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怪奇!VRMMO世界を闊歩する要塞!  作者: キリシマサンサ
一章 VRMMO世界来訪
11/19

番外 格ゲー好き、VRMMO世界に羽ばたく

別プレイヤーの視点です。



 ふう、この格ゲーも結構飽きてきたな。格ゲーは、同じタイトルを何年もやるのが当たり前の世界ではある。だが、ダイブ型のVRが主流になってからというもの、実際に自分が戦うのが怖いって奴や、コンボやら技なんかの概念がガラッと変わったことに上手く適応出来なかったりで、ゲームもプレイヤーも質が下がり気味だった。


 ようやく最近になって、ゲーム会社もプレイヤーも慣れてきたってんで、ゲーム自体の質も上がってきた。まあ、どこの会社のも似たようなモンになっちまって、別のゲームってよりキャラ追加パックを購入したような気分だ。つまるところ、結局はVRに適応しきれてねえんだ。個性を出せるような段階まで、土台が出来上がってない。でも、ダイブ型での体の動かし方や、技を出した時の感覚を理解出来たのはありがたい。他に活かせるからな。


 その活かしたいゲームってのが、新しく出るVRMMO「楽園の惑星」だ。格ゲーが一番好きなゲームジャンルではあるが、アクションRPGの類も結構好きだ、爽快感がある。


 「楽園の惑星」を作ったスターズゲームカンパニーは、事前情報や広告を積極的に出してこなかった。その数少ないプレイ映像や広告の内容が、本当にその通りならゲーム業界の革命だと、ネットで話題になったのが最初だった。リアルで行われた体験イベントで、その圧倒的なクオリティが評価されて史上最高のゲームと呼ばれるようになった。



 「楽園の惑星」のサービス開始一週間前には、初期に選択出来るジョブの簡易的な説明が、公式サイトで公開された。バカみたいなページ数の説明は、読むだけで心が躍ったものだ。ジョブの数が多いのは、いくつか習得出来るスキルが違うだけで、別のジョブになるからだと思う。


 だが、スキルの習得でジョブ依存な部分が大きいらしい以上、ジョブ数が多いのは、自分の思い描いた通りのビルドを目指す上でプラスにしかならないだろう。実際、俺が好きな対人戦に向いたジョブもあるらしい。もちろんそれを選ぶつもりだ。ジョブの数が多すぎて、メインとサブの二つを決めるのに5日もかかっちまったのは誤算だったけどな。


 ジョブもかなり俺を悩ませてくれたが、それ以上に悩ませてくれたのが、スタートする国の選択だ。俺がやりたいのは、対人戦。それはそうなんだが、RPGである以上対モンスター戦もガッツリ楽しみたいし、パーティも組んで戦いたい。


 希望はしっかりある、しかしこれはどの国でも出来るんだよなぁ。あとは地形とか気候で選ぶしかないのか、とまた悩んだ。少し東西に広い楕円形の大陸が舞台であり、綺麗に方角に合わせて作られた8つの国は、地形や気候がそれぞれ特徴的だし、文化もかなり違う。


 和製RPGらしく、日本モチーフの国だけ、かなり異色な雰囲気を醸し出している。その分、何かこだわりがない場合は選ぶハードルがちょっと高いな。色々悩んだ結果、大陸の北西に位置する、銃と機構の国、ミカニス帝国を選ぶことにした。


 帝国だけあって、荒々しさと厳かさが同居した雰囲気があること、大陸最大の闘技場が存在することが理由だ。まあ、闘技場がデカい理由は、戦車やらの兵器が戦うことや、銃を使った遠距離戦が想定された設計だかららしいけどな。


 ふう、このゲームが話題になってからの激動の日々を思い出してたら、もうすぐサービス開始の時間になるな。労働時間の少ない仕事に就いていることを、これほど喜んだのは初めての経験だ。かなり体への負担が少ない姿勢でプレイ出来る、リクライニングチェア型の機体に座り、ダイブを開始する。


 ゆっくりと意識が薄れていく、完全に意識が無くなると思った瞬間、知らない小部屋にいた。小さな机の上の本が、勝手に開いたかと思うと、白紙のページに文字が浮かび上がり、質問をしてきた。


