↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
株式会社SETA異世界派遣部~ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された~  作者: BIRD
勇者セイル編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
86/473

第78話:対する者

肩から脇腹へ袈裟懸けに斬られたロミュラは、大量出血の重傷で樹海の中の小川へ飛ばされた。

その川の水には、最上級回復魔法(エクストラヒール)と同じ効果がある。

数秒で傷が癒え、ロミュラは水を滴らせながら立ち上がった。

(…あの黒髪はプルミエの勇者か。フォンセの話では人殺しが出来ない甘ちゃんだそうだが、魔族には容赦がないらしいな…)

ふうっと息をついて考える。

髪や衣服を濡らす水を水蒸気に変えて乾かし終えた時、視界の端に一瞬何か動く影が見えた。

ドンッという衝撃と共に、魔族にとっての心臓にあたる核を刃が貫く。

ロミュラの口から鮮血が溢れ出た。

「不意打ちばっかりで悪いね。こうしないと魔族は捉えられないから」

黒髪の少年の顔が間近にある。

止めを刺しに追ってきたらしく、的確に急所を貫いていた。

(…これが人殺しの出来ない甘ちゃんか? フォンセの嘘つきめ…)

次第に意識が薄れてゆく中、ロミュラはそんな事を思っていた。


挿絵(By みてみん)



弱々しい子供の身体をした魔王は、ロミュラが飛ばされた場所より上流に転移させられた。

しかし怪我をしているわけではないので、身体や衣服が濡れるだけだ。

川から出ようとしても、虚弱な身体は満足に動かない。

ふらついて水の中に倒れ、起き上がれずに溺れかける。

回復効果があるといっても水なので、肺に流れ込むとかなり苦しい。

(フォンセの馬鹿者、陸地に転移すればよいものを…!)

力なくもがきながら、眷属になって間もない男のやる事に悪態をつく。

身体を動かす体力が尽き、意識が朦朧とし始めた時、何者かが水の中から抱き上げてくれた。

ゲホゲホと咳き込んでいると、背中にそっと手を当てて何か魔法を使ったらしく、肺の中の水が無くなって楽になった。

濡れた身体や衣服も、水を分離させる魔法を使って乾かしてくれた。


(フォンセか…?)

今の自分を助ける者は、ロミュラ以外にはフォンセしかいない筈。

そう思いつつ目を開けて、自分を抱いている者の顔を見た途端………

「!!!」

………魔王は驚愕した。

金色の髪、鮮やかな青色の瞳、白い肌に整った顔立ち…

(トワの勇者………?!)

魔王はその顔に見覚えがある。

遠い昔、自分と刺し違えて逝った初代勇者だ。


「大丈夫? 怪我はないか?」

聞かれたが、困惑する魔王はすぐには答えられない。

(…何故ここに勇者が…? 我が魔王だと気付いてないのか…?)

「…うん…」

とりあえず、子供のフリをする事にした。

「お兄ちゃん誰? どうしてここに?」

子供のフリをしながら聞いてみる。

魔王を演じるフォンセをほったらかして、この勇者はここに何をしに来たのか気になった。

「俺はイル。君に返してほしいものがあって追ってきたんだよ」

「え………?」

何の事だろう?と思っていると、イルと名乗った青年は魔王を草の上に座らせた。

そして、ストレージから青い星型の花が付いた小枝を取り出し、魔王の足元の地面に刺した。


………彷徨う霊たちよ、正しき道へ還れ………


青い星型の花が、その数を増やして子供の身体を包む。

微かに甘い花の香りが広がる。

そして光が、魔王の中に流れ込んだ。


魔王の体内にある【存在力】が抜け出てゆく。

身体から溢れ出た黒い霧は、花びらに包まれて消える。

意識を保つ魔力を失い、花に包まれた子供が昏倒した。


ロミュラが人々から奪い、魔王に注いだもの。

カートル王都の民200万の肉体と魂を犠牲にして作られたエネルギー。

奇跡の雫で復活したナルを除く、数人の獣人たちも犠牲になっている。

イルはそれを取り返し、無垢な魂に戻して神の元へ送った。


華奢な子供の身体を覆った鎮魂花(レエム)は、そのまま皮膚に溶け込んで見えなくなる。

草の上に倒れた魔王は、人魚の心臓だけで生命を維持している状態に戻ってしまった。

もはや身体を動かす事も意識を保つ事も出来ず、無防備に眠り続ける子供だ。

目覚めの為の【存在力】を注ぐロミュラは、星琉(シトリ)に葬られている。



(?! なんだ? 急に身体が重くなったような…)

魔王の状態の変化は、その眷属となったフォンセに大きく影響する。

急に動体視力が落ちた彼は、その動きが遅くなった。

その変化を奏真は見逃さない。

(今だ!!!)

左右の手に握った短めの曲刀を振るい、双剣使いは自己新記録となる20連撃を放った。

魔王を演じた大魔道士は、複数の裂傷を負ってよろめく。

その後頭部に奏真の飛び蹴りがヒット。

フォンセは脳震盪を起こして倒れた。


その後、奏真はアプリを起動した。


収納型アプリ:other dimension prison


異空間の牢獄に収容されれば、自力では出られない。

討伐命令ではその場で死亡させてもよいとの事だが、奏真はそれはしなかった。

逃げられない場所に閉じ込めて、後は法に任せよう。


こうして、カートル地下大迷宮の大規模な攻略は完了となる。

討伐対象フォンセは捕らえられ、賢者シロウが対応する事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。