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怪奇!VRMMO世界を闊歩する要塞!  作者: キリシマサンサ
一章 VRMMO世界来訪
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第十話 恐怖!打撃、銃撃が響く草原!



 というわけで、ロボと帝都東草原にやってきた。歩いている間に、お互いのスキルについて説明しあった。ロボのメインジョブである拳闘士は、対人戦闘に適した小回りのいい移動スキルと連続攻撃の威力を上げるスキルがあるようだ。サブの気功士の、ステータス強化と攻撃の度に気を増やすスキルと合わせて、殴れば殴る程強くなる、強力なシナジーが発生している。


 ロボも、テイムスキルの発動中にテイム対象1体を隔離できる効果に、かなり驚いていた。確かに、限られた回数しか出来ないことではあるが、クラップスタッグのようにただでさえ強いモンスターが群れを成している場合だと、戦いやすさが段違いだ。


 お互いのスキルの概要が分かったので、実戦で試してみることにした。まずは、お馴染みのネズミ狩りからだ。こいつら相手にウィンドホークを出してしまうと、戦力過多になってしまうし、好物だからか積極的に襲い掛かってしまうので召喚はしないでおく。


 そこら辺を歩いていれば、簡単にスモールラットが見つかる。向こうもこちらに気づいたようだが、ロボに声をかけてからライフルを撃つ。響いた破裂音とともに、ネズミが吹っ飛ぶ。ロボがそれを追うように、ステップを発動し蹴り上げる。クルクルとスムーズな回転をしながら、ネズミは弧を描いて更に吹っ飛び、光となって消えた。野球の次はサッカーかな。


 やっぱりロボの攻撃力は結構高そうだ、LVはお互いに3だし、メイン・サブジョブともに前衛戦闘職だからステータスは相当に高いんだろう。しかし、二人で一発ずつ殴っただけで倒せてしまうと、Lv上げの足しにはなるかもしれないが、連携の練習は出来ないな。そう考えていれば、ロボが提案をする。


「ナイスショット!綺麗に決まったなぁ!けど、一発で倒しちゃ練習にならんな。そしたら、草原の中ほどまで進んで、ウシを狩らねえか?アイツは硬かったし、四足歩行の草食獣だからクラップスタッグの対策も練習出来んじゃねえか?」


 なるほど、僕が出会わなかった東草原中腹エリアのモンスターか。ウシなら確かに簡単には倒れなさそうだし、シカとウシは近しい生物だったはずだ。偶蹄類だか偶蹄目だかそんなんだったよな、記憶が正しければ。


「ウシって、さっき武器強化の素材になってたヤツか。素材としても良さそうだし、Lv帯が近い方がLv上げの効率も良いだろうし、そうしようか。」


「じゃあ、決まりだな!アイツ、ちょっと草原の端の方にいるんだよ。案内するからついてきな!」


 ロボが案内してくれるらしいので、近くの採取ポイントを巡って微薬草や草原リンゴを集めつつ付いていく。



 Lv上げのために近場のネズミを蹴散らしながら進む。少しでもお互いの動きを確認しながら、進みたかったので、道中のネズミはそれぞれソロで倒した。ロボは、僕が銃でネズミをホームランしたのを目を丸くして驚いたあと、大笑いしていた。笑いすぎて、後ろからきたもう一匹のネズミに気づかずに、後頭部に嚙り付かれていたほどだ。


 その後、嚙り付いたネズミを引きはがしたロボは、コンボアタックというスキルを使い、2,3発殴っただけでネズミを瞬殺してしまった。ジョブの違いによるステータス差もさることながら、相手の攻撃にカウンター気味に合わせてノックバックで攻撃を封じる立ち回りも見事なものだった。


 ネズミによる奇襲を受けたことに怒ったような様子だったが、ぶっ飛ばしてスッキリしたらしく、すぐにいつもの笑顔に戻った。機嫌よく歩を進めながら、今度こそ奇襲を受けないように、草むらを注視していた。


 少し歩けば、草原の中ほどに着く。ここに来るまでの戦闘で、軽くだがHPが削られているので、適当に安全そうな場所を探して小休憩をとる。背の高い草むらを避け、見晴らしのいい草原の真ん中に腰を下ろした。