 そういえば、名前考えてなかったな。うーん、よし!ロボにすっか。昔好きだったんだよな、狼王ロボの話。銃と機構の国なんだし、ロボットもいるだろうから紛らわしいだろうが、遊び心ってことで許してもらおう。その他は、事前に決めたことを入力していく。メインジョブは拳闘士、サブジョブは気功士、国はミカニス帝国にしてっと。


 あー、キャラクリかぁ、全然考えてなかったなぁ。戦闘のことばっか考えてたし、格ゲーでキャラクリってあんまないから忘れてたわ。自分の顔や体格を基準に出来るみたいだし、そっから適当に決めちまうか。


 ネットリテラシーも考えて、印象は変わってた方がいいよな。とりあえず髪は赤くして、目も同じでいいな。あとは、元から彫りは深いタイプだから、ちょっと凛々しさを感じる顔にして、イカつい感じは残ったままだが、拳闘士なら雰囲気に合ってるだろ。


 体は元からデカいし、横にデカくならない程度に筋肉質にしよう、時代は細マッチョだ。ゲームなんだし、右肩に狼のタトゥーとか入れちゃお。あっ、目の辺りとか体に傷跡とかつけて、歴戦っぽさも出しちゃうか。


 左腕を機械っぽくも出来る!?そりゃやるしかないでしょ!銃と機構の国だぜ!?なんなら右腕より太くしちゃおう。鈍色で、装飾は少なく無骨な感じで、関節部分は幾つかの鉄板が層になってるような感じにして、のっぺり感をなくす。左肩には、右肩のタトゥーと同じ狼を、色はつけず彫るだけでさりげなく。



 いやー、いざキャラクリ始めたら思ったより自由度高くて時間使っちまったなぁ。これ以上時間かけると、スタートダッシュに遅れちまうだろうし、満足のいくキャラクリも出来たことだし、いざ、異世界!


 歓迎のメッセージが浮かび上がる中、最後の扉を開け放つ。唐突に、人々の話し声や足音の響く、活気溢れる広場に景色が変わる。とりあえず、メニューやインベントリを一通り確認する。設定画面を確認すると、プレイヤーとNPCを見分けるために、頭上にアイコンを出す機能があるらしいので、オンにする。


 人で溢れかえる広場の、似たような格好をした人達は全てプレイヤーだった。初期装備の服だから、今は簡単にプレイヤーだと分かるが、広場を囲うように営業している屋台のNPCも、正直人間にしか見えないし、後々大事になりそうな機能だな。


 よし、下準備はこんぐらいでいいだろ。さっさと職業ギルドとやらに行ってみるとするか。案内によれば、広場の東側にあるらしい。大通りを歩けば、荒くれ者達の怒号や笑い声が遠くから聞こえる。わざわざ探すまでもなく、目的地の建物が見つかった。


 高さがとてつもないってわけじゃない、そりゃ周りの建物に比べりゃ結構高いんだが、それよりも横幅のデカさに目を取られる。あくまでゲームである以上、おそらくこの国の首都であるこの都市も、正直言ってそこまで広くねえ。というよりは、あんな中央広場みたいな顔した初期スポーン地点がかなり都市の東に寄っているんだ。


 だから、あの広場からこの建物まではかなり近い、狭い東地区の中で最大だろう闘技場が広場からでもすぐ見える程度にはな。何が言いたいかっつーと、俺のメインジョブである拳闘士は、この都市の目玉が職業ギルドになってるメジャーなジョブってことだ。そんだけメジャーなジョブだと、メリットもそれなりにありそうだが、その分面倒ごともありそうなのは気をつける必要があるな。


 考えながら歩くこと数分、闘技場前にたどり着いた。だが、まだ案内は続いている。どうやら正面入り口ではなく、脇の入り口を指しているらしい。脇から闘技場に入ってみれば、見るからに荒くれ者って感じのやつや、騎士か何かに見える全身鎧のやつに、防御力のなさそうなビキニアーマーの剣士、ついでに受付のおっさんが目に入る。新参者が珍しいのか、それともプレイヤーの存在が珍しいのか、かなり目立っている。が、視線の一切を無視して受付に向かう。


