(2000文字以内です)ヒーロー【仮】【異性転生】
2月21日、僕は、ヒーローの訃報のニュースを見ていた。
彼の名前は、俳優の筑波亮介。
僕は、二十歳の時に死にたいと思っていた。
どうしようもなく生きづらくて死にたくて、たまらなかった時。
テレビで筑波亮介をたまたま見た。
そこで、三年前。二十歳だった時の苦悩を彼は話していたのだ。10歳から子役をやっていて、順風満帆のように言われた彼の人生の闇は僕の心の深い部分を掴んだ。
そして、その話の最後に彼が言った。
【自分を救えるのは自分です】という言葉に助けられた。
僕は、もう一度生きようと思ったのだ。
それからは、僕は筑波亮介の大ファンになった。
写真集のサイン会にも行った。舞台にも行った。映画の試写会にも行った。ドラマやバラエティーも、亮介君が出るなら必ず見た。
そして、CDの発売イベントやコンサートにも行った。
ファンミーティングにも参加した。
僕の世界は、全て筑波亮介だったのに…。
10年が経って、彼が自ら死を選ぶなどと夢にも思わなかった。
「僕が近くにいたら、僕が君の傍にいたのに…。ヒーロー」
僕は、泣きながら冷蔵庫からビールを取り出して、飲んだ。
飲んで、飲んで、飲んで…。
♡♡♡♡♡♡
「瑠璃、瑠璃、起きて、起きて」
その言葉に僕は、目を開けた。
「夢?」
「なに言ってるんだよ。春の陽気で頭がぼんやりしてるのか?」
そう言われて、顔を覗きこまれる。
「りょ、りょ、りょ、亮介君?」
「何!そんな呼び方してなかったよな?瑠璃」
そう言って、クスクス楽しそうに笑う亮介君の言葉に僕は女の子何だと気づいた。
「ちょっと待って」
僕は、亮介君の瞳を鏡がわりに覗き込んだ。
「何、何?突然」
「あっ、ごめんね」
そこに映ってるのは、セーラー服にパッツン前髪の女の子だった。
「別に、幼馴染みだからいいって」
そう言って、亮介君は笑った。
僕の髪を優しく撫でてくれる長い指先は、握手会の時と同じだ。
もしかしたら、僕はヒーローを助けられるかもしれない。
僕は、亮介君を見つめていた。
「何かついてる?」
「ううん。何もついてないよ」
「それならいいけど、今日の瑠璃へんだね」
「そうかな?」
僕は、瑠璃という名前らしい。
僕と亮介君は、今は中学生だ。
「来年、卒業したら、芸能人が多い高校に行くんだ」
「寂しい」
「えっ?」
「亮介がいなくなるのは、寂しいよ」
元が男だから、普通にこんな台詞が言える。
「瑠璃、好きだよ」
「えっ?」
話が急展開だけど、僕は告白された。
「離れちゃうから、付き合う?なんてな。ハハハ」
いや、付き合うに決まってるから!
「付き合う」
僕の言葉に亮介君は、驚いた顔をしていた。
「いいの?村雨が好きだって言ってたよね」
村雨?誰だよ、それ。いらない、いらない
「亮介と付き合うに決まってるよ」
こうして、僕は筑波亮介と交際した。
♡♡♡♡♡♡♡♡
10年後ー
2月21日ー
「俳優の筑波亮介さんが、かねてから交際していた一般人の女性と入籍をしました」
僕は、テレビのニュースを笑いながら見ていた。
「瑠璃、テレビ消せば?」
「亮介のニュースやってるんだよ」
「ニュースって、結婚したんだから知ってるだろ?」
「そうだね」
僕は、ヒーローを救う事が出来ていた。