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株式会社SETA異世界派遣部~ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された~  作者: BIRD
勇者セイル編

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第85話:雪の輪舞

深層意識を読み取る魔道具:deep consciousness reading


凶悪犯罪者の尋問用に作られたそれは、対象を眠らせた状態で使用する。

会話での尋問が不可能な者に使われる魔道具だ。

通常は夢を見ると言われるレム睡眠状態にして使用する。

しかしフォンセの場合は抵抗が強く、深昏睡と呼ばれる痛み刺激に対し全く反応しない状態まで意識を落として使われた。


魔族と結託して自国の王と聖女の殺害に関与し、他国の聖女3人の命を狙った罪。

人魚の里の長ロゼの心臓を奪った罪。

大陸内の多くの村人、カートル王都200万の民の命を奪う魔族に協力した罪。

フォンセはそれらに対して反省するつもりは皆無、隙あらば脱走して体勢を立て直そうとする意志だけがあった。

ロミュラが死んだ事で協力する魔族は1人もいなくなり、肝心の魔王は人と争う意志は無く自ら封印された事を、フォンセはまだ知らない。


「…さて、処遇はどうするか。処刑した場合は転生してしまう危険がある」

「魔王の眷属になっているから、ここにいるのを突き止めて奪い返しに来るだろうね」

フォンセの身柄を拘束中のプルミエ王国では、彼を今後どうするか国王と賢者が思案している。

異世界アーシアでは良くも悪くも運命値の高い者は転生し同じ目的に向かう事が多いという。

「もしも異世界転生されたら後の世が危ない」

「やはり封印するのが無難であろう」


そして、魔王の封印に使った技術を元に、フォンセの封印用魔道具が造られる。

フォンセは魔道具によって大脳(思考と行動を制御する脳の部位)の機能を停止させられ、視床下部と脳幹(生命維持に必要な機能を制御している脳の部位)の機能のみ稼働している植物状態で封印された。

魔王が眠るAzure cradleの近くに置くと数百年後にロミュラが転生した際にまとめて連れ去られる危険があるため、聖王国トワでの保管となった。



挿絵(By みてみん)


プルミエ王城・勇者セイルの居室。

『セイル君、ジパング皇国から君に依頼がきているよ』

『刀鍛冶で有名な国ですね! 喜んでお受けします!』

瀬田から連絡が入り、星琉は以前から行ってみたかった国に心躍らせる。

『依頼はSクラス魔物討伐と、激レア素材の確保だそうだ』

『つまり、俺の運に期待した依頼って事ですね』

どうやら【極運の勇者】という二つ名が、大陸外の国まで知れ渡ったようだ。

『そのようだね。ヨーイチ君がお雑煮講座で行っているから食材集めも手伝ってあげてくれ』

『分かりました』

そして星琉は、主にドロップ運が仕事する依頼でジパングに向かう。


転送リクエスト:ジパング皇国北部・セキの里・氷雪の門( YES ・ NO )


瀬田からの転送リクエストを許可して移動した先は、プルミエよりも気温の低い雪国。

星琉は左手の皮下に仕込んだ魔道具(マイクロチップ)の新機能をONにした。


支援型アプリ:control frozen


自分を中心とする付近の冷気を制御する機能を持つ。

寒冷地でも寒さを感じる事は無く、普通に活動が可能だ。

状態異常を無効化するアプリと組み合わせれば風邪をひく事も無い。


雪に覆われた林を抜けると、日本の合掌造りを思わせる急勾配の三角屋根を持つ建物が見えてくる。

外を歩いている人は、半纏のような厚手の衣服の上に蓑のような雪よけを着ていた。

そんな中、勇者の正装・青い騎士服を着て歩く星琉は当然目立つ。


「その姿、プルミエの勇者様でしょうか?」

「はい。依頼を受けて来ました」

すぐに声をかけられた。

自分が何者か説明せずに済むのは便利だ。

「お待ちしておりました。どうぞこちらへ…」

そして案内されたのは、集落の中で最も大きな建物。

中に入ると、複数人での調理の為に広く造られた土間があり、和食コートと呼ばれる白い作務衣に似た服を着た渡辺がいた。

周囲には講習を受ける割烹着姿の女性たちがいる。

「やあセイル君、村長が奥で待ってるよ」

言われて、星琉は建物の奥へと進む。

土間の向こうは1段高くなった板の間で、星琉はその手前で靴を脱いで揃えた。

「さすが、日本から来られた方ですね。よくご存知で」

案内してくれた男性が微笑み、星琉もはいと答えて笑みを返す。

板の間の向こうには畳と囲炉裏があり、そこにいた老人が穏やかな笑みで迎えてくれた。

「ようこそセキの里へ。依頼を受けて下さり感謝しております」

囲炉裏の前に座るよう案内されて座ると、質素な着物に似た衣服を纏う女性がお茶を出してくれた。

湯呑に緑茶、日本人なら馴染みの物だ。


村長からの依頼は事前に瀬田に聞いた通り、Sクラスの魔物の討伐とそのドロップ品の確保。

魔物はこの時期だけ現れる【六花(リッカ)】と呼ばれる氷の鳥で、その魔石はジパング皇国の天子に献上する刀に使われる。

魔物自体はさほど大きくは無いが、吹雪を伴う攻撃が素早いのでSランク冒険者でも苦労するらしい。

魔石は皇国の建国前に日本から転移してきた武士がドロップした記録が残っているが、現物は戦乱の時期に破壊されて失われたという。


「とりあえず狩ってみますね」

星琉は六花が出るという山へ向かった。

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