「拳闘士になりたいんだが、ここでなれるって認識で合ってるか?」


「ええ、合っていますとも。異星人の方ですね、こちらの受付で登録していただければ、軽い講習一つであなたは拳闘士に早変わりです。」


 闘技場の戦士だろうやつらに見られているので、舐められないよう、強気な姿勢で話す。事前情報で、人と変わらない受け答えをするAIだってのは聞いてるからな、闘技場にいるやつらがチンピラっぽい可能性を考慮しとくべきだと考えたわけだ。それにしても、異星人とはなかなか奇妙な呼び方だな、ゲームのキャッチコピーからして、星をかなり意識してるってことか。


「では、ここにサインをお願いします。その後、右奥の扉で拳闘士養成所の教官がいますので、そちらで講習を行っています。」


「わかった、丁寧にどうも。」


 短い会話だったが、なんとなく丁寧な仕事をするタイプなんだろうと感じた。闘技場で戦士達を相手にするには、一目でわかる丁寧さってもんが必要なのかね。とりあえず、指示に従って紙にサインをした後、扉に向かう。その間もチラチラと視線を感じたが、誰も話しかけてくることは無かった。


 扉の上には、拳闘士養成所と書かれている。ここで合っているようなので、軽くノックをして扉を開ける。ちょっと広い会議室くらいの空間に、机と椅子が並んでいる。まばらに人がいる中、古代ギリシャ辺りの兜を被った大男がこっちを見ている、ものすごい見ている。後ろから他のプレイヤーも数人入ってきた、プレイヤーの数が二桁に届くかというところで大男が声を上げた。


「これより、拳闘士養成所、初心者講習を行う!質問は受け付けん!後でそこらのやつにでも聞け!まず、拳闘士とはどんな連中か。それは、拳で人間を殴り倒すことしか上手く出来ねえバカのことだ!だが、そのために小技やら足遣いやらを気にする小せえやつでもある。」


 一方的に話し始めた教官は、偏った思想を隠しもせず言い切る。だが、この都市の時代観と闘技場の教官ということを考えれば、気にするほどでもない。


「拳闘士の使う拳武器は主に3つ!爪、籠手、拳帯だ。ザックリ言えば、パーティ向け、ソロ向け、対人向けだ。攻撃力の高い爪と、防御力の高い籠手、スピードがありデメリットの少ない拳帯、どれを選ぶかはお前らの自由だが、対人での強みを求めるなら拳帯が手っ取り早い。さて、講習は終わりだ!初期装備の交換チケットをやる、この奥の店で一式揃えておくんだな。」


 一方的に話し始めたかと思えば、早々に話を切り上げて座り込んでしまった。握りしめたチケットを、近くの机にバン!と叩きつける。そこから一枚拝借し、奥の部屋に向かう。教えられた店を見つけたので、両肩が出てる山賊っぽい防具と拳帯を選ぶ。


 店員さんの話だと、拳帯のメリットは装備時の重さによるスピードの低下がほぼないこと、硬いものを殴った時の反動ダメージが軽減されるんだと。確かにデメリットが少ないっていうのは、かなりの強みだ。つけいられる弱点がなければ、それだけ戦いやすいことも多くなるだろう。


 ん?なんかクエストマーク光ってんな、クエストクリアか。報酬はチケットと経験値ね、妥当だな。おっ、レベルも上がったな。ステータスの確認は後でいいや、とりあえずスキルだけ併設されてるらしい訓練場で確認してくか。


 えーと、スキルは?ステータスのとこの、これかな。


スキル

ステップ コンボアタック


 スキルは2つか。ステップが移動技で、コンボアタックが攻撃技と。訓練場にいるNPCに聞いた感じ、スキルの発動方法は声に出すのと、強く念じることで行う、いわゆる思考入力があるらしい。思考入力なんて、言語とか体系化された一般的なもので、ようやくなんとか出来るような難しい技術なはずなんだが、スキルとかいう曖昧な概念にも通用するとはなぁ。まあいいや、実際にやってみるか。


「ステップ」


 棒立ちのまま、ステップと唱えたけど反応はなし。ステップというからには、移動先が決まってないと発動出来ないのか。


「ステップ」


 今度は、右側に体重をかけ、右に行くぞという意思を持って唱えた。すると、素早く2メートルほど右側に移動した。対人向けのスキルにしては、移動量が結構ある。あんまデカくない相手なら、モンスター相手にもかなり有用なスキルに思える。


 クールダウンも10秒と、この性能にしては結構短い。SPとかいう、物理系スキル用だろうゲージの消費量はそこそこあるので、そこでバランスをとっているのかもしれない。SPの回復速度はそこそこ、ステップを沸き次第使ったら足りなくなるが、考えなしに使わなければ問題はなさそうだな。お次はコンボアタックの確認を...



