない一撃だという。ならば一体、魔砲使いのスキルとどんなものなのだ、と気になった僕たちは、ハルシュレイに魔砲使いのスキルについて聞く。
砲撃の命中率に補正を掛ける砲術、砲弾の軌道を曲げるオービットコントロール、魔力を砲弾にせず爆発させた反動で、後方に移動するバックブラストの3つのスキルがあるらしい。
新たパーティに加わったハルシュレイの実力と、スキルの内容を確認出来た。戦力の上昇は、当初考えていた以上だ。自信を手に入れた僕たちは、ハルシュレイのMP温存も考えて、一気に雷シカに挑むことにした。
道中に現れたモンスターは、僕とロボが省エネで倒しながら進む。まっすぐ進めば、奥地には結構すぐに着く。前回ロボと2人で来た時のように、不意打ちを受けては困るので、不用意に木や草むらには近づかずに探索する。
しかし、警戒しながらの探索はスピードが全然出ない。現状を打破するために、ウィンドホークを騎乗召喚で喚ぶ。ウィンドホークに掴まれて、少し高い位置から辺りを見渡せば、高速で草原を走り回るシカの群れを発見する。
ふと、シカの群れのボスと目が合う。クラップスタッグだ、少し前に僕が敗北したのと同じ個体の。その証拠に、シカは群れの仲間も置いて、全速力でこちらに走ってくる。まずい!このままではロボとハルシュレイが気づく前に接敵し、下の2人は不意を突かれる形になってしまう!
「2人とも!北東方向から、シカが全速力でこっちに来てる!戦闘準備を!」
降りる時間も勿体無いと、空中から声をかける。ロボがこちらを見上げてサムズアップをして、北東に向き直る。とりあえず、最悪の状態は回避できた。だけど、急いで降りなければ、雷シカの射程内に入った瞬間にまた撃ち落とされる。
だが、落下ダメージを受けない程度で速度を出しながら降りるのは、ウィンドホークには難しい。途中まで降りたところで、僕を放すように指示を出す。落下ダメージは受けてしまうけど仕方ない。
「降りてきたか!フォート、あとどんくらいでヤツは来る!?」
「10秒もない!召喚『ウィンドホーク』!」
ロボの質問に答えながら、騎乗召喚で喚んでいたウィンドホークを喚びなおす。落下ダメージの回復に、微薬草を口に放り込みながら、北東を見据える。
圧倒的な速度で草原を駆け抜けて来た雷シカは、目の前で急ブレーキをかけると、何かを待つように僕を見る。テイムを発動しろってことかな、ならお望み通りしてやるさ!
「テイム!」
次回、クラップスタッグ戦に続く。