「あー、吹き抜ける風が気持ちいいなー!」


「そうだねー。やっぱファンタジー世界といえば、こういう草原だよね。」


 ロボが、こっちも笑顔になりそうなほど、嬉しそうな声を上げる。ゲームの中なのに、汗をかいていたらしく、風で冷えた汗が涼しさを補強している。ゆっくりHPの自動回復を待っていれば、ロボがどこかを注視していた。


「なあフォートさん、あっち見てみろ。いたぞ、例のウシが!」


 促されるままにロボが指差す先を見てみれば、のんびりと足下の草を食んでいるウシがいた。リアルのウシとそう変わらない体格だが、だからこそ強さは保証されているようなものだ。人間がウシと真っ正面から戦うなんて、普通に考えれば無理ゲーだ。


 HPがほとんど回復したのを確認してから、ロボに合図をしてライフルを撃つ。突如響いた銃声にウシが驚いたと同時、肩口に銃弾がヒットする。痛みに呻いたウシに、ロボが一気に駆け寄り、攻撃を開始した。


「先手必勝ってな!」


「召喚!『ウィンドホーク』!」


 ロボが全線で気を引いてくれている間に、ウィンドホークを召喚する。その間にも、ロボはオーラを纏って連続攻撃を加えている。


 いきなりの攻撃に驚き、無防備に攻撃を食らっていたウシも、怒りに顔を歪ませる。ロボの拳に弾かれた頭を軽く振り、キッと睨みつける。柔らかな草原を掘り返すように、地面を蹴り上げ苛立ちを露わにする。


 その苛立ちを声に乗せ、穏やかな草原に猛牛の咆哮が響く。殴りかかってきたロボに、肩からぶつかるように体当たりを行う。ロボは距離を取ることで避けるも、ウシは正面にロボを捉え、長い角を誇示するように振り上げると、猛然と突進を始めた。


「おっと危ねえ、『ステップ』!」


 これには流石のロボも、スキルを使って回避する。一歩踏み込んだかと思えば、2メートル近くを一気に移動した。ウシは、突進を回避されたことを意にも介さず、土を強く蹴り上げ方向転換すると、こちらに突っ込んできた。


「ウィンドホーク、ウシの横から急降下突撃!」


 ウィンドホークに指示を出しながら、ウシの顔面に向かって発砲する。正面から撃てるので、真ん中を狙えば自然とヘッドショットになる。ウシの顔の表面が弾け、少し勢いが弱まる。そこに、ウィンドホークの急降下突撃が突き刺さる。脇腹を抉るように鉤爪が突き刺さり、横方向からの大きなエネルギーに、ウシの進路は僕がいた方向からも逸らされた。


 誰もいない地点に突進を行ったウシは、急ブレーキをかけて、ゆっくりとこちらに振り返る。その間に、ロボが走って合流してきた。ウシの頭上に浮かぶHPバーは既に半分ほどまで削れており、黄色く表示されている。


「おお、流石の火力と技術だな。もう半分まで削ったか、負けてらんないな!っと。」


 ロボがそういうと、彼の頭上の黄色いゲージが減少する。黄色はSPのゲージだったはずだ。移動したわけでもないし、HPに変化もないからコンボアタックを使ったようだ。


「さあ、俺と殴りあってもらうぜ!」


 そう言い放つと、素早く走り出した。ウシもそれに反応し、ツノを振り回して迎え撃つ。正面から突っ込んだロボは、クリーンヒットを食らわないように細かく位置を調整しながら、切れ目のない連続攻撃を行う。


 ツノを左手で受け流し、首に右フック。返ってきたツノは後ろに下がって回避し、左、右のワンツー。頭突きがくれば、アッパーで顎をカチ上げる。前足での蹴りや体当たりには、空いた腕を防御に回して、体勢を崩させるためにローキックを行う。


 ウシもロボも、お互いのHPバーが削れていくが、ダメージレースはロボがかなり有利のようだ。恐らく、纏気とコンボアタックというスキルの効果だろう。


 攻撃を行うほど、纏う気の量が増えステータスアップとダメージアップする纏気と、連続で攻撃を行うことでダメージとノックバック能力を上昇させるコンボアタックによって、火力を底上げしているらしい。


 纏気によるステータスアップは、耐久力や敏捷性にも影響しているのが、ダメージレースでの有利に貢献している。今や、ロボのHPが6割なのに対して、ウシのHPは2割を切っている。


 ロボの圧倒的な連撃に気押されていたが、彼の戦い方はある程度の被弾を許容しているもののため、素早く戦闘を終わらせた方がいいはずだ。急いでウィンドホークに指示を飛ばし、ロボを援護する。


