『モブ令嬢テサシア・ノーザランは理想の恋を追い求めない』祝書籍化 ~~ひとで×ぱっつん 2~~
「おめでとうございます!(ξ˚⊿˚)ξ <ただのぎょー様、『モブ令嬢テサシア・ノーザランは理想の恋を追い求めない』 書籍化、おめでとうございます! 2022年 8月1日発売!」
「ヒトデはいきなり何を言っているの?」
「ぱっつんも呆然としとらんで、ちゃんとおめでとうと祝いの言葉を言わんかい!」
「え? えと、おめでとうございます?」
「いやー、書籍化するだろうなこの人と思ってたらなりおったわい。やはり一味違うお方よ」
「相も変わらずメタなこと言ってる」
「楽しみながら活動を続ける、その雰囲気が伝わってくる。そして人が集まってくる。これを為すには人徳があってこそ。これでファンがついてくるのであろう」
「あれ?」
「辞典作ったり、ホットスタートについて分かりやすく解説したりと、小説を書こうという人へのサポート。こういうのが地道に小説投稿サイトを活性化させる縁の下の力持ち。こういうことをやる人のおかげで成り立つものがある」
「おかしい。承認欲求こじらせて、ワシの方がナマコよりすごいんじゃー、とかクダ巻いてるヒトデが他所の神様を褒めるなんて。明日は世界滅亡かも」
「これは言わば公園の掃除や道のゴミ拾い。善意でこれを成す人がいなくなれば社会はゴミだらけじゃ。かような人徳の持ち主が描くからこそ『モブ令嬢テサシア・ノーザランは理想の恋を追い求めない』は、優しさの伝わってくる作品となり書籍化となるのであろう」
「ヒトデがおかしい。頭でも打って前世を思い出した?」
「なんでワシが前世を思い出すんじゃ。それはヒロインの役目じゃろうが。ぱっつんよ、ワシはヒロインの汝が呼び出した使い魔にして神なんじゃが?」
「多神教って悪神、邪神、疫神、厄神、堕神、旧神とヒドイのがゴロゴロしてる」
「ワシを疫病神呼ばわりするんじゃないわい!」
「わたし、ヒトデが召還に乗り込んで来たせいで、もう少しで学院を留年しそうになった」
「その節はまことに申し訳ございませんでした」
「追試とか、補習とか、たいへんだった」
「ワシも手伝ったじゃろ? ゴメンして?」
「それで? ナマコ様より有名になってやるってコミカライズとアニメ化を狙ってる、パクリ上等のクソヒトデがどうして手のひら返したようにお祝いを述べてるの? 馬車に轢かれて転生でもしたの?」
「ぱっつん、言うようになったのー。説明するとじゃな、(ξ˚⊿˚)ξ <ただのぎょー氏の書いた物語、『モブ令嬢テサシア・ノーザランは理想の恋を追い求めない』が第三回ESN奨励賞を受賞したのじゃ」
「それはそれは。でもそういう話は私とヒトデから見たらまるで無縁。雲の上の遠い別の世界の話」
「無縁じゃないわい! よいかよく聞け、この『モブ令嬢テサシア・ノーザランは理想の恋を追い求めない』は短編なのじゃ」
「それが?」
「書籍化するには、あと十万字書かねばならんと、(ξ˚⊿˚)ξ <ただのぎょー氏は活動報告で書いておった」
「じゃ、はやく書いて」
「ぱっつん、十万字じゃぞ? 作者の苦労を察してやらんかい」
「読者は作者の苦悩なんか知らない。読んでおもしろければそれでいい」
「ぱっつん、酷いのー」
「それで? 書籍化作業が大変だからって、それは私たちと関係無くない?」
「それはじゃな、十万字埋めるのが大変となれば、ワシがこうして褒めて持ち上げておけば、書籍化の際にワシとぱっつんが活躍するシーンを2、3ページくらい書いてくれるんじゃなかろうかと」
「このヒトデ、脳ミソも無いのに頭がおかしい。どうして世界観を無視して他所で出番もらおうとしてるの?」
「こういう地道な努力がやがてメジャーデビューに繋がるのじゃ!」
「なんでシレッと登場人物のふりをしようとしてるの? 人のパンツを借りてプロレスする地道な努力なんて恥ずかしいことやめたらいいのに」
「そこは人の褌で相撲をとると言ってくれんか。パンツ借りるのはおかしいじゃろ」
「ヒトデはどれだけ人のパンツを勝手に借りて汚せば気が済むの?」
「ワシを下着マニアの変態のように言うでないわ!」
「あ、ヒトデにTバック履かせたらこのヒトデはなんかおかしい、危ないって警戒されて人が近づかなくて安全になるかも」
「なんでワシがTバック履かんといかんのじゃ。だいたいぱっつんがヒロインとしてちゃんとテサシアみたいに恋愛しとらんから、ワシが有名になれんのじゃ!」
「ヒトデの知名度と私の恋愛は関係無い。それに恋愛なんて金持ちの道楽」
「なんか寂しいこと言い出した」
「恋愛も結婚も子育ても金持ちの特権なのよ。貧困層には無縁の娯楽なのよ。あぁ、資本主義のブタなんてみんな死ねばいいのに。ブルジョアが」
「それジャンル異世界恋愛のヒロインが言っちゃダメなセリフ!」
「恋愛? ヒロイン? それどこの世界の話?」
「ぱっつんもいつまでもイジケとらんで、テサシアみたいにいい感じの優良物件に恋して捕まえるとか、ヒロインらしいことのひとつもしてじゃな、そこからめくるめくラブストーリーとかに。て、おい、ワシが話しとるのになんでごそごそとベッドに潜る?」
「……ヒトデは勘違いしている」
「勘違い? 何をじゃ?」
「……テサシアはヒロイン。モブでも友達がいる。私には友達なんていない。テサシアみたいになんてなれない……、刺繍もできない……」
「いや、ぱっつんは魔術とかあるじゃろ。刺繍とか料理とかまるでダメで女子力ゼロじゃが。ほれベッドから出てこんかい」
「私の辞書では、友達と書いて裏切り者と読むのよ。しくしく……」
「あ? ワシなんかトラウマスイッチ踏んだ?」
「しくしく……、こうすれば友達ができるってヒトデが言うから、恥ずかしいのガマンして言うとおりにしたら、前よりみんなからドン引きされて……」
「ゴメンなさいでした! 確かにアプローチは不味かったけどワシのやる気は褒めてあげてー!」
「……愛がなんだ、恋がなんだ、それが金になるのか……」
「また絶望して変な歌を歌いだしたー! ベッドから出てきて! ぱっつん! お腹すいてない? 何かつくるから! あったかいものでも食べて元気出してー!」
「元気って、どうしたら出てくるの? もう思い出せない……」
「ぱっつんはまだ十代の女の子! 疲れた老人みたいなこと言わないで! 人生はこれから! まだ間に合うから!!」
「……希望を連れてくるのは、絶望……」
「またチャーハン作るからベッドから出てきてー!! お願いだからー!!」
またもやぱっつんを泣かせてイジケさせてしまったヒトデ神。デリカシーの無い神に乙女の心は理解できない。ヒトデには乙女回路は搭載されていない。
ぱっつんは、なんとか進級はできたものの、しかしヒトデとぱっつんの物語は、まだまだまだまだ始まらない。
「うがあ! ワシのメジャーデビューは、サクセスストーリーは、いったいいつになったら始まるんじゃー!?」
さて、我が愛しの女神のデビューを汚して邪魔しようという、腐った海産物がいるのはここですか?