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貴族街の戦闘

 侯爵邸の前の広い道路には、ずらりと教会騎士団が並んでいる。


 ヘレナにフォルマ教教会まで来てもらい、聖女誘拐と殺害未遂について話を聞きたいと召喚があった。

 侯爵は前回のようにもちろん今回もこれを拒否する。


 前回と違うのは、ここにフェレスがいる事。

 そして王家は今日より以前から教会と王妃達の動きについて知っており、今回はいつでも動けるように準備をしていたという事だ。


 そして国王からは書面で、教会騎士団が貴族街で陣を敷いた場合、これを攻撃し、例え死者が出たとしても正当防衛として認める、と許可状が貴族街の全ての貴族家へ送られている。


 しばらく前に王宮の会議で教会騎士団の軍備が過剰ではないかという話が出たのだ。

 そこで王家は、国の許可なく教会騎士団が貴族街へ入る事を禁じた。

 もちろん、フォルマ教の本部で教皇・大司教とやり取りをした上で、である。


 それを無視して動いたという事は敵対的な意図があると取られてもやむを得ない。


 フォルマ教本部では、フォルミラカ王国の教会をまとめる大司教の専横が問題になっており、渡りに船とばかりに話に乗って来たという噂だが、事実のほどは分からない。





 折りしも今日は春の祝賀。


 侯爵家で支援した騎士や魔法使い、冒険者達が招待され、豪華な料理に舌鼓を打っている最中だった。


 極上のワインで酔った魔法使いが杖を振りかざす。


「燃えろ燃えろ、爆発しちゃえ〜〜〜!」


 酒樽を抱えた冒険者がゲラゲラ笑いながら精霊や魔獣をけしかける。


「よっし! どっちが多く首を取れるか賭けるか!?」


 素面(しらふ)の騎士が剣を撫でながらつぶやいた。


「本当に正当防衛でいいのか? いいんだよな? あいつら気に入らなかったんだよな……」





 フェレスはその様子を見ながら、彼女の部下である戦闘訓練を積んだ使用人達に聞いてみる。


「わたくしは行きますが、あなた方はどうしますか?」


「ご一緒します!」


「では、各自ケガをしないように」


「はい!」






 



 王国軍が到着したのはそれから30分とたたないうちだが、教会騎士団は半壊して逃亡者まで出る有様だった。

 夜も遅い時間だったが、魔法使い達の打ち上げた光球(ライトボール)で、闇などどこにもないような明るさだったという。





 この事件を機にフォルミラカ王国におけるフォルマ教の地位は凋落した。

 大司教は解任された後に本部に戻され、以後はその門を出ることなく、一治癒師(いちちゆし)として教会に属することになる。


 教会騎士団も団長以下数人が首をすげ替えられて前線へと送られ、新しい任地ではその階級を落として戦い、その多くは2度と王都に戻ることはなかった。


 また聖女アノアは聖女の地位を剥奪、王都で最下級の治癒師からやり直しを命じられる。

 当初は不平も多く破門寸前まで行ったが、周囲の助けもあり少しずつ落ち着きを見せるようになった。



 これだけの騒ぎを起こしたフォルマ教だが、しかし王国側はフォルマ教本部と対立するような事はなかった。それはフォルマ教がフォルミラカ王国に起源を持ちながらも追放された歴史に関わってくる。

 王国とフォルマ教本部は長い年月をかけて互いに一定の信頼と、そして多宗教国家として複雑な共存関係を築いていた。

 

 多くの治癒師を抱え、奉仕の精神を持つ彼らの活動により、フォルマ教はしばらくする頃にはまた以前のような賑わいを取り戻したそうだ。



 王家では、正妃は位を落とし後宮にて終生蟄居を言い渡され、王女は神殿にて今後は女神に謝罪と奉仕を続け、王宮に戻って来られるかどうかは心がけしだい、という事になっている。


 またディンナト公爵家は伯爵家に降爵。領地もその半分を国に返す事となった。



 ヘレナは、王弟アントニスと1年ほど婚約者として過ごした後、結婚して子供を2人産んだ。

 娘の名前はフェレスと名付けられ、父である侯爵はこれをことのほか喜んだとか。



 フェレスは、ヘレナの結婚式の直後、突然行方不明となった。


 そのことについて誰も悪く言う者はおらず、エフティヒア侯爵家では今もなお、メイドを含めた使用人達に戦う訓練が施されているという。










説明が不十分な点があったため、一部を追加いたしました。


>この事件を機にフォルミラカ王国におけるフォルマ教の地位は凋落した。


から、


>またディンナト公爵家は伯爵家に降爵。領地もその半分を国に返す事となった。


までの間です。

より納得の行くようになっていればと思います。




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