「ウィンドホーク、風纏いを使って石での遠距離攻撃を!」


 ウィンドホークには、ロボの邪魔にならないように遠距離攻撃をさせる。先ほどの急降下突撃で、SPはほとんど使い切ってしまったし、回復するために攻撃を行う暇もなかった。けれど、魔法系のステータスも高いため、それでも十分ダメージは出るはずだ。僕はウシの横に回り込み、援護射撃を行う。リロードまであと3発残っているので、HPが2割を切ったウシ相手なら、十分だろう。


「「「バン!!!」」」


 銃撃、打撃、投擲を3方向から一斉に食らったウシは、反撃することも出来ずに光となって消えた。カバンのマークが光ったため、ドロップアイテムを入手したらしい。回復のための小休憩をする際にでも確認しよう。


「ロボさん、お疲れ様。まさかウシと正面から殴りあうとは思わなかったから、ビックリしたよ。」 


 最終的にHPが5割ほどまで削れていたロボは、気をHPとSPに戻したようで、HPは8割、SPは全回復していた。


「スキルのシナジーのおかげで、耐久力の低い拳士系の割には、正面戦闘もこなせるんだ。前衛としての能力は十分だろ?」


 ロボは、そういうとニカッと笑った。僕が前衛を求めてパーティメンバーを募集していたので、それに足る人物であるとアピールしたかったのだろう。


「もちろん、まさに求めていた人員だよ。ロボさんと組めて良かった。」


 そう答えると、さらに笑みを深めた。上機嫌そうなロボが、再度の小休憩を提案した。僕がこのウシを倒したのが初めてなので、ドロップアイテムの確認をさせてくれるらしい。


 お言葉に甘えて、ロボがHPを回復している間、自分のMP回復も待ちつつアイテムを確認する。ホーンカウの角、革、尾、ミルクが手に入っている。


 先ほどのウシはホーンカウというらしい、カウということは乳牛なんだろうか。ミルクも手に入ったし、乳牛で合っているっぽい。ツノの大きさとか、気性とかから雄牛だと思ったんだけどな。そう思っていると、ロボが話しかけてくる。


「もしかして、ホーンカウのミルクが手に入って、雄牛だったんじゃ?って思ってないか?」


 かけられた言葉は、まさに疑問に思っていたことについてだった。どうして分かったのか、と表情で聞けば、さらに続けた。


「俺も、ここで狩りをしてて気になってな。フォートさんを見かけたあと、テイマーっぽかったから魔獣総合組合にいるんじゃねぇかと思って、寄ってたんだ。せっかくだから、そこで聞いてみたんだよ。すぐそこの草原のモンスターだし、知ってんだろうなって。そしたらビンゴだったってわけだ。」


 思い返してみれば、ロボは僕の独り言を聞いて探していたと言っていた。それで、テイマーの職業ギルドである魔獣総合組合に行ったと。確かに、帝都付近のモンスターなら全て情報があるだろうな。ゲーム的に、全て答えてくれるわけでもないだろうが、既に倒しているならある程度のことは教えてくれるらしい。


「しかも、ホーンカウのミルクは使いやすい素材らしくてな。料理すればSP回復の料理に、錬金に使えば多少のデメリット効果なら打ち消してくれるらしい。」


 随分な高性能っぷりに驚き、ミルクの瓶をインベントリから取り出して眺める。料理人や錬金術師は、こぞって欲しがるだろう。生産職は良いものを作るほどレベルが上がるらしいし。


「へー、そんな凄いんだ。それなら、Lvが上がるまでホーンカウを中心に狩りをしない?」


「ああ、いいぜ。革素材は、俺もフォートさんもあって困らないだろうしな。それに、もうちょいしたらレベルも上がりそうなんだよな。」


 ロボの了承も得られたので、ホーンカウを探しに辺りを巡る。ネズミを蹴散らしながら進めば、時々ホーンカウを見つけることが出来た。僕も一度戦ったことで、動きを知ったので、余裕を持って勝利を納めた。


 1頭、2頭、3頭とどんどん狩っていく。素材もどんどん集まるし、戦うたびに連携や行動が良くなっていくのが楽しい。


 その上、新しくホーンカウの肉を手に入れた。料理人の知り合いはいないから料理するのは難しいので、試しにウィンドホークにあげてみると、大喜びでついばみはじめた。鳥は飼ったことがなかったけど、感情表現が豊かだと中々可愛い。