 スキルの確認を終えて、次なるギルド、サブジョブの気功士を取得しに行く。歩くこと約10分、東地区の路地裏を通りつつ南下した先にあったのが、和風と言うべきか中華風と言うべきか、木造の道場らしき場所にたどり着いた。歴史のありそうな門は開いており、中の様子が窺える。武術の達人とか仙人とかって言葉が相応しい爺さんが、一人で虚空に向かって攻撃を繰り返している。だが、その目はすでにこちらを見つめていた。


「そこの若者よ、この道場に何か用があるんじゃろ?茶でも出すから、上がってきんしゃい。あ、靴はちゃんと脱ぎなさいよ。」


「あ、はい。お邪魔します。」


 急に話しかけられて驚いたからか、思わず敬語で返してしまった。まあ、年上を敬うのは悪いことではないし、道場って事はここで学ぶんだろうから、むしろ敬語で話した方がいいか。そんなことを考えつつ、言われた通りに靴を脱ぎ、爺さんに着いていく。


 座布団に座らされると、爺さんが水瓶と茶葉を持ってくる。湯呑みに茶葉をひとつまみ入れ、冷たい水を注ぐ。温暖なこの国では、冷たい飲み物が主流なのかもしれない。冷たい水にもかかわらず、すぐに茶葉は溶け、湯呑みの中が薄緑色の液体で満たされる。


 爺さんに礼を言って湯呑みを受け取り、一口飲む。爽やかな苦味の中にほんのりと甘みを感じる、かなりいい茶葉を使っているらしい。一息ついたと言った頃、爺さんが話しかけてきた。


「それで、お主は気功士になりたくてここに来たんじゃろ?機械が主流のこの国で道場を開いてるのは、ワシくらいしかおらん。」


「はい、そうです。お願いします、私を門下生にして下さい。」


 ゲームだというのに、ずいぶんかしこまった対応をしてしまったな。苦笑しながらも、真剣に爺さんの目を見る。


「ふむ、随分と元気の有り余ってそうなカッコをしとるのに、なかなか殊勝な態度じゃな。礼儀正しい若者はワシも好きじゃ、その申し出喜んで受けよう。」


 爺さんは微笑みながら、握手を求めるように右手を差し出してきた。その手にこちらも右手で応じる。爺さんが満足そうに頷く。


「では、まずは自己紹介からじゃな。ワシはゴウガシャという、お主は?」


「ロボと言います。」


 こちらが名を告げると、優しい笑みに加えて、少し歯を見せるような笑い方をして、爺さんは話を続けた。


「ほっほ、この国でその名を冠してやることが、道場に弟子入りか。面白いのう、気に入った!」


 やはり、紛らわしい名前について笑っていたようだった。だが、そこに嘲る色はなく、不思議と不快感はなかった。ゴウガシャと名乗った爺さんは、快活に幾度か笑い飛ばすと更に続けた。


「さて、確かにここは道場であるが、お主ら異星人は戦いでこそ実力を伸ばすと聞いておる。じゃから、ワシが教えるのは基本だけになる。直接伝授しなければならない技等、例外もあるがの。」


 なるほど、プレイヤーはレベルアップでスキルを覚えていくから、道場で鍛錬みたいなことはないと。ずっと鍛錬ばかりというのも、ゲームということを考えると辛い人間もいるだろうしな。それにしても、直接伝授しなければならない技、か。やっぱ奥義みたいなもんがあるんだな、やる気にさせてくれんじゃねぇか。


「では、気というものについて話していこうかの。気はSPとは違う、というよりは複合されたものなのじゃ。HPとSPが合わさったものが、気であり扱いはSPに近いものとなる。まあ、命すら費やして戦うが、自己回復にも長けているということじゃ。」


 なるほど?技用のゲージ管理しつつHP管理もすると、ちょっと難易度は高いが、格ゲー上がりだから問題はない。自傷と自己回復といえば狂戦士みたいなイメージだったが、こっちだったとはな。


