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株式会社SETA異世界派遣部~ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された~  作者: BIRD
転生者イオ編

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第32話:赤い鶏コトプヨ

 エルティシアで生活し始めて1週間が経った。

 聖水作りを手伝うようになり、ギルドハウスへの配達も毎回手伝っている。

 そのついでに、フリー討伐クエストの証明部位となる素材の提出もするので、手間が省けてちょうどいい。


 俺がよく狩るのは【コトプヨ】と呼ばれる鶏に似た生き物。

 名古屋コーチンよりも鮮やかな光沢のある赤茶色の体色で、オスには緑色の鶏冠がある。

 肉は食用に、羽は装飾に使われ、運良く卵を見つけられたら高級食材になる。

 エルティシアに養鶏の産業は無く、卵は自然界から得るしかないので、見つけにくいものは相場が高い。

 コトプヨは地上の茂みに隠して卵を産む鳥で、同じ巣を使わないので採集難易度が高かった。

 比較的見つけやすいのは樹上に巣を作る鳥の卵で、同じ巣を使い続けるから一度見つけたらまた手に入れられる。

 鳥は卵を失うと産み足しをするので、欲張らずに1つの巣から1〜2個ずつ取れば絶滅の危機にはならないそうだよ。


 2日目の夕食で食べた炙り焼きが凄く美味しかったので、俺は神殿の厨房への寄贈(ついでに夕食の1品リクエスト)も兼ねて、コトプヨ狩りに行っている。


 コトプヨは鶏と同じで、飛べない代わりに疾走することが出来る。

 これがかなり速くて、俺が知ってる一般的な鶏より3倍速い。

 色も赤っぽいので、翔は【赤い彗星】とか言ってたよ。

 そのネタが出てくるあたり、20世紀の人だなぁ。


「今日の討伐証明、確認お願いします」

「はい。……損傷も少なく、良い状態ですね。さすが……」


 受付嬢が『さすがSランク』と言いかけるのを、チョコを口に放り込んで封じる。

 少し離れたところに、友人らしい冒険者と雑談している神官がいた。


 うん、聞こえてはいないな?


 俺がSランクだというのは、広めないようにしている。

 ギルドマスターと受付嬢や試験官たち、俺のランク認定試験を見た新米冒険者くらいしか知らない。

 Sランクだなんて広まったら、他国の王族から呼び出されるかもと聞いたので、面倒に思った俺はランクを明かさないことにしている。

 知ってしまった人には、異空間倉庫(ストレージ)に大量保管してるナーゴ産の菓子を配って口止めしておいたよ。

 この菓子はただの甘味ではなく、様々な効果がある。

 開発者は、アマギ王国で薬局と健康食品の製造販売をするエア。

 受付嬢の口に放り込んだチョコには、自動回復効果があった。

 食べれば、その日の仕事を疲れを全く感じずにこなせるよ。

 体力を回復する菓子など存在しなかったエルティシアでは、間違いなく激レア品だろう。

 しかも美味いからな、これ。

 今では自動回復チョコは、多忙なギルド受付嬢たちに大人気の菓子だ。


 チョコを放り込まれた意味をすぐ理解した受付嬢が、モグモグしながらコクッと頷く。

 彼女はうっかり漏れかけた言葉を、チョコと一緒に飲み込んだ。

 今ギルドハウスの受付エリアにいる人々の中で、俺のランクを知るのは3人の受付嬢のみ。

 神官と雑談している冒険者や他の冒険者には、罠を使ってコトプヨを獲っていることにしていた。


 コトプヨは肉が美味なので需要が高いけど、素早い逃げ足ゆえに攻撃による討伐難易度は高い。

 そのため、罠を仕掛けて獲るのが主流だ。

 人を見ても逃げるだけで攻撃してこないので、子供が罠を使って獲ることも珍しくなかった。


 俺は罠を使っていない。

 コトプヨよりも素早く動けるので、通常攻撃で狩れるんだ。

 素材受け取りカウンターに提出したコトプヨは、血抜きのために首を落としたように見えるけど、それは倒す際に刎ねたもの。

 俺は、獲物がこちらに気付く前に瞬殺して狩っていた。




「料理長、今日もお肉を持ってきたよ」

「おお、ありがとう。今日も状態の良い肉だな、甘辛ソースを塗って焼こうか」

「うん!」


 神殿の調理場、料理長とはすっかり馴染みだ。

 甘辛ソースはウスターソースに似た調味料をベースに、ガーリックに似たスパイスなどを加えて作るもので、俺が特に気に入った味付けだ。


 料理長が言う「状態が良い」は、鮮度や血抜き処理だけでなく、斃し方も含まれる。

 俺がここへ持ってくるのは「苦しみを与えずに倒した獲物の肉」。

 斬られたことも気付かずに逝ったコトプヨは、痛みや苦しみを感じる暇も無い。

 地球の鶏だと頭を失った胴体がしばらく走り回るなんてグロい光景がある(反射運動によるもので、痛みは感じていない)そうだけど、コトプヨは普通に倒れて動かなくなる。

 ラーナ神殿では慈悲の精神から、即死させた生き物を食材に使う。

 苦しんだか否かはベテラン料理人なら肉質を見ただけで分かるらしい。


 料理長には、コトプヨを狩っているのが俺だと即バレてしまった。

 肉を見ただけで、その生き物を倒した者が分かるそうだよ。

 なんという恐ろしい能力、殺人犯なんかすぐ見つけそう。

 初見で「隠しても分かるぞ。倒したのはお前だろ」って、言われた時はめちゃくちゃ焦ったぞ。

 でも、料理長は余計なことは言わない主義だそうで、他の人には内緒にしてくれた。



 甘辛ソースを塗って焼かれたコトプヨ肉は、薄く伸ばして焼かれたトルティーヤに似た生地との相性バッチリ。

 シャキシャキ葉野菜と、甘辛ソース絡むこんがり焼けた肉を、もっちり生地で包んで食べる。

 料理長が気を利かせて、手で持って食べられるように包み紙代わりの葉っぱで包んでくれた。

 せっかくだから綺麗な風景を見ながら食べようと思い、湖畔まで来てみたら先客がいる。

 翔とカリン。

 葉っぱで包んだものを食べながら、楽しそうに話していた。


 そういや、カリンは翔に孤児院から引き取られた子供だったな。

 親子(?)の団欒を邪魔しちゃ悪いと思い、俺はその場を離れて近くの森へ向かった。

 森の入口辺りなら獣も出ないので、木に登って太い枝に座り、そこから湖を眺めながらの食事にした。


挿絵(By みてみん)

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