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【完結】ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された  作者: BIRD


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第104話:緋緋色金

星琉の使い魔となった不死鳥は、その鮮やかな紅の色から【モミジ】と名付けられた。

モミジの炎に溶かされたジパング製の刀は、緋緋色金(ヒヒイロカネ)と呼ばれるレアメタルとなる。

緋緋色金は金よりも軽量で金剛石よりも硬く錆びない金属で、魔力を通しやすいという。

ジパングでは帝が持つ宝剣(祖先から継承された物、現在は空也が所有)に使われていた。

古代では普通に使われる金属だったそうだが、現在は希少なものとなっている。

モミジが降参した後、残り500本の刀をその炎で溶かしてもらい、刀1000本分の緋緋色金を手に入れた星琉は、600を瀬田の魔道具製造用に、200ずつをジパングとドワーフの鍛冶師たちに卸した。


星琉はドワーフの里ナグニは初めて行くので、渡辺が同行してくれた。

どうせリクエストされるだろうと予想する渡辺は、味噌汁の材料を購入してストレージに入れている。

「おぉ! ヨーイチだ! 味噌汁を作りに来てくれたのか?!」

予想通り渡辺に期待して群がるドワーフたち。

渡辺の大人気ぶりに「めっちゃ胃袋掴まれてるな~」と苦笑する星琉。

「はいはい、味噌汁もありますけど今日は先に納品ですよ」

ドワーフ集団を宥めながら、渡辺は星琉を親方の工房へ案内した。


「おぉ! プルミエの勇者か。来るのを楽しみにしていたぞ」

親方は他のドワーフと異なり、星琉に何か期待している様子。

「セイルです。親方に緋緋色金の納品に来ました」

挨拶すると、星琉は親方が指示する場所に納品する物を並べた。

「凄い純度だな。これが不死鳥の炎から産まれたレアメタルか」

それを確認して満足そうな親方。

耐熱性の石で出来た台に並ぶ溶けた刀は、いずれも赤く発光していた。

「セイル、あっちで抜刀術を使ってみてくれないか?」

と親方が指差す方を見ると、円状に立てて並べられた丸木がある。

「いいですよ」

星琉は快諾し、丸木の円の中心に入った。

渡辺がカメラを構えているところを見ると、彼は事前に聞いていたようだ。


剣術大会の時にルーから貰った刀をストレージから出して納刀したまま待機。

親方に目を向けると頷いたので、目を閉じて精神統一に入った。

撮影する渡辺が合図代わりに星琉に向けて小石を投げた直後、丸木と小石が切断されてバラバラと落ちる。

見れば星琉はいつの間にか抜刀していた。


「見れば見るほど興味深い剣技だな」

親方が満足そうにニッと笑う。

納刀した刀をストレージに収納して、星琉は一礼した。



挿絵(By みてみん)


その後、渡辺は厨房に入って調理を始め、星琉はナグニ村の近くに生える植物の採集をしていた。

この村の近くには香りの良い白い花が咲き、それが良いお茶になるという。

花は夜に咲き、昼間は蕾の状態だ。

蕾の状態のうちに摘み取り、花が開き始める夜に茶葉と混ぜ合わせて香り付けをするらしい。

王妃アリアのリクエストで、蕾を摘み取りストレージに収納した。



「やっぱりヨーイチの味噌汁は最高だな!」

豪快な笑い声を上げて具だくさんの味噌汁を味わうドワーフたち。

(相変わらず渡辺さん料理美味いなぁ)

星琉もついでに御馳走になり、改めて渡辺の料理の美味さに感動する。

ダシのとり方、調味料を使う量など、万人受けする完成度の高い料理が並んでいた。


盛り上がる中に混ざらず、親方は槌打つ事に集中していた。

日本刀(カタナ)使いの抜刀術を見た記憶が鮮やかなうちに仕上げにかかる。

素材はちょうど届いていた。

「それ、御主人様の刀だろう? ちょいと手伝ってもいいかい?」

声がして親方が振り向くと、紅と金の美しい色彩の鳥が来ていた。

星琉の肩から離れて飛んできた不死鳥モミジだ。

「お前は不死鳥だな。勇者とはいえ人間に仕えるなんてどういう風の吹き回しだ?」

チラリと見た後再び槌打つ作業に入り、親方が聞く。

「まあ分かりやすく言うと対戦で負けたんだよ」

「それは随分とシンプルな理由だな。不死鳥を負かす人間がいた事に驚くが」

話しながらモミジは孔雀くらいのサイズになり、炎を纏った。

親方が打つ刀に炎が伸びて、金属が白金色に輝き始める。

「不死鳥の炎を付与するのか。面白い」

「安物量産型の武器で500回も私を即死させた勇者に、ふさわしい武器を持ってほしいからね」

そして、ドワーフと不死鳥の共同作業で、星琉専用武器が仕上げられた。



翌朝、ドワーフたちは残念そうに2人を見送る。

「ヨーイチぃ~、また味噌汁作りに来てくれよぉ~!」

「セイル~、次は酒呑めるようになったら来いよ~!」

昨夜はお約束の飲み会になったが、星琉は18歳だったので飲酒は断っていた。

渡辺は相変わらずの酒豪でドワーフを酔い潰してなお呑んでいた。


「セイル、これは土産だ、持って行け」

親方が一振りの刀を差し出す。

普通の刀とは放つオーラが違うそれは、神秘の力を秘めていた。

「勇者なんだから安物使うのはやめて、こういう良い物を持った方がいいですよ」

親方と一緒に戻って来たモミジが鷹サイズに変わって星琉の肩にとまる。

(一応聖剣はあるけど、トワの勇者の物だからあんまり人前で使えないんだよね…)

コッソリ心の中で呟く星琉。

「ありがとうございます」

親方から刀を受け取り、刀身を確かめるようにゆっくりと鞘から抜いて見た。

現れた刀身は、白金色の光を纏っている。

鞘はそれを持つ手に吸い込まれ、鳥の形のタトゥーに変わった。

おそらくトワの聖剣と同じでその手で柄に触れれば鞘が現れるのだろう。

抜いた刀を軽く振ってみると、不死鳥の体表面を覆うのと似た炎が刀身を覆った。

「これってもしかして…」

なんか予感がする星琉。

「はい、その気になれば敵の武器を溶かしますよ。むしろ敵も燃やします」

「練習試合や剣術大会では使っちゃダメなやつだね」

得意気なモミジに星琉は苦笑した。

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