 ティマイオスさんから、テイムモンスターは生きているから大事にしろと言われたことを思い出す。単に可愛いので、言われなくても大事にするのだが、忘れないようにした方がいいだろう。そう考えながらウィンドホークを撫でる。


 撫でられたウィンドホークは、嬉しそうに鳴きながら頭を擦り付けてくる。結構デカいウィンドホークが無邪気にじゃれると、バランスを崩しそうになる。


 戦闘中ではないので、騎乗召喚を使用してウィンドホークを召喚しているのだが、モンスターの育成や絆が大事なテイマーにとって、戦闘時の召喚と同じくらい大事かもしれない。


 街中で呼ぶには大きすぎるので無理があるだろうが、こうしてフィールドに出ている時は、できる限り一緒に行動した方がいいかもしれない。


「うーん、まだLvは上がんねぇか。なあ、フォートさん。いっそのこと、奥地で狩りをしねぇか?クラップスタッグに勝つには、奥地の通常モンスターにも勝てるくらいの強さがいるだろ?」


 僕がウィンドホークを可愛がっている間、ステータス画面と睨めっこしていたロボが、そう提案した。


「たしかに。そういうことなら、奥地に移動しようか。」


 ロボの意見は現実的な部分を指摘していたため、すぐに納得して了承した。クラップスタッグにボコボコにされたこともあって、少し怖いが、いつまでもビビってはいられない。


 帝都東草原の奥地へと歩みを進める。僕は2回目だが、ロボは初めて足を踏み入れるらしい。軽く辺りを見渡してモンスターを探しつつ、せっかくなので採取を行う。


 微薬草や草原リンゴを幾つか集めていると、木の()()にリンゴが入っていた。草原の入り口付近でもあった、熟成リンゴだろう。レアアイテムはいくつあっても良いので、早速拾いに行く。


 「うわっ!」


 リンゴに手を伸ばした瞬間、頭上からガサッと音がしたかと思えば、強い衝撃を受けて吹っ飛んだ。視界の端にあるHPバーは半分以下まで減少していた。体勢を急いで整え、奇襲を仕掛けてきた襲撃者に視線を向ける。


 視線の先には、草原の木に紛れる茶色の毛皮を持つ一匹のイタチがいた。本来は可愛らしい顔をしているんだろうが、威嚇に全力が込められているかの如く、鬼の形相を浮かべている。警戒心を露わにしながらゆっくりと木を降りると、庇うように間に割って入ってくれたロボと睨みあう。


「フォートさん、大丈夫か!?とりあえず、こっちで時間稼ぐから回復してくれ!」


 ロボの言う通り、前線は任せてHPポーションで回復する。イタチは、弱っている僕の方を先に仕留めようと、ロボの脇を抜けてこちらに来ようとしているが、手痛い一撃と間に体を割り込ませる位置取りでブロックしてくれている。


「ありがとう、おかげでポーションは飲めた!召喚、『ウィンドホーク』!」


 先ほどまで、騎乗召喚状態で戦闘が行えなかったウィンドホークを、通常召喚で呼びなおす。吹っ飛ばされた時に銃を手放してしまったようで、弱点である僕本体がさらに弱体化してしまった。ライフルは、イタチの隠れていた木の根元に落ちている。


 ライフル⇒イタチ⇒ロボ⇒僕


 という位置関係である、正直言ってめちゃくちゃヤバい。本体の攻撃力がゼロなので、ただのウィークポイントになってしまっている。サブジョブが戦闘系なら戦えたのだろうが、あいにくと生産系の整備士だ。やれることといえば、テイムモンスターであるウィンドホークに指示を出すことだけである。


「ウィンドホーク!イタチの回避方向を限定するように、風纏いで遠距離攻撃!」


 僕が回復したからか、イタチがロボとの戦闘に専念していたため、ウィンドホークに援護を指示する。しかし、ロボとイタチの1対1の状況が続いていたことで、かなり削られてしまっている。練気でステータスを底上げしても、奥地のモンスターとタイマンを張るには、装備もLvも足りていない。


 ウィンドホークが、指示通り1方向を空けて包囲するように攻撃する。最初の数発は、イタチがウィンドホークに気づいてなかったようで、クリーンヒットしていた。その後の攻撃で回避方向を絞られたことで、木の下から少しずつ離れているようだ。


 しかし、イタチは遠距離攻撃を受けながらもロボを攻撃し続けている。中型犬ほどの小柄な体格と、すばしっこい挙動で、ロボも思うように攻撃ができていない。力強く地面を蹴り上げて、全身でタックルを行えば、前衛のロボですら体勢を崩される。


「ロボ!一旦下がって回復を。ウィンドホーク、急降下突撃からロボと交代して前衛に!」


「助かる!『ステップ』!」


 イタチが、ロボの足元に絡みつくような噛みつきを繰り出す。一噛みごとに唸り声が漏れるような、敵意がこもった連続噛みつきを、ステップでかわす。避けられたことに怒り、追撃とばかりに飛び掛かる。


 その瞬間、甲高い鳴き声と風音が響いた。ウィンドホークが急降下突撃で、イタチを地面に縫い止めたのだ。風属性のエネルギーが込められ、翡翠色に光る鉤爪が小柄なイタチを完全にホールドした。衝突時のダメージはかなり大きく、イタチのHPバーは4割ほどまで削れている。


 ウィンドホークがイタチを掴んでいるおかげで、ライフルを回収する隙が生まれた。ウィンドホークは、掴んだまま片足で蹴りを入れたり、クチバシで突いたりと追撃を行っている。それを横目に、地面に放置されたライフルに向かって走る。


 僕の走る音が聞こえたのか、イタチの抵抗がさらに激しくなる。威嚇の声がどんどん強くなり、イタチのHPバーが3割ほどになったタイミングで、ウィンドホークが弾き飛ばされた。


 走りながらイタチを確認すれば、全身の毛が逆立ち、一回り大きくなって見えた。恐らく、硬い毛が逆立つことで拘束に隙間が生まれ、手痛い反撃を受けたのだろう。拘束されている最中も、噛みつきなどで抵抗していたのか、ウィンドホークのHPバーも6割ほどまで削れている。


 拘束を振り解いたイタチの視線は、真っ直ぐにこちらを見ていた。弱い相手を狙う習性でもあるのか、それともウィンドホークに指示を出していたことでヘイトが溜まっていたのか、イタチの目には僕しか映っていないようだ。


 走る、走る、走る。とにかく、ライフルを取りさえすれば最低限戦える。しかし、イタチは非常にすばしっこい。ウィンドホークは速度が低いのが弱点だし、ロボはイタチの噛みつきを避ける際にステップを使用したので、まだクールタイムが明けていない。


 走りながら地面に落ちたライフルを拾うのは無理がある、速度を落とさずに拾うなら飛び込むしかない。イタチの牙がすぐそこまで迫っている中、ヘッドスライディングを敢行する。


 下が柔らかい草の生えた草原のため、衝撃は思ったほどではない。だが、振り返ればイタチは大口を開けて噛みつこうとしていた。落ちていたライフルに辿り着いたのは良いが、銃身が手前になる向きであり咄嗟に撃つことは出来ない。


 しかし、いつものように両手でフルスイングするにも、防御をするにも体を起こさなければならず、それも時間が足りない。考えても良い方法は浮かばない、だが、やるしかない。ライフルの銃身を右手に掴み、振り向く勢いのままに殴りつける。


「Gyaaaa!」


 イタチの呻き声が耳元で響く。ギャーともギアーとも取れる、獣らしい声を上げてイタチは叩き落とされた。図らずも、今回はテニスのストロークのような形になったが、テイマーのステータスから繰り出される片手での打撃は、イタチの命に届く訳もない。


 四足歩行だからか、叩き落とされたにもかかわらず素早く姿勢を起こすと、目を血走らせて飛びかかってくる。が、その背中に石礫が命中する。ウィンドホークは、追いつくことよりも遠距離での援護に舵を切ったらしい。


「ナイス時間稼ぎだ、フォートにウィンドホーク!『ステップ』!」


 飛来した石礫にイタチが怯んでいる間に、ステップのクールタイムが明けたロボが突っ込んでくる。地面ギリギリを掬い上げるように蹴りを放ち、イタチを宙に放り上げる。


「ありがとう、これなら狙える!」


 イタチが描く放物線の1番高い位置に来れば、上へ持ち上げられるエネルギーと位置エネルギーが拮抗し、一瞬動きが止まる。


「Gyeeeee!」


 バン!と響いた銃声と、イタチの断末魔が歪なハーモニーを奏でる。HPバーは砕け散り、イタチの体は光に変わった。どうやら、なんとか勝てたらしい。一気に体の力が抜ける。寝転がったまま、仰向けになる形で射撃をしたので、そのまま構えを解いて大の字になる。


「よっしゃー!なんとか勝てたな!お疲れ様、フォート、それにウィンドホークもな!」


 テンションの高いロボが、全身で喜びを表しながら労いの言葉を掛けてくれた。彼の差し伸べてくれた手を支えにして立ち上がる。


「ありがとう。そっちもお疲れ様、ロボ。」


 ウィンドホークが、柔らかい羽毛の生えた頭を撫でろとばかりに押しつけてくるので、労いながら撫でてやる。


「しっかし、ギリギリの戦いだったなー。まさか保護色で隠れて襲ってくるとは、こういう擬態型のモンスターみたいなのは、もうちょい進んでから出てくるもんじゃねぇのか?」


「たしかに、他のゲームなんかだと慣れた辺りで出てくるのが定番だけど、異星のリアルを謳っているこのゲームだからね。動物型のモンスターが出てくるこのフィールドなら、擬態っていうのは当然の選択肢なんじゃないかな。」


 それに、スモールラットの時点で、草むらから急に飛び出してくる程度のことはしてきたし、野生動物の生きるための知恵なんだろう。


 イタチを倒したので、今度こそ熟成リンゴを採取する。手に取れば、手袋がうっすらと光りインベントリに熟成リンゴが2個追加された。そういえば、そんな追加効果あったな、この手袋。


 リンゴを確認する際に開いたインベントリには、先程のイタチのドロップアイテムも入っていた。ブランチウィーゼルの牙、毛皮、尾の3つがドロップしたらしい。


「なあ、フォートから見て今のブランチウィーゼルってやつは、帯電したシカと比べてどの程度だ?」


 そうなのだ。結局のところ、目標はシカをテイムすること。まだ準備段階ではあるものの、目的地への距離は測っておきたい。


「うーん、そうだね。正直にいえば、あのシカは今のヤツより数段は強そうだったな。」


 シカとの一瞬の邂逅を思い出すが、ウィンドホークが一撃でやられたこと、自分のHPもほとんど削られたのは印象深い。ブランチウィーゼルは、奇襲からの攻撃でも半分と少し削られた程度だった。


「となると、帯電したシカがレアモンスターなら、ブランチウィーゼルは通常モンスターって感じか。装備変更やLV上げだと、ちょっと効率悪いかもな。せめて、もう1人は仲間が欲しいところだ。」


「僕もそう思う。僕らは前衛1、後衛1のパーティだけど、ウィンドホークも前に出られるし、火力の高い人が欲しいね。」


 ウィンドホークは、前回の戦闘で一撃死してしまっているため、シカ相手に前衛としての役割をこなすのは厳しいかもしれない。だが、ロボも僕も単発火力が無さすぎることが気になる。ロボはステータスアップと連続攻撃で、継続火力を出すタイプだ。僕の銃は言わずもがな、スキルの一個もない通常攻撃である。


 現状、僕らのパーティの単発最高火力は、ウィンドホークの急降下突撃だ。しかし、前述のように一撃でやられてしまえば、その火力は無くなってしまう。だから、単発火力の高い人が欲しいという結論に至ったのだ。


「火力の高いヤツか、確かにどんな状況でも役立つしな。でも、フォートが欲しいのは単発火力だろ?この国の人気な火力出るジョブと言や、銃士系になるだろうが、単発火力が高いのはライフル系だぞ?流石にライフル2人は偏ってんじゃねぇか?」


 こうして聞いていると、ロボがしっかりこのゲームを調べていることが分かる。山賊のような見た目に反して、かなりの理論派かもしれない。しかし、ロボの言う通りだ。テイマーの低火力を補うために、単発火力が高いライフルを選んだのだ。この国で単発火力を求めればライフルに帰結するだろう。


 ロボと軽く相談した結果、近接の高火力アタッカーや、少し珍しいジョブの者がいれば、条件には合うだろうから、ドロップアイテムの売却なり装備変更なりをしている間に、掲示板で募集をかけておくことになった。



今話も読んでくださりありがとうございます!

励みになりますので、感想や評価等して頂ければ幸いです!


自分が定期更新に向いていないことがよく分かったので、これからは不定期に更新していきます。

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