あれから10年
ーードッカーン!
『あっちに逃げたよ』
「だいじょうぶ! 俺も視認できてる!」
全力で追いかけて地面を蹴って飛びかかる。
それに狙いすましたかのように獲物は巨大な火球を放つ。
その火球を両断。
そのまま剣を振って獲物をーー
〜〜〜〜〜〜
「おいみんな! アストが帰ってきたぞ!」
「「「おおお!」」」
「ただいま!」
俺が村に戻ると大勢の人に出迎えられた。
「おかえり! アスト!」
「今日の獲物はなんだったんだ?」
「アースドラゴンだよ」
「「「おお……」」」
「すまんの、アスト。同じに討伐を依頼する形になってしまって」
「気にしなくてもいいよ村長さん。
ドラゴンの討伐は先生の試験内容に含まれてし、こちらとしてもちょうどよかったんだよ」
あれから10年……今では、あの鬼ような母さんの訓練でもかなり余裕を持って行えるようになった。
……まあ、同時に何百回と死にかけたかわからないけど……。
そんな先生の修行、母さんの訓練の日々は続いた10年。
その総仕上げとしていくつかのモンスターの討伐を言い渡された。
その最後としてドラゴン(種類問わず)の討伐を今日、成し遂げたのである。
「アスト!」
アースドラゴンが積まれた荷車を引きながら町を進んでいるとそれを阻むように正面に同い年ぐらいの男が立ち塞がった。
「あ、コップンくん!」
「コッペだ!」
コップンくんは随分と成長してすっかりこの町随一のイケメンになっていた。
「ふん。あいもかわらずモンスターの討伐と哀れなことをしているんだな」
「うん。目標のためだからね!」
「うっ……。ふ、ふん! そんな危ない目に遭わないと君の目標は叶わないのかい?」
「わからない。でも、諦めたくないからね!
コップンくんだって、村長のあとを継ぐために一生懸命勉強しているじゃないか!」
「う、うるさい!」
俺はコップンの手を取ってしっかり握りしめる。
「コップンくん! 君ならきっと素晴らしい村長になれる!
俺は、君が村長になるのを、心から祈ってるよ!」
手を取ったあたりから周囲の、特に女性陣からの声が強まったが、そんなことよりも自分の気持ちをしっかりとコップンに伝える。
コップンは俺が手を握ったことで顔を真っ赤にし始め、慌てだした。
「お、おれのなまえは、コッペだあぁぁあ!!!」
顔を真っ赤にして、握った手を振り払って走り去っていた。
……俺、何か変なことしたかな?
〜〜〜〜〜〜
10年の間に変化と呼べる変化はかなり少ないかもしれない。
だが変化があったことといえばあの日の後コップン達が死ぬ程泣きながら謝ってきたこと。
どうやらあの話あっという間に町中に広まったらしく、病弱な人間にあまりに理解不能でひどい扱いを与えたということでおやにそーとー叱られたらしい。
俺個人は対してそんなに気にしていなかったからそれを気に少しずつ町のみんなと仲良くなっていった。
魔法使いを、冒険者を志すと語った人達やコップンのように村長のあとを継ぐと心に決めた人達と共に先生の勉強会を開いて一緒に勉強したこともあった。
剣を特訓するということで母さんに弟子入りしようとする人を全力で止めるなんてこともした。
でも結果よく止めきれなくて、3日後にはみんなで死にかけて地面に這いつくばったことはいい? 思い出だ。
今思い返しても……。
「ああ〜……楽しい10年だった」
大変で苦しくて辛かったけど……それでも、楽しい思える10年だった……。
「……よし!」
気持ちをしっかり引き締め、帰路に着く。
なんせ、これが最後なのだから……。