 予想してなかったわけでもないし、回復も出来るならPvPでの強さは担保されたようなもんだろう。説明を聞いて、考え込んでいるのを横目にゴウガシャは説明を続ける。


「気を扱うためには、一度HPとSPを気の形に変えるために練り上げねばならん。気功士のスキル、『練気』を使い、気に変換して初めて、他のスキルに繋がるのじゃ。気をHPとSPに戻すときは、『廻気』を使うんじゃが、そのまま戻しても元のHPより回復することは出来ん。ならどうやって、気を増やすのかが気になるじゃろう?」


 ゴウガシャがニヤリと笑いつつ目線を向けてくる。実際その通りなので、早く教えてくれと催促するように頷く。爺さんは、にやけ顔を維持しながら満足そうにうなずき返し、肝心な部分の説明を始める。


「気を増やすには、三つ目のスキル『纏気』を使う必要がある。気を体に纏い強化し、物理的ではないダメージを与えられる。これだけでも非常に強い効果じゃが、攻撃を与える度に気を微増させることが出来るんじゃ。」


 ほう!つまり、練気で気を練り上げ、纏気で殴って火力出しつつ気を増やし、HPが減ってきたら廻気でHPとSPに戻して回復する。これが基本コンボになるわけか。SPは自動回復もあることを鑑みれば、拳闘士のスキルとの両立も出来るだろう。


「気づきを得たようじゃな、お主は実に筋がいい。強くなりたいのならば、どれだけ殴り合いで忙しかろうと、考えることをやめてはならない。お主ぐらい深く考え込むほうが、前衛には向いておる、前に出れば出るほどな。」


「はい、気功士の戦い方の基礎は理解出来ました。ここからは、実戦で鍛え上げていこうと思います。」


「うむ、それが良いじゃろうな。」


 こちらから、そろそろフィールドで実戦を積みたいと伝えると、穏やかに笑いながら送り出してくれる。爺さんに感謝を伝えて、道場を出てフィールドに向かう。チュートリアルで話を聞くのは確かに大事だが、試行錯誤することで得られる恩恵は大きい。



 帝国をスポーン地点に選んだプレイヤーのほとんどが、最初に訪れるだろうフィールド、帝都東草原

に訪れる。背の低い草花を優しく撫でる風が、少し青臭い匂いを運んでくる。ハハッ、マジでリアルだな。いつになったら慣れるのかってくらい、感動しっぱなしだ。高揚した気分のまま、一気に走り出す。


 そっからは、近場のネズミどもを狩って狩って狩りまくった。慣らしを兼ねて、スキルを使わず殴ったり、拳闘士スキルの使い勝手を見たり、気功士スキルの流れを通してみたりと、とにかくこのゲームに適応するために時間を費やした。


 大分このゲームでの体の動かし方に慣れたと感じた頃に、LVも3に上がっていた。思うように動けるようになった喜びと、LVが上がったことによる万能感によって、俺のテンションは爆上がりした。目に入るネズミというネズミに殴りかかり、草原のさらに奥へと全力ダッシュで向かった。


 草原の中ほどまで来たかといった所で、敵の種類も増えてきた。草むらに紛れて襲ってくるヘビに、単純に殴り合いの強いウシ、さらには空から襲い掛かるタカに至るまで、どいつもかなりの強敵だったが、そこら辺で毟った薬草を貪りながら辛くも勝つことが出来た。


 しかし、快進撃も長くは続かなかった。この草原の覇者になった気分で、さっきのやつと少し色味の違うタカに対してケンカを売った。近くの小石を、思いっきり振りかぶって投げつける。瞬間、風が強く吹いたかと思うと、空中にタカと小石がいくつも浮かんでいる。高まっていた気分が一気に下がり、冷や汗をかく。


 小石で幾度も撃たれ、動くこともままならないまま、タカが高速で突っ込んでくる。今までの攻撃とは一線を画すほどの火力に、一瞬で体が消し飛ぶ。こうして、俺はこのゲーム初めての死を経験した。



復帰までにかなりの期間を要しましたが、連載を再開いたしました。読んでくださった方ありがとうございます!感想やブックマークなど、モチベーションに繋がりますので、気が向いたらお願いいたします。

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