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【完結】ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された  作者: BIRD


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第6話:立食パーティと貴族たち

挿絵(By みてみん)



大会前夜、お城では王族と貴族が集まる前夜祭が開かれた。

日本から来た3人ももちろん参加で、ビュッフェスタイルの料理の中には星琉が差し入れた食材も使われている。

会場では食べられないがお城で働く人々にも料理のお裾分けがあり、休憩時間に食べに行けるようになっていた。

庶民は口にする事の無い霜降り肉を賄いに提供した星琉は、侍女や侍従、料理人、庭師や厩番、果ては騎士団のメンバーにも人気急上昇。

「ごちそうさまです星琉様」

近くを通る度にそっと声をかけられた。何故か「様」付けである。

「なんで「様」付けなんだろう?」

「胃袋を掴まれたのね。シェフの腕もあるけど霜降り肉なんて食べた事なかった筈だから」

キョトンとする星琉の隣で、イリアがクスッと笑って答えた。


パーティの半ば、会場に設置されていた小さなステージに楽師と思われる人々がやって来て、優雅な音楽を奏で始めた。

(あれ?この曲って…)

星琉はその曲に聞き覚えがあった。

そしてイリアに向かい、丁寧に御辞儀して言う。

「一曲踊って頂けませんか?」

「はい。喜んで」

イリアは微笑んで応えた。


「あ、これって『Royal Dance』の曲ですよね」

会場の隅で食べるのに夢中だった森田が言う。

「そうそう、録音機材こっちに持ち込んで収録したらしいよ」

「生演奏だったんですね〜どうりで音に深みがあると思いました」

話していると、貴族たちに混じって踊っている星琉とイリアが視界に入った。

「って踊ってるし!」

森田のツッコミ。


「驚いた、セイルはダンスも上手いのね」

微笑みながらイリアが言う。

会場の端辺りで踊っているのに、次第に人々の注目が集まっていた。

白い滑らかな肌、サラサラストレートの長く艷やかな金髪にエメラルドグリーンの瞳をもつ美少女イリアが見る者を魅了するのは勿論だが、細身のスラリとした体格から繰り出すしなやかに洗練された技術でリードをとる星琉にも視線がいく。

「ゲームで覚えたんだよ。まさか異世界で役立つ事になるとは思わなかったけど」

あははと笑って星琉は言った。

SETAのVRゲームは様々なジャンルがあり、その中にRoyal Danceというタイトルのダンスゲームがあった。

異世界の貴族たちの優雅なダンスを再現するゲームで、2人1組でプレイする。

カップルに人気のゲームだが、星琉は姉や妹たちに頼まれて相手役をこなしてきた。

「姉妹以外で踊ったのはイリアが初めてだよ」

「あら、それは光栄ね」

イリアが嬉しそうに言う。

「私は初めて踊ったのは4歳の頃で相手はシロウなのだけど、シロウは下手で足を踏まれて泣いちゃったの」

「足、折れなかった?」

瀬田社長のボリュームたっぷりわがままボディを思い出し、星琉は苦笑して聞いた。

「あの頃は今ほど太ってなかったから大丈夫よ」

イリアも笑って答えた。


1曲踊り終えると、星琉の周りに令嬢たちが集まって来た。

「異世界の方がこんなにダンスが御上手なんて驚きましたわ」

「ありがとうございます」

わらわらと集まってくる女性陣に、どうしてこうなった?と思いつつ星琉は応じる。

「獣人族はスタイルは良いけどダンスが苦手と聞いていましたのに」

「こんなに素敵に踊られる方もいらしたのね」

で、やっぱりブレない獣人族認定。

「いやいやいや、日本人ですよ?」

と返しても、日本生まれの獣人族はこちらとは技術が違ってらっしゃるのね〜と言われるだけだった。

そして何やら令嬢たちがソワソワしている事に気付いたイリアが、星琉にそっとアドバイスする。

「彼女たちとも踊ってあげて」

「う、うん」

この圧は踊ってほしいアピールなのか〜と理解した星琉は、全曲終わるまで令嬢たちとも踊る事となった。

体力的には何ともないが、精神的にちょっと疲れる。

緊張からの疲れでなく、令嬢たちの圧が凄くて疲れる時間であった。


ダンスタイムが終わった後、イリアの誘いで星琉は庭園に出ていた。

満点の星空の下、庭園の茂みにもポツポツと光るものがある。

2人が近付くと、茂みからフワ〜ッと小さな光たちが舞い上がった。

「蛍?」

「光の妖精よ。見えるという事は星琉には光属性があるのね」

イリアが教えてくれた。

女神様から企業秘密とか言われてステータスを見せてもらえなかったが、属性くらいあるのかもしれない。

「属性があると魔法が使えたりする?」

「その属性で出来る効果をイメージして、必要魔力が足りれば使える筈よ。光属性なら回復や浄化系。空港で私の足を癒やしてくれたから回復魔法は使えるでしょう?」

イリアから聞いて、星琉は思い出した。

「あ、そういや女神様から最上級回復魔法を使えるようにしておくって言われたんだった」

「セイルも授かったの?それはもう大神官や聖者や聖女並の魔法ね」

異世界人なんでもありね、とイリアは苦笑した。

そして少し小声になり、伝える。

「実はね、私も使えるの。最上級回復魔法」

「え、じゃあイリアは聖女様?」

チート補正がつく異世界転移者の星琉たちとは違い、この世界で生まれた女性がその魔法を使えるという事は、聖女で間違いない。

「星琉たちが授かったものとは少し違う種類だけど、聖女として神殿から認定されているの」

「凄い。じゃあこれからは聖女様と呼ばなきゃ」

「え〜嫌よ。せっかく父様や母様以外で対等に接してくれる人が出来たのに」

ふくれっ面するイリアが可愛い。

「冗談だよ、タメ口の方が俺も話しやすいし」

星琉は笑って本音を言った。

「せっかく仲良くなれたから、大会が終わってからも遊びに来てね。お城はずっとフリーパスよ」

「こっちへ来るにはSETAの転移装置を使わなきゃだから、社長の許可次第だね」

「大丈夫、シロウには私からお願いするから。『お願いお兄ちゃん』って言うと大体聞いてくれるのよ」

おねだりポーズをしてみせたイリアが反則的に可愛かった。

妹キャラ好きならクリティカルヒットかもしれない。

(まてよ、逆に『可愛い妹に男が近付くなんて許しません』とか言い出すオチかも?)

可愛過ぎる妹キャラあるあるの光景が予想